Short Story
Name chenge
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□□□ 朱色に染まる水平線 □□□
遠く離れた海辺の町に住む親戚のじーちゃんの初盆で、久しぶりにかーちゃんと一緒にその町を訪れた。町を離れていた親戚のねーちゃんも、初盆に合わせて帰省しているらしい。
『親戚のお姉さんとの再会』なんて、「まるでAVのシチュエーションみたいで興奮するぜ!」と健二は言っていた。確かに、言われてみればムラムラとしそうなフレーズだが、今日会うねーちゃんは思い出すだけでブルブルと震えてしまうような人だ。
会うたびに、イジメられて、泣かされて、それでも「男の子でしょ」と誰からもかばわれず、大人の後ろでケタケタと笑っている。オレにとっては、悪魔のような人だった。
「浩一郎くん、久しぶり!! うわぁ大人になったねぇ!!」
「いてて……」
再会した瞬間に、バシバシッと手加減なく背中を叩かれて、オレ以上に大人なはずのねーちゃんが、小さい頃と変わっていないことに恐怖する。
「彼女と夏を楽しんでる!?」
オレに彼女がいないことを見越して、嫌みな言い方でデカい声で聞いてくる。
「浩一郎ったら仕事とクルマばっかりで、女の子の『お』の字も聞かないのよ~」
かーちゃんまで乗っかってデカい声で返すから、オレは親戚中から笑われて大恥をかいた。
ねーちゃんめ……許すまじ……。
久しぶりに集まった親戚たちは、話が弾んで宴会が終わる様子もない。賑やかなことが好きなじーちゃんだったから、こうやって親戚みんながワイワイやっている姿を見て喜んでるだろう。
「浩一郎、お酒足りないから買い出し行ってきてちょうだい!あと、おつまみも適当に!」
「えぇ?! 適当って、難しいんだよな……」
「私も一緒に行くよ、浩一郎くん!」
よりによって、ねーちゃんがついてくることになった。最悪だ。きっとまた、何か悪巧みをしているに違いない。もしかして、オレのクルマに悪戯をしようとしてるんじゃ……。
昔持っていた飛行機のプラモデルを、「飛ぶのかと思って」と前の海に投げられたことを思い出し、とにかく予想もしない悪戯をするねーちゃんを警戒していた。
が、実際には悪戯をされるどころか、最寄りのスーパーでテキパキと酒とつまみを選んで、会計まで済ましてくれた。そんな様子に、ねーちゃんも大人になってちょっとは落ち着いたんだな、と警戒心も緩まる。
スムーズに買い出しが終わって荷物を家に運び込むと、ねーちゃんに「ちょっと外へ行こうよ」と誘われた。
家の目の前すぐに広がる海。傾き出した太陽が、少し空と海に朱色を足している。
ねーちゃんと2人、海を眺めながら並んで座った。
「んーっ、こうやってゆっくり海見るの久しぶりだよ」
大きく伸びをして、まっすぐに海を見つめるねーちゃん。
今は東京に出てOLをしていると話す横顔を見て、オレはびっくりして固まった。
(き、き、きれいだ……)
今まで、ねーちゃんを見て恐怖で固まることはあっても、美しさを感じて固まることはなかった。
都会のOL、年上のお姉さん、しかも美人……
「まるでAVのシチュエーションみたいで興奮するぜ!」といっていた健二のセリフを思い出し、つい鼻息が荒くなってしまう。
「どうしたの?」
オレの方を向いて小首をかしげる、ねーちゃん。
(かわっ、かか、かわいい……)
陽の朱みが頬に差し赤く見えることで、年上とは思えない幼さと、そこに色っぽさが足されている。
ドギマギと挙動不審になるオレをよそに、ねーちゃんは再び話を続けた。
とてもじゃないが、ねーちゃんの方なんて向けないオレは、先ほどより一段と朱色が強くなった水平線を凝視して、気を逸らそうとする。
「で、浩一郎くんはどうしてるの?」
「え⁈ ぁえーっと……」
不意にオレに話題を振られて狼狽える。
「どうしたの?変だよ??」
覗き込むように顔を近づけてくるねーちゃん。
より傾いた陽が、より朱が濃くなった陽が、ねーちゃんの整った顔を照らす。形の綺麗な鼻や唇が影を作って綺麗さを主張する。美しく弧を描いた唇が、開いた。
「ねえ、浩一郎くん、彼女はいるの?」
朱色が強く差す唇が艶かしく動く様に、目を奪われる。
(え、え、エッチ過ぎるぜ……)
心臓がバクバクと痛いくらい脈打つ。
「い、今はいないよっ」
せめてもの強がり。今どころか、今までいたことがないなんて、大人の色気を放つねーちゃんに言いたくなかった。
水平線にゆっくりと陽が触れる。もうまもなく、日の入りの時間だ。
海も空もその境目も、より一段と深い朱色に染まっていく。
「仕事でもリーダーを任されてて、忙しくて……」なんていろんな言い訳を繋ぎながら、視線はねーちゃんの白い肌が朱く染まっているところから放せない。
「くすっ……さては童貞だね、浩一郎くん」
妙に艶っぽい声で恥ずかしい言葉と名前を呼ばれ、一瞬心臓が止まったと思うくらい高鳴った。
少しずつ、オレの方に近づいてくるねーちゃん。
水平線に沈みかけた夕陽に射されたねーちゃんの顔、半分は朱らんだ強烈に色っぽい表情を見せ、もう半分は暗く陰りながらもニヤリと口角が上がる様子が、ゾクゾクとした怖さを与える。
身体がすくんで動かない。
更に少し、オレに迫るねーちゃん。
濃い朱に染まった唇が開く、チロリと見えた舌が唇をなぞりながら、オレに手を伸ばしてくる……。
まるでこれは……
「くくくくく、く、 喰われるぅぅ!!」
とっさに出た反応は、恐怖。
蛇に睨まれたカエル、いや、食べられる直前のカエルだ!
身体と記憶に染みこんだねーちゃんへの恐怖、そして、まだ経験したことのないエッチな体験への恐怖で、金縛りにあったかのように身動きができなくなる。
「浩一郎~、そろそろ帰るわよ~」
家の方から、かーちゃんが呼ぶ声が聞こえる。
普段は鬱陶しいかーちゃんの声が、今は強烈な安心感を与えてくれる。
恐怖ですくんだ身体が溶けた瞬間に、オレはその場から逃げ出した。
「か、かぁちゃんが呼んでっから、行くよっ。じゃ、じゃぁ!」
「あ~、またイジメ過ぎちゃった。かわいいなぁ、浩一郎くんって」
あの後、ねーちゃんが何を呟いたかなんて、オレは知らない。
2023.9.1
「朱(あけ)に染まる」の意味が「血まみれになる。血だらけになる」。
夕焼けの色が、より恐怖を煽ったのかも知れませんね。
遠く離れた海辺の町に住む親戚のじーちゃんの初盆で、久しぶりにかーちゃんと一緒にその町を訪れた。町を離れていた親戚のねーちゃんも、初盆に合わせて帰省しているらしい。
『親戚のお姉さんとの再会』なんて、「まるでAVのシチュエーションみたいで興奮するぜ!」と健二は言っていた。確かに、言われてみればムラムラとしそうなフレーズだが、今日会うねーちゃんは思い出すだけでブルブルと震えてしまうような人だ。
会うたびに、イジメられて、泣かされて、それでも「男の子でしょ」と誰からもかばわれず、大人の後ろでケタケタと笑っている。オレにとっては、悪魔のような人だった。
「浩一郎くん、久しぶり!! うわぁ大人になったねぇ!!」
「いてて……」
再会した瞬間に、バシバシッと手加減なく背中を叩かれて、オレ以上に大人なはずのねーちゃんが、小さい頃と変わっていないことに恐怖する。
「彼女と夏を楽しんでる!?」
オレに彼女がいないことを見越して、嫌みな言い方でデカい声で聞いてくる。
「浩一郎ったら仕事とクルマばっかりで、女の子の『お』の字も聞かないのよ~」
かーちゃんまで乗っかってデカい声で返すから、オレは親戚中から笑われて大恥をかいた。
ねーちゃんめ……許すまじ……。
久しぶりに集まった親戚たちは、話が弾んで宴会が終わる様子もない。賑やかなことが好きなじーちゃんだったから、こうやって親戚みんながワイワイやっている姿を見て喜んでるだろう。
「浩一郎、お酒足りないから買い出し行ってきてちょうだい!あと、おつまみも適当に!」
「えぇ?! 適当って、難しいんだよな……」
「私も一緒に行くよ、浩一郎くん!」
よりによって、ねーちゃんがついてくることになった。最悪だ。きっとまた、何か悪巧みをしているに違いない。もしかして、オレのクルマに悪戯をしようとしてるんじゃ……。
昔持っていた飛行機のプラモデルを、「飛ぶのかと思って」と前の海に投げられたことを思い出し、とにかく予想もしない悪戯をするねーちゃんを警戒していた。
が、実際には悪戯をされるどころか、最寄りのスーパーでテキパキと酒とつまみを選んで、会計まで済ましてくれた。そんな様子に、ねーちゃんも大人になってちょっとは落ち着いたんだな、と警戒心も緩まる。
スムーズに買い出しが終わって荷物を家に運び込むと、ねーちゃんに「ちょっと外へ行こうよ」と誘われた。
家の目の前すぐに広がる海。傾き出した太陽が、少し空と海に朱色を足している。
ねーちゃんと2人、海を眺めながら並んで座った。
「んーっ、こうやってゆっくり海見るの久しぶりだよ」
大きく伸びをして、まっすぐに海を見つめるねーちゃん。
今は東京に出てOLをしていると話す横顔を見て、オレはびっくりして固まった。
(き、き、きれいだ……)
今まで、ねーちゃんを見て恐怖で固まることはあっても、美しさを感じて固まることはなかった。
都会のOL、年上のお姉さん、しかも美人……
「まるでAVのシチュエーションみたいで興奮するぜ!」といっていた健二のセリフを思い出し、つい鼻息が荒くなってしまう。
「どうしたの?」
オレの方を向いて小首をかしげる、ねーちゃん。
(かわっ、かか、かわいい……)
陽の朱みが頬に差し赤く見えることで、年上とは思えない幼さと、そこに色っぽさが足されている。
ドギマギと挙動不審になるオレをよそに、ねーちゃんは再び話を続けた。
とてもじゃないが、ねーちゃんの方なんて向けないオレは、先ほどより一段と朱色が強くなった水平線を凝視して、気を逸らそうとする。
「で、浩一郎くんはどうしてるの?」
「え⁈ ぁえーっと……」
不意にオレに話題を振られて狼狽える。
「どうしたの?変だよ??」
覗き込むように顔を近づけてくるねーちゃん。
より傾いた陽が、より朱が濃くなった陽が、ねーちゃんの整った顔を照らす。形の綺麗な鼻や唇が影を作って綺麗さを主張する。美しく弧を描いた唇が、開いた。
「ねえ、浩一郎くん、彼女はいるの?」
朱色が強く差す唇が艶かしく動く様に、目を奪われる。
(え、え、エッチ過ぎるぜ……)
心臓がバクバクと痛いくらい脈打つ。
「い、今はいないよっ」
せめてもの強がり。今どころか、今までいたことがないなんて、大人の色気を放つねーちゃんに言いたくなかった。
水平線にゆっくりと陽が触れる。もうまもなく、日の入りの時間だ。
海も空もその境目も、より一段と深い朱色に染まっていく。
「仕事でもリーダーを任されてて、忙しくて……」なんていろんな言い訳を繋ぎながら、視線はねーちゃんの白い肌が朱く染まっているところから放せない。
「くすっ……さては童貞だね、浩一郎くん」
妙に艶っぽい声で恥ずかしい言葉と名前を呼ばれ、一瞬心臓が止まったと思うくらい高鳴った。
少しずつ、オレの方に近づいてくるねーちゃん。
水平線に沈みかけた夕陽に射されたねーちゃんの顔、半分は朱らんだ強烈に色っぽい表情を見せ、もう半分は暗く陰りながらもニヤリと口角が上がる様子が、ゾクゾクとした怖さを与える。
身体がすくんで動かない。
更に少し、オレに迫るねーちゃん。
濃い朱に染まった唇が開く、チロリと見えた舌が唇をなぞりながら、オレに手を伸ばしてくる……。
まるでこれは……
「くくくくく、く、 喰われるぅぅ!!」
とっさに出た反応は、恐怖。
蛇に睨まれたカエル、いや、食べられる直前のカエルだ!
身体と記憶に染みこんだねーちゃんへの恐怖、そして、まだ経験したことのないエッチな体験への恐怖で、金縛りにあったかのように身動きができなくなる。
「浩一郎~、そろそろ帰るわよ~」
家の方から、かーちゃんが呼ぶ声が聞こえる。
普段は鬱陶しいかーちゃんの声が、今は強烈な安心感を与えてくれる。
恐怖ですくんだ身体が溶けた瞬間に、オレはその場から逃げ出した。
「か、かぁちゃんが呼んでっから、行くよっ。じゃ、じゃぁ!」
「あ~、またイジメ過ぎちゃった。かわいいなぁ、浩一郎くんって」
あの後、ねーちゃんが何を呟いたかなんて、オレは知らない。
2023.9.1
「朱(あけ)に染まる」の意味が「血まみれになる。血だらけになる」。
夕焼けの色が、より恐怖を煽ったのかも知れませんね。
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