Short Story
Name chenge
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□□□ まっすぐ ケンタ □□□
「啓介さんはすげーんだぜ!」
「啓介さんって、やっぱカッコイイ!」
「啓介さんに敵う奴なんかいねーぜ!」
彼が口を開けば、『啓介さん』の名前が何度も出る。
『高橋啓介さん』は、走り屋で彼が所属する赤城レッドサンズのナンバー2で黄色のFDに乗っている。21歳高崎市在住で、大きな病院の御曹司。昔はヤンチャをしていて、この辺では一目置かれた存在である。兄の『高橋涼介さん』とともにルックスも良くて、雑誌にも掲載されたこともある。身長は182cm、タバコの銘柄は……。
会ったこともないのにスラスラと説明出来るくらい彼から聞かされている『啓介さん』情報。
「彼女の名前より多く呼んでるんじゃない?」
なんてちょっと皮肉を込めて言ってみても、
「だって、啓介さんめちゃくちゃ凄いから……」
と、澄んだ瞳でこちらを真っ直ぐに見つめて、さも当たり前のことのように返す彼。
「そんなに凄い人なら……私も会ってみたいな」
そしたら、ちょっとは焦ってくれるかな?
彼女がそのルックスの良い『啓介さん』に目移りしてしまうんじゃないかって。誰が聞いても良い男な『啓介さん』に惚れてしまうんじゃないかって。
「ほんとか?! 走り見たら絶対惚れるぜ!」
「……」
焦るどころか、むしろ『啓介さん』に興味を持ったことを喜んでいる彼。しかも、私が走り屋の『啓介さん』に興味があると思い込んでいて、「今週末の夜の予定はどうだ?」なんて暢気に段取りを考えている。
きっと彼には、女心の複雑さを理解することができないのだろう。おバカなのは分かっているんだけど、嫌味や皮肉は通じずにただただ『啓介さん』を盲信している彼のことを、少し心配してしまう。その『啓介さん』に騙されたり、都合良く扱われてるんじゃないかって。
「ケンタはさ、『啓介さん』に嫉妬とかしないの?」
「なんでだよ?」
なんでって……。
彼よりうんと走りが速くて、お金持ちで、持ってないモノをいっぱい持っているし……。
「だって、啓介さんってほんとにカッコいいんだぜ!」
どうやら彼にとっては、そんなコトに嫉妬心を持たないくらい、尊敬してやまない人物らしい。
「じゃぁ、そんなかっこいい『啓介さん』に私を会わせて、気が移ったらどうしよう、とか思ったりしないの?」
「なんでだよ?」
だから、なんでって……。
遠回しではなく直球で言ってみても、彼にはピンと来ないらしい。
むしろ、「何変なこと言ってんだ?」とでも言いたげに、眉をひそめている。
「だって、オレのこと大好きだろ? オレも好きだし」
曇りない澄んだ瞳でまたも私を真っ直ぐに見つめて、さも当たり前のことのように言う。
さらりと向けられた好意に、ぽかんとして固まると、「何か変なこと言ったか?」と彼は首を傾げた。
その仕草を「可愛いな」って感じてフリーズした思考が緩んだ瞬間、『好き』の言葉の意味を理解した私の身体が、一瞬で熱を持った。
「どうした?」
顔色の変化を不思議そうに見つめる彼から、慌てて顔を背け両手で熱くなった頬を押さえる。
私の皮肉に込めた『啓介さん』への嫉妬心が恥ずかしくなるくらい、彼は私を好きでいてくれている。私の好きを信じてくれている。その愛情に、嫉妬なんて必要なかったんだと気付かされた。
イキがってて、調子乗りで、いつも金欠を嘆いている彼。物事を深く考えずに「バカだなぁ」と呆れることも多々あるが、分かりやすく向けられるシンプルな好意に、甘えていたのは私の方だ。恥ずかしくて態度に言葉に出来ない私の気持ちに、ちゃんと気付いて信じてくれている。
きっと『啓介さん』のことも、表面上の好条件に憧れ盲信しているのではなく、内にある魅力に気付いて惹かれてるんだろう。それを表現するボキャブラリーが「すごい」「かっこいい」なのが、彼らしくて愛おしく思えてしまう。
「ふふっ……なんでもない」
「なんでもなくないだろ?」
彼はますます納得のいかない顔をしていたけれど、笑みが漏れている私の表情を見てすぐに、ニカッとした笑顔に変わった。
あぁ、ほんと、可愛いなぁ。
向けられた純粋な恋慕。
むず痒くなって誤魔化すように、彼の頭をガシャガシャと撫で回した。
「口元にご飯粒付いてる」
「げぇ、かっこわりぃ! 早く言えよ」
慌てて掌で払うように口周りをさする彼。
「そんなケンタが、好きだよ」
「っは? ……えっ!?」
私にしては珍しい言葉を吐いたもんだから、意味を理解するのに数秒要したようだ。
小麦色の顔が、ぶわっと一気に赤くなる。
照れる彼がたまらなく可愛くて、にやけた顔のまま抱きしめてしまった。
2025.4.15
「啓介さんはすげーんだぜ!」
「啓介さんって、やっぱカッコイイ!」
「啓介さんに敵う奴なんかいねーぜ!」
彼が口を開けば、『啓介さん』の名前が何度も出る。
『高橋啓介さん』は、走り屋で彼が所属する赤城レッドサンズのナンバー2で黄色のFDに乗っている。21歳高崎市在住で、大きな病院の御曹司。昔はヤンチャをしていて、この辺では一目置かれた存在である。兄の『高橋涼介さん』とともにルックスも良くて、雑誌にも掲載されたこともある。身長は182cm、タバコの銘柄は……。
会ったこともないのにスラスラと説明出来るくらい彼から聞かされている『啓介さん』情報。
「彼女の名前より多く呼んでるんじゃない?」
なんてちょっと皮肉を込めて言ってみても、
「だって、啓介さんめちゃくちゃ凄いから……」
と、澄んだ瞳でこちらを真っ直ぐに見つめて、さも当たり前のことのように返す彼。
「そんなに凄い人なら……私も会ってみたいな」
そしたら、ちょっとは焦ってくれるかな?
彼女がそのルックスの良い『啓介さん』に目移りしてしまうんじゃないかって。誰が聞いても良い男な『啓介さん』に惚れてしまうんじゃないかって。
「ほんとか?! 走り見たら絶対惚れるぜ!」
「……」
焦るどころか、むしろ『啓介さん』に興味を持ったことを喜んでいる彼。しかも、私が走り屋の『啓介さん』に興味があると思い込んでいて、「今週末の夜の予定はどうだ?」なんて暢気に段取りを考えている。
きっと彼には、女心の複雑さを理解することができないのだろう。おバカなのは分かっているんだけど、嫌味や皮肉は通じずにただただ『啓介さん』を盲信している彼のことを、少し心配してしまう。その『啓介さん』に騙されたり、都合良く扱われてるんじゃないかって。
「ケンタはさ、『啓介さん』に嫉妬とかしないの?」
「なんでだよ?」
なんでって……。
彼よりうんと走りが速くて、お金持ちで、持ってないモノをいっぱい持っているし……。
「だって、啓介さんってほんとにカッコいいんだぜ!」
どうやら彼にとっては、そんなコトに嫉妬心を持たないくらい、尊敬してやまない人物らしい。
「じゃぁ、そんなかっこいい『啓介さん』に私を会わせて、気が移ったらどうしよう、とか思ったりしないの?」
「なんでだよ?」
だから、なんでって……。
遠回しではなく直球で言ってみても、彼にはピンと来ないらしい。
むしろ、「何変なこと言ってんだ?」とでも言いたげに、眉をひそめている。
「だって、オレのこと大好きだろ? オレも好きだし」
曇りない澄んだ瞳でまたも私を真っ直ぐに見つめて、さも当たり前のことのように言う。
さらりと向けられた好意に、ぽかんとして固まると、「何か変なこと言ったか?」と彼は首を傾げた。
その仕草を「可愛いな」って感じてフリーズした思考が緩んだ瞬間、『好き』の言葉の意味を理解した私の身体が、一瞬で熱を持った。
「どうした?」
顔色の変化を不思議そうに見つめる彼から、慌てて顔を背け両手で熱くなった頬を押さえる。
私の皮肉に込めた『啓介さん』への嫉妬心が恥ずかしくなるくらい、彼は私を好きでいてくれている。私の好きを信じてくれている。その愛情に、嫉妬なんて必要なかったんだと気付かされた。
イキがってて、調子乗りで、いつも金欠を嘆いている彼。物事を深く考えずに「バカだなぁ」と呆れることも多々あるが、分かりやすく向けられるシンプルな好意に、甘えていたのは私の方だ。恥ずかしくて態度に言葉に出来ない私の気持ちに、ちゃんと気付いて信じてくれている。
きっと『啓介さん』のことも、表面上の好条件に憧れ盲信しているのではなく、内にある魅力に気付いて惹かれてるんだろう。それを表現するボキャブラリーが「すごい」「かっこいい」なのが、彼らしくて愛おしく思えてしまう。
「ふふっ……なんでもない」
「なんでもなくないだろ?」
彼はますます納得のいかない顔をしていたけれど、笑みが漏れている私の表情を見てすぐに、ニカッとした笑顔に変わった。
あぁ、ほんと、可愛いなぁ。
向けられた純粋な恋慕。
むず痒くなって誤魔化すように、彼の頭をガシャガシャと撫で回した。
「口元にご飯粒付いてる」
「げぇ、かっこわりぃ! 早く言えよ」
慌てて掌で払うように口周りをさする彼。
「そんなケンタが、好きだよ」
「っは? ……えっ!?」
私にしては珍しい言葉を吐いたもんだから、意味を理解するのに数秒要したようだ。
小麦色の顔が、ぶわっと一気に赤くなる。
照れる彼がたまらなく可愛くて、にやけた顔のまま抱きしめてしまった。
2025.4.15