SYNERGY 短編集
Name chenge
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□□ interested in you □□
「これはちょっと厄介ですね……。時間がかかります」
「マジ……?」
FDの駆動に違和感を感じ、点検をしにショップを訪れた啓介は、宮口の表情と声のトーンに思いの他深刻な状況を感じ取り、ざわり、と肌を粟立てた。FDに万が一のことがあれば、今後の遠征計画や関東最速プロジェクトにも大きな影響を与えてしまうであろう。
啓介の不安と焦りを感じたのか、宮口が、
「あっ……時間がかかると言っても、今から取りかかれば夜までには何とかなりますよっ!」
と安心させるように言葉を添える。
大切なFDが夜には帰ってくることが分かり、啓介はホッと息をついた。
しかし、実はもう一つ、啓介が焦る理由がある。
「このまま学校行くつもりだったのに、間に合わねぇ……ヤバい……」
必修の科目で出欠も厳しく判断される講義のため、絶対に遅刻はできないのだ。
FDが使えないとなると……バスか? バスなんかこの辺通ってるのか??
車やバイクが移動の足になっている啓介にとって、その他の手段は思いつかない。例えバスが通っていたとしても、講義に間に合うのか検討もつかなかった。
「私、今から休憩で外へ出るので、大学まで送りましょうか??」
啓介の焦る様子を見ていた赤木が、声をかけた。
「いいのか!? 助かる……サンキューな!」
願ってもない赤木の提案を、遠慮無く受けた。恩に着るぜ。
赤木が上司である松本に経緯を説明する。
「そうか、それは悪いな赤木。啓介を送ってから、きっちり休憩時間取ってくれよ」
「ありがとうございます。行ってきますね」
ペコッと松本に頭を下げて、赤木は啓介に声をかけた。
「啓介さん。クルマ回してくるので、ここで待っていて下さいね」
赤木と松本のやりとりを聞いていると、ここが仕事場であることを思い知らされる。
レッドサンズの活動はあくまでプライベートであるが、松本や宮口はいつもそれが本業であるかのように関わってくれている。
しかし、ここはレッドサンズだけのショップではない。一般の車のメンテナンスや車好きな奴らのチューニングまで、何台もの車を取り扱っているのだ。最近走り屋界隈で名前が通ってきたのか、特に客が増えてきていると感じる。いつ来ても、スタッフは忙しそうに動いている。
赤木にしたら啓介も、忙しい中関わる客の一人なんだろう。
すぐに啓介の前に、年季の入った白い軽自動車、スズキのアルトワークスだっけ、がやってきて止まった。
エンジン音を聞くだけで、チューニングされていることが分かる。
「どうぞ」と、運転席から赤木が声をかける。
「大学前のコンビニまで、よろしく」
啓介が助手席に乗り込みシートベルトをしたのを確認し、赤木はクルマをスタートさせた。
「狭いなぁ!」
FDのコックピットのような狭い運転席に慣れている啓介でも、軽自動車は窮屈に感じる。特に、助手席と運転席との距離は、間を隔たせるコンソールがないためか、より密着している印象だ。
脚も腕も気を抜いて座ると、ドライバーの邪魔になりそうなくらいの狭さである。
窮屈さを感じる助手席に、啓介は182㎝の身体を縮こませるように座った。
古い軽自動車といえ、ターボ仕様のエンジンは大人二人を乗せていてもパワー不足を感じさせない。
足回りは、かなり手を入れていることが乗っているだけで分かる。
癖がありコツがいりそうなクラッチやシフト操作を、赤木は表情を変えず平然としながら運転している。
「結構やってんなこの車。ショップの代車?」
「――失礼ね……。これは私の車」
赤木はムッとした表情で、啓介に言葉を投げるように返した。
(――しまった……)
FD好きの赤木なら、マツダ車や流線型の綺麗な車に乗ってるんじゃないかと勝手にイメージしてたので、あまりの違いに、つい「代車」とか言ってしまった。
「狭いけど、FDより車高あるし。」
「わりぃ……。ごめんな、勝手に勘違いして」
自分の車を貶される腹立たしさは、啓介もよく分かる。車が好きで自分が手を入れているならなおさらだ。
啓介はすぐに謝ったが、自分のしてしまった失言の重さに後悔しガックリと項垂れた。
「別にいいよ、知らなかったんでしょ」
赤木は「いいよ」と言ってくれたが、啓介の気まずさは変わらない。
気を紛らわすためにタバコを吸おうと、パーカーのポケットに手を入れようとした。
トンっ
(――あっ……)
「わりぃ……」
運転席との距離を失念し、啓介の肘が運転中の赤木の腕に当たった。
失言に、運転の邪魔に……。なにやってんだオレ。
啓介は、自分の不甲斐なさに茫然となった。
腕に当たったことは気にならないようだが、追い打ちをかけるように赤木は言った。
「このクルマは禁煙」
「えっ!? そうなのか!ごめん……」
踏んだり蹴ったりだ。このクルマに乗ってから、謝ることしかしていない。
気を紛らわすつもりだったのに、沼に沈んでいく気分だ。
「でも赤木、この前タバコ吸ってたよな? クルマでは吸わねぇの?」
「この前は社長がくれたから、たまたま吸っただけ。普段は吸わないよ」
吸わないにしては、本当に所作が自然だった。
しかも、シガーキスだって当たり前の流れのように……。
あの時を思い出すと、ゾワリと身体の奥を走った感覚が甦る。
今の状況も、あの時の距離と同じくらいか。
あの時は、自然と距離を取られてしまったが、今日は閉じ込められた狭い空間で赤木は運転中。
これ以上に離れることはできない状況だ。
隣に視線を向けると、あの時と同じように赤木の横顔が目に入る。
まっすぐに前に視線を向ける瞳。艶やかな睫。滑らかな肌。形のよい唇がやけに印象強く見え、唇に触れたい気持ちに掻き立てられる。
軽く手を伸ばせば触れることができる距離、赤木は避けたくても身動き出来ない状況。
赤木が操作するシフトレバーに触れる手指も、啓介の膝に触れそうなくらい近くなる。
シフトチェンジのたびに、まるで啓介を挑発し誘うように見えてしまう。
(なんかヤラしい……)
(――ダメだ、くらくらする……)
このまま隣を意識し過ぎると、運転の邪魔をするどころでは済まないことをしでかしそうだ。
昂ぶる気持ちを反らそうと、赤木に話しかける。
「外出るって、何か用事あったのか?」
「銀行に振り込みに行くの」
「そうだったのか。手間かけさせて悪かったな」
「いいよ。啓介さん送ってから、ちゃんと休憩時間もらうから」
啓介を送ることも仕事の一環というような赤木の口ぶり(間違ってはいないのだが…)は、啓介の密かで、しかも一方的に昂ぶっていた感情を抑えるには、一定の効果があった。
狭い車内でありながら二人の間にある壁を、一瞬で意識させられたのだ。
人の気も知らないで、淡々と啓介を送る仕事をこなす赤木。
ついこの間、啓介のFDに一緒に乗って赤城道路を走ったところじゃないか。
その時は楽しそうな様子だったし、色々話して打ち解けたというか距離が近くなったと、啓介は思っていたのに。
赤木はそうじゃなかったのか?
今日の会話と言えば、要件と質問に対する返事だけである。
素っ気ないというか、関心を持たれてないというか。
啓介は普段周囲から目を向けられやすく、それに煩わしさを感じることが多いが、逆の反応をされると、こちらを向かせたい欲が高まる。
赤木が好きなFDでドライブまでしたのに、これじゃ興味を引くには足りなかったのか。
(どうすっかな…)
無言のまま、目的地が近づいている。
信号待ちの車内。
無言の空間に耐えきれなくなり、啓介は赤木に聞いた。
「なぁ……怒ってんのか?」
何を考えているのか、返事をしない赤木。
信号が青に変わり、進み出すと思った瞬間
――ガガッ、ガガッ!! ―――・・・
(―――えっ?)
車が不自然に揺れエンジンが止まった。
「まさか…… エンスト……?」
静かになった車内で、啓介のつぶやいた声がやけに大きく聞こえた。
瞬間、赤木の顔が真っ赤に変わり体温が上がったのを感じた。
赤木は慌ててセルを回し、荒っぽい挙動ながらも車を再発進させた。
「赤木でも、エンストするんだなぁ」
啓介はニッっと口角を上げて笑う。
エンストしたことが可笑しかったんじゃなくて、赤木が二人の時にここまで顔に感情を出す様子を、見れたことが嬉しかった。
「笑わないでよ。No.2様に運転見られるの、緊張するの!!」
返ってきた言葉が意外過ぎて、呆気に取られる。
(――今まで俺のこと気にしている素振りなんか、微塵も見せていなかったのに。
なんだよ、赤木も意識してんじゃん。)
口数が少ないのも、啓介を意識して緊張していたからだと思うと、可笑しくて嬉しくて。
こみ上げてきた笑みを、啓介は抑えることが出来なかった。
目的地のコンビニに到着した。
赤木はさっきのことがあって、気まずそうに外に視線を向けている。
「サンキューな、赤木。助かったよ」
シートベルトを外しながら声をかける。
赤木は「どういたしまして」と小さく返事しながら、そそくさとギアをバックに入れようとしている。
「なぁ、仕事終わったらこのクルマで迎えに来てよ。オレも、このクルマ運転してみたい。
No.2直々に車の運転を教えてやるよ!」
クルマを降りた啓介は、運転席に向かって楽しさを堪えきれないとびきりの笑顔を向けて言った。
鉄は熱いうちに打てっていう言葉があるだろ?
この機会を逃すわけないだろ?
一歩近づいた状況を確信した啓介は、早速次の一歩を進めようと赤木を誘った。
「考えとく…。」
拒否ではない返事を聞いた啓介は、上機嫌で校舎に向かった。
赤木はるな、自分の周りにはいないタイプの女。
おもしれぇ。めちゃくちゃ気になる。
啓介は、バトルとは違う刺激に高揚を感じていた。
end.
2023.3.23.
――――――――――――――――
啓介、多分これは恋じゃない。
珍しい獲物を追いかけることを楽しんでいるだけ。
まだまだ始まらない二人。
「これはちょっと厄介ですね……。時間がかかります」
「マジ……?」
FDの駆動に違和感を感じ、点検をしにショップを訪れた啓介は、宮口の表情と声のトーンに思いの他深刻な状況を感じ取り、ざわり、と肌を粟立てた。FDに万が一のことがあれば、今後の遠征計画や関東最速プロジェクトにも大きな影響を与えてしまうであろう。
啓介の不安と焦りを感じたのか、宮口が、
「あっ……時間がかかると言っても、今から取りかかれば夜までには何とかなりますよっ!」
と安心させるように言葉を添える。
大切なFDが夜には帰ってくることが分かり、啓介はホッと息をついた。
しかし、実はもう一つ、啓介が焦る理由がある。
「このまま学校行くつもりだったのに、間に合わねぇ……ヤバい……」
必修の科目で出欠も厳しく判断される講義のため、絶対に遅刻はできないのだ。
FDが使えないとなると……バスか? バスなんかこの辺通ってるのか??
車やバイクが移動の足になっている啓介にとって、その他の手段は思いつかない。例えバスが通っていたとしても、講義に間に合うのか検討もつかなかった。
「私、今から休憩で外へ出るので、大学まで送りましょうか??」
啓介の焦る様子を見ていた赤木が、声をかけた。
「いいのか!? 助かる……サンキューな!」
願ってもない赤木の提案を、遠慮無く受けた。恩に着るぜ。
赤木が上司である松本に経緯を説明する。
「そうか、それは悪いな赤木。啓介を送ってから、きっちり休憩時間取ってくれよ」
「ありがとうございます。行ってきますね」
ペコッと松本に頭を下げて、赤木は啓介に声をかけた。
「啓介さん。クルマ回してくるので、ここで待っていて下さいね」
赤木と松本のやりとりを聞いていると、ここが仕事場であることを思い知らされる。
レッドサンズの活動はあくまでプライベートであるが、松本や宮口はいつもそれが本業であるかのように関わってくれている。
しかし、ここはレッドサンズだけのショップではない。一般の車のメンテナンスや車好きな奴らのチューニングまで、何台もの車を取り扱っているのだ。最近走り屋界隈で名前が通ってきたのか、特に客が増えてきていると感じる。いつ来ても、スタッフは忙しそうに動いている。
赤木にしたら啓介も、忙しい中関わる客の一人なんだろう。
すぐに啓介の前に、年季の入った白い軽自動車、スズキのアルトワークスだっけ、がやってきて止まった。
エンジン音を聞くだけで、チューニングされていることが分かる。
「どうぞ」と、運転席から赤木が声をかける。
「大学前のコンビニまで、よろしく」
啓介が助手席に乗り込みシートベルトをしたのを確認し、赤木はクルマをスタートさせた。
「狭いなぁ!」
FDのコックピットのような狭い運転席に慣れている啓介でも、軽自動車は窮屈に感じる。特に、助手席と運転席との距離は、間を隔たせるコンソールがないためか、より密着している印象だ。
脚も腕も気を抜いて座ると、ドライバーの邪魔になりそうなくらいの狭さである。
窮屈さを感じる助手席に、啓介は182㎝の身体を縮こませるように座った。
古い軽自動車といえ、ターボ仕様のエンジンは大人二人を乗せていてもパワー不足を感じさせない。
足回りは、かなり手を入れていることが乗っているだけで分かる。
癖がありコツがいりそうなクラッチやシフト操作を、赤木は表情を変えず平然としながら運転している。
「結構やってんなこの車。ショップの代車?」
「――失礼ね……。これは私の車」
赤木はムッとした表情で、啓介に言葉を投げるように返した。
(――しまった……)
FD好きの赤木なら、マツダ車や流線型の綺麗な車に乗ってるんじゃないかと勝手にイメージしてたので、あまりの違いに、つい「代車」とか言ってしまった。
「狭いけど、FDより車高あるし。」
「わりぃ……。ごめんな、勝手に勘違いして」
自分の車を貶される腹立たしさは、啓介もよく分かる。車が好きで自分が手を入れているならなおさらだ。
啓介はすぐに謝ったが、自分のしてしまった失言の重さに後悔しガックリと項垂れた。
「別にいいよ、知らなかったんでしょ」
赤木は「いいよ」と言ってくれたが、啓介の気まずさは変わらない。
気を紛らわすためにタバコを吸おうと、パーカーのポケットに手を入れようとした。
トンっ
(――あっ……)
「わりぃ……」
運転席との距離を失念し、啓介の肘が運転中の赤木の腕に当たった。
失言に、運転の邪魔に……。なにやってんだオレ。
啓介は、自分の不甲斐なさに茫然となった。
腕に当たったことは気にならないようだが、追い打ちをかけるように赤木は言った。
「このクルマは禁煙」
「えっ!? そうなのか!ごめん……」
踏んだり蹴ったりだ。このクルマに乗ってから、謝ることしかしていない。
気を紛らわすつもりだったのに、沼に沈んでいく気分だ。
「でも赤木、この前タバコ吸ってたよな? クルマでは吸わねぇの?」
「この前は社長がくれたから、たまたま吸っただけ。普段は吸わないよ」
吸わないにしては、本当に所作が自然だった。
しかも、シガーキスだって当たり前の流れのように……。
あの時を思い出すと、ゾワリと身体の奥を走った感覚が甦る。
今の状況も、あの時の距離と同じくらいか。
あの時は、自然と距離を取られてしまったが、今日は閉じ込められた狭い空間で赤木は運転中。
これ以上に離れることはできない状況だ。
隣に視線を向けると、あの時と同じように赤木の横顔が目に入る。
まっすぐに前に視線を向ける瞳。艶やかな睫。滑らかな肌。形のよい唇がやけに印象強く見え、唇に触れたい気持ちに掻き立てられる。
軽く手を伸ばせば触れることができる距離、赤木は避けたくても身動き出来ない状況。
赤木が操作するシフトレバーに触れる手指も、啓介の膝に触れそうなくらい近くなる。
シフトチェンジのたびに、まるで啓介を挑発し誘うように見えてしまう。
(なんかヤラしい……)
(――ダメだ、くらくらする……)
このまま隣を意識し過ぎると、運転の邪魔をするどころでは済まないことをしでかしそうだ。
昂ぶる気持ちを反らそうと、赤木に話しかける。
「外出るって、何か用事あったのか?」
「銀行に振り込みに行くの」
「そうだったのか。手間かけさせて悪かったな」
「いいよ。啓介さん送ってから、ちゃんと休憩時間もらうから」
啓介を送ることも仕事の一環というような赤木の口ぶり(間違ってはいないのだが…)は、啓介の密かで、しかも一方的に昂ぶっていた感情を抑えるには、一定の効果があった。
狭い車内でありながら二人の間にある壁を、一瞬で意識させられたのだ。
人の気も知らないで、淡々と啓介を送る仕事をこなす赤木。
ついこの間、啓介のFDに一緒に乗って赤城道路を走ったところじゃないか。
その時は楽しそうな様子だったし、色々話して打ち解けたというか距離が近くなったと、啓介は思っていたのに。
赤木はそうじゃなかったのか?
今日の会話と言えば、要件と質問に対する返事だけである。
素っ気ないというか、関心を持たれてないというか。
啓介は普段周囲から目を向けられやすく、それに煩わしさを感じることが多いが、逆の反応をされると、こちらを向かせたい欲が高まる。
赤木が好きなFDでドライブまでしたのに、これじゃ興味を引くには足りなかったのか。
(どうすっかな…)
無言のまま、目的地が近づいている。
信号待ちの車内。
無言の空間に耐えきれなくなり、啓介は赤木に聞いた。
「なぁ……怒ってんのか?」
何を考えているのか、返事をしない赤木。
信号が青に変わり、進み出すと思った瞬間
――ガガッ、ガガッ!! ―――・・・
(―――えっ?)
車が不自然に揺れエンジンが止まった。
「まさか…… エンスト……?」
静かになった車内で、啓介のつぶやいた声がやけに大きく聞こえた。
瞬間、赤木の顔が真っ赤に変わり体温が上がったのを感じた。
赤木は慌ててセルを回し、荒っぽい挙動ながらも車を再発進させた。
「赤木でも、エンストするんだなぁ」
啓介はニッっと口角を上げて笑う。
エンストしたことが可笑しかったんじゃなくて、赤木が二人の時にここまで顔に感情を出す様子を、見れたことが嬉しかった。
「笑わないでよ。No.2様に運転見られるの、緊張するの!!」
返ってきた言葉が意外過ぎて、呆気に取られる。
(――今まで俺のこと気にしている素振りなんか、微塵も見せていなかったのに。
なんだよ、赤木も意識してんじゃん。)
口数が少ないのも、啓介を意識して緊張していたからだと思うと、可笑しくて嬉しくて。
こみ上げてきた笑みを、啓介は抑えることが出来なかった。
目的地のコンビニに到着した。
赤木はさっきのことがあって、気まずそうに外に視線を向けている。
「サンキューな、赤木。助かったよ」
シートベルトを外しながら声をかける。
赤木は「どういたしまして」と小さく返事しながら、そそくさとギアをバックに入れようとしている。
「なぁ、仕事終わったらこのクルマで迎えに来てよ。オレも、このクルマ運転してみたい。
No.2直々に車の運転を教えてやるよ!」
クルマを降りた啓介は、運転席に向かって楽しさを堪えきれないとびきりの笑顔を向けて言った。
鉄は熱いうちに打てっていう言葉があるだろ?
この機会を逃すわけないだろ?
一歩近づいた状況を確信した啓介は、早速次の一歩を進めようと赤木を誘った。
「考えとく…。」
拒否ではない返事を聞いた啓介は、上機嫌で校舎に向かった。
赤木はるな、自分の周りにはいないタイプの女。
おもしれぇ。めちゃくちゃ気になる。
啓介は、バトルとは違う刺激に高揚を感じていた。
end.
2023.3.23.
――――――――――――――――
啓介、多分これは恋じゃない。
珍しい獲物を追いかけることを楽しんでいるだけ。
まだまだ始まらない二人。