SYNERGY[啓介]
Name chenge
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2.県内遠征開始1
アニキが立ち上げた関東最速プロジェクトが始動した。
関東の走りのスポットのコースレコードを二人で全部塗りかえ、赤城レッドサンズと高橋兄弟の名前を伝説にするのだ。まずは群馬エリアから遠征を始めて行く。
今日のA峠の交流戦は、アニキがダウンヒルを、オレがヒルクライムを走る。
交流戦は22:00開始、もうすぐだ。最後の走り込みを繰り返している。
「もうちょいリア下げろ、10mm」
「タイヤはこっちに変更だ」
今日は何度目の変更だろう。
変えても変えても、違和感やしっくりこない部分が残る。
考えつく調整を宮口に指示し、タバコを吹かしながらイメージするコース攻略のためのセッティングに悩んでいた。
とはいっても、実際バトルとなるとその場の勢いというか空気感でやっちまうことも多い。
単にバトルに勝つだけなら今のセッティングでも余裕だが、この先誰も更新できないようなコースレコードを残すためには、できる限りタイムを削れるように調整しなければならない。
アニキのプロジェクトを失敗させる訳にはいかない。アニキとオレの走りで、このゲームのゴールに辿り着くのだ。
意気込みとは裏腹に、セッティングに時間がかかりバトルの時間が迫る。焦りが募る。
「おい、まだかよ! 今の設定でもう1本走りたい。」
「す、すいません。もうすぐです!」
宮口の調整はいつも正確だ、こうしてほしいと伝えるとそれを完璧に返してくれる。
まだそんなに長く付き合っている訳ではないが、メカニックとしての腕は信頼している。
しかし、いくら正確な調整をしても、出す指示が曖昧で迷いがあればハマらない。
走っては調しを繰り返して、まるでぐるぐると出口の見えない迷路を彷徨っている気分だ。
苛立ちも強くなり、つい言葉も態度もキツくなる。
「啓介さん、お待たせしましたっ、オッケーです!」
「やっとかよ、、、おせーよ!!。出るっ」
宮口とろくに言葉も交わさないまま、FDをスタートさせた。
―――――――――
啓介さんの指示に合わせ、できるだけ速く調整を済ませた。
いつもバトル前は、涼介さんと啓介さんと一緒にセッティングを決めていく。
だが、今日は涼介さんから「自分達で考えてみろ」と提案があり、啓介さんの指示を受けながらギリギリまで調整を続けていた。
元々、強い口調や威圧的な態度の人間が苦手なオレは、啓介さんとのやりとりはいつも緊張していた。特に今日の啓介さんは、苛立っており対応がキツく、話すことも尻込みしてしまう。
できるだけ啓介さんを刺激しないように、素早くセッティングを済ませた。
「啓介さん、お待たせしましたっ、オッケーです!」
「やっとかよ、、、おせーよ!!。出るっ」
クルマから離れた瞬間に、啓介さんはFDをスタートさせた。
「ふぅ…」
FDの後ろ姿を見送ると、緊張した身体を解かすように息をついた。
工具を片付けようと振り返ると、啓介さん以上に不機嫌な顔でこちらを睨む後輩と目があった。
「宮さん、今のFDどうゆうこと?」
「え…?」
後輩の名は赤木はるな。学校の後輩で、今は会社の同僚で、同じRX-7好き仲間である。
まわりから変態扱いされるほどのRX-7愛の語りに、唯一最後までついてきてくれたのは彼女であり、お互い愛が深い故にぶつかることもしばしばである。
系列の自動車工場で働いているため頻繁に会うことはないが、レッドサンズ一軍の交流戦へ帯同することになったので連絡を取ってみた。今日、彼女をギャラリーに誘ったのは他でもない、宮口だ。
新旧のRX-7が揃いバトルする姿を近くで見れる機会なので、喜んでもらえると考えていた。
だがどうしたことだろう。
今オレに鋭い視線を向けている赤木は、どう見ても喜んでいるようには見えない。
―――――――――
「ちっ!!ぜんぜんシックリこねー!くそったれがァ!!」
啓介は走り出してすぐに、このセッティングが間違っていることに気づいたが、もう再調整する時間がない。この間違ったセッティングで、少しでも速く走る方法を考えなければならない。
頭を使うドライビングは苦手だ。
考える前に身体が動いてしまうし、結果的には今までそれでも勝つことができている。
だが、「それだけじゃダメなんだ」とも気づき始めている。ただ勝つだけじゃなく、最速レコードを残すための走りをしなければならない。
アニキからはいつも、「ドラテクでいちばん大切なのは頭だ」って言われている。
理論に、セッティングの方法に、、、オレにはまだまだ足りないものがたくさんある。
コースの攻略法の迷い、車のバランスの悪さ、自身の能力不足の自覚など、次々の浮かぶ負の要素が、より一層の苛立ちと右足の力みを生み、FDに無駄な負担を与えていた。
わかってはいても対処することができず、そのままヒルクライムのゴールに到着した。
最後のテスト走行は、不安のまま終えることになった。
「啓介、なんだひどい顔をしているな。」
ダウンヒルバトルのために待機しているアニキが、FDの運転席に近づき声をかけてきた。
「アニキぃ、セッティングがハマらないんだ。もうこのまま行くしかないけど、、、」
オレの弱気な発言に、アニキの表情はニヤついている。オレがFDに乗りはじめてから、壁にぶつかったり四苦八苦している姿を見ると、いつも愉しいのか嬉しいのかこの顔を見せる。アニキがこんなニヤついた顔をするなんて、同じ走り屋になるまで知らなかった。
「頭は使って欲しいが、考え過ぎるな。コースをよく見ろ。もう下らないと、スタートに間に合わないぜ。」
コンッとFDのドアを小突き、アニキは当たり前すぎるアドバイスを伝え、戻りを急かした。
「コースをよく見ろ、か」
ヒルクライムのルートを下りながら、アニキの言葉を思い出す。
コースをよく見ることなんて当然のことだ。それでもアニキが言うなら、何か意味があるのだろう。余計なことは考えずにコースを逆さになぞることに集中する。
宮口達が待機するヒルクライムのスタート地点につく頃には、先ほどあった感情の乱れも落ち着きつつあった。集中することが明確なら、他の感情は頭から離れる。そんなオレの性格を見越して、アニキはアドバイスをしたに違いない。やっぱアニキはすげえな。
先ほどのテスト走行時にあった無駄な気負いがすっかり落ち、この後バトルを楽しむ余裕が生まれた気がした。
2023.3.25
アニキが立ち上げた関東最速プロジェクトが始動した。
関東の走りのスポットのコースレコードを二人で全部塗りかえ、赤城レッドサンズと高橋兄弟の名前を伝説にするのだ。まずは群馬エリアから遠征を始めて行く。
今日のA峠の交流戦は、アニキがダウンヒルを、オレがヒルクライムを走る。
交流戦は22:00開始、もうすぐだ。最後の走り込みを繰り返している。
「もうちょいリア下げろ、10mm」
「タイヤはこっちに変更だ」
今日は何度目の変更だろう。
変えても変えても、違和感やしっくりこない部分が残る。
考えつく調整を宮口に指示し、タバコを吹かしながらイメージするコース攻略のためのセッティングに悩んでいた。
とはいっても、実際バトルとなるとその場の勢いというか空気感でやっちまうことも多い。
単にバトルに勝つだけなら今のセッティングでも余裕だが、この先誰も更新できないようなコースレコードを残すためには、できる限りタイムを削れるように調整しなければならない。
アニキのプロジェクトを失敗させる訳にはいかない。アニキとオレの走りで、このゲームのゴールに辿り着くのだ。
意気込みとは裏腹に、セッティングに時間がかかりバトルの時間が迫る。焦りが募る。
「おい、まだかよ! 今の設定でもう1本走りたい。」
「す、すいません。もうすぐです!」
宮口の調整はいつも正確だ、こうしてほしいと伝えるとそれを完璧に返してくれる。
まだそんなに長く付き合っている訳ではないが、メカニックとしての腕は信頼している。
しかし、いくら正確な調整をしても、出す指示が曖昧で迷いがあればハマらない。
走っては調しを繰り返して、まるでぐるぐると出口の見えない迷路を彷徨っている気分だ。
苛立ちも強くなり、つい言葉も態度もキツくなる。
「啓介さん、お待たせしましたっ、オッケーです!」
「やっとかよ、、、おせーよ!!。出るっ」
宮口とろくに言葉も交わさないまま、FDをスタートさせた。
―――――――――
啓介さんの指示に合わせ、できるだけ速く調整を済ませた。
いつもバトル前は、涼介さんと啓介さんと一緒にセッティングを決めていく。
だが、今日は涼介さんから「自分達で考えてみろ」と提案があり、啓介さんの指示を受けながらギリギリまで調整を続けていた。
元々、強い口調や威圧的な態度の人間が苦手なオレは、啓介さんとのやりとりはいつも緊張していた。特に今日の啓介さんは、苛立っており対応がキツく、話すことも尻込みしてしまう。
できるだけ啓介さんを刺激しないように、素早くセッティングを済ませた。
「啓介さん、お待たせしましたっ、オッケーです!」
「やっとかよ、、、おせーよ!!。出るっ」
クルマから離れた瞬間に、啓介さんはFDをスタートさせた。
「ふぅ…」
FDの後ろ姿を見送ると、緊張した身体を解かすように息をついた。
工具を片付けようと振り返ると、啓介さん以上に不機嫌な顔でこちらを睨む後輩と目があった。
「宮さん、今のFDどうゆうこと?」
「え…?」
後輩の名は赤木はるな。学校の後輩で、今は会社の同僚で、同じRX-7好き仲間である。
まわりから変態扱いされるほどのRX-7愛の語りに、唯一最後までついてきてくれたのは彼女であり、お互い愛が深い故にぶつかることもしばしばである。
系列の自動車工場で働いているため頻繁に会うことはないが、レッドサンズ一軍の交流戦へ帯同することになったので連絡を取ってみた。今日、彼女をギャラリーに誘ったのは他でもない、宮口だ。
新旧のRX-7が揃いバトルする姿を近くで見れる機会なので、喜んでもらえると考えていた。
だがどうしたことだろう。
今オレに鋭い視線を向けている赤木は、どう見ても喜んでいるようには見えない。
―――――――――
「ちっ!!ぜんぜんシックリこねー!くそったれがァ!!」
啓介は走り出してすぐに、このセッティングが間違っていることに気づいたが、もう再調整する時間がない。この間違ったセッティングで、少しでも速く走る方法を考えなければならない。
頭を使うドライビングは苦手だ。
考える前に身体が動いてしまうし、結果的には今までそれでも勝つことができている。
だが、「それだけじゃダメなんだ」とも気づき始めている。ただ勝つだけじゃなく、最速レコードを残すための走りをしなければならない。
アニキからはいつも、「ドラテクでいちばん大切なのは頭だ」って言われている。
理論に、セッティングの方法に、、、オレにはまだまだ足りないものがたくさんある。
コースの攻略法の迷い、車のバランスの悪さ、自身の能力不足の自覚など、次々の浮かぶ負の要素が、より一層の苛立ちと右足の力みを生み、FDに無駄な負担を与えていた。
わかってはいても対処することができず、そのままヒルクライムのゴールに到着した。
最後のテスト走行は、不安のまま終えることになった。
「啓介、なんだひどい顔をしているな。」
ダウンヒルバトルのために待機しているアニキが、FDの運転席に近づき声をかけてきた。
「アニキぃ、セッティングがハマらないんだ。もうこのまま行くしかないけど、、、」
オレの弱気な発言に、アニキの表情はニヤついている。オレがFDに乗りはじめてから、壁にぶつかったり四苦八苦している姿を見ると、いつも愉しいのか嬉しいのかこの顔を見せる。アニキがこんなニヤついた顔をするなんて、同じ走り屋になるまで知らなかった。
「頭は使って欲しいが、考え過ぎるな。コースをよく見ろ。もう下らないと、スタートに間に合わないぜ。」
コンッとFDのドアを小突き、アニキは当たり前すぎるアドバイスを伝え、戻りを急かした。
「コースをよく見ろ、か」
ヒルクライムのルートを下りながら、アニキの言葉を思い出す。
コースをよく見ることなんて当然のことだ。それでもアニキが言うなら、何か意味があるのだろう。余計なことは考えずにコースを逆さになぞることに集中する。
宮口達が待機するヒルクライムのスタート地点につく頃には、先ほどあった感情の乱れも落ち着きつつあった。集中することが明確なら、他の感情は頭から離れる。そんなオレの性格を見越して、アニキはアドバイスをしたに違いない。やっぱアニキはすげえな。
先ほどのテスト走行時にあった無駄な気負いがすっかり落ち、この後バトルを楽しむ余裕が生まれた気がした。
2023.3.25