SYNERGY 短編集
Name chenge
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
□□ interested in me □□
「あれ、宮口は居ねぇの??」
啓介はFDのセッティングのために、いつものチューニングショップを訪れた。
休憩中なのか、談笑するスタッフたちの中に専属メカニックの宮口の姿は見えない。
「あ、啓介さん。お疲れ様です」
スタッフの輪の中から、赤木が抜け出しこちらに駆け寄ってきた。
「宮さん今、別の工場に行ってて……。 FD、裏のスペースに置いてもらえますか? 誘導します」
FDの前で誘導する手には、火の付いたタバコが見えた。
FDをショップ裏の指定されたスペースに停め、啓介は降りながら赤木に声をかけた。
「赤木もタバコ吸うんだな」
「あー……ごめんなさい。ちょうど火をつけたばっかで、勿体無くて……」
意外さを伝えたつもりだったが、赤木はタバコを持ったまま誘導したことが悪いと思ったのか、バツ悪そうな表情を見せながら、トントンと灰を落とした。
仕草が自然で、喫煙に慣れてないわけではなさそうだ。
「もったいないって、おっさんみたいなこと言うなぁ」
「ははは、普段吸わないんだけど……。
社長にもらった1本だから、大事に吸わないとね。」
普段吸わない、と言う割には慣れたように煙をくもらせながら、ニヤリと笑みを浮かべた。
女だてらに自動車メカニックをしていて、しかもFD好き。どんなヤツなのか興味があったが、ショップで顔を合わすことはあっても、二人きりでこんな風にクルマ以外の話をすることは今まで無かった。
啓介は赤木の隣に並び、タバコを吸おうと口に咥える。が、ライターが見当たらない。
「あれ……。ライターどこ行った??」
ポケットを探る様子を見て赤木が、「火、取ってくるよ」と、店舗へ向かおうとした。
「あ、いい。その火貸して」
「え?」
せっかくの二人きりのタイミングを逃したくなくて、とっさに引き留める。
「赤木のタバコの火。」
「―――あぁ、そう言うことか。どうぞ……んっ」
赤木は一瞬戸惑ったような目をしたが、すぐにタバコを咥えたまま啓介の方を向いた。
啓介は少しだけかがみ込むようにして、タバコの先を近づける。
自分が誘ったことなのに、いざとなると思った以上に赤木との距離が近くて動揺する。
ただの車仲間では、絶対に近づかない距離。
赤木の伏せられた瞳から伸びる睫毛。滑らかな肌。形のよい唇に視線を奪われる。
空気越しに赤木の体温を感じて、ゾワリと、身体の奥に走る感覚。
前の彼女と別れて以降、久しぶりの刺激だ。
(あぁ、まるでキスするみたいだ、、、)
赤木の火を誘い込むように息を吸う。
呼吸を合わせながら、少しずつ角度を変えながら、タバコの先を合わす。
(――キスしてぇ、、、)
啓介の心を知ってか知らずか、タバコに火が移ったのを視線の先で確認し、赤木はスッと身体を離した。
「ふふっ、、、マズいね。タバコ」
「――あぁ、マズい」
過燃焼させると不味くなるって誰かが言ってたっけ。
マズいのはタバコの味だけでは無い。この距離は、啓介を勘違いさせてしまう。
まるで、2人が特別な関係かのように。
このまま赤木の細い腰を引き寄せて、抱きしめることが当然の関係かのように。
赤木は何も感じなかったんだろうか?
啓介は、赤木がタバコを咥える唇に、差し挟む指先に、FDを眺め微笑む目に、視線が奪われ離れなくなっているのに。
啓介の戸惑いに反して、赤木は平然とした態度で距離を詰め、そして離れた。
視線は、啓介ではなくFDに向けられている。白い煙を吐き出しながら、愛おしい物を見るように目を細めている。
「いつ見ても、いい車。しびれるわぁ」
赤木の好きな車がFDというのは知っている。
「そりゃ、オレの車だからな」
愛機FD。啓介が1番好きな物であり、1番大切にしている物である。
そのFDを褒められるのは、当然悪い気はしない。でも今は複雑な心境である。
赤木の視線だけでなく、興味も全てFDに向けられていることに、嫉妬のような感情が生まれている。
「キズつけたら、怒るよ?」
「そんなことするかよ、オレを誰だと思ってんだ」
「どうだか、、、。大事に乗ってよね」
「とーぜんっ!」
こんなラフなやり取りもできるのに、視線が合わない。
赤木はふぅっと最後の煙を吐いた後、吸い終わったタバコを灰皿に押し付けた。
「よしっ。今日はどこ調整します??」
赤木は急に啓介の方を向く。
「宮さん来るまでに、準備しておきます。」
その表情は真剣で、強い眼差しが啓介に刺さる。
(おいおい……一瞬で仕事モードかよ)
言葉遣いまで変わる切り替え様に、唖然とする。
だが、まぁ確かに仕事中だからそんなもんかと思い直し、啓介は調整箇所と理由を簡潔に伝えた。
「了解です」
そう言って赤木は、テキパキと必要な工具を揃えて準備を始めた。啓介はその姿を眺めながら、残り少なくなったタバコを咥える。
この火が消えるまで。
宮口が戻ってくるまで。
赤木との時間を楽しみたい。
(オレにも興味を向けさせたい。どうすっか・・・)
あまりの無関心さに、逆に気を引きたい感情が強くなる。まるで、子供のように。
……そうだ。
「――赤木。今晩FDに乗るか?」
啓介のいきなりの思わぬ提案に、赤木は振り向き驚いた様に目を見開いた。
瞳は動揺を示しているが、口元が嬉しそうに緩んだことを啓介は見逃さなかった。
なんだ、簡単じゃないか。
赤木の興味を惹く方法。
「啓介さん、お待たせしました!」
帰ってきた宮口が、こちらに向かってくる。
「今日21時、コンビニ集合な」
赤木の耳元で呟き、啓介も宮口の方に向かった。
赤木がどんな表情をしているかは、見ていない。
夜が楽しみだ。
end.
2023/03/11
「あれ、宮口は居ねぇの??」
啓介はFDのセッティングのために、いつものチューニングショップを訪れた。
休憩中なのか、談笑するスタッフたちの中に専属メカニックの宮口の姿は見えない。
「あ、啓介さん。お疲れ様です」
スタッフの輪の中から、赤木が抜け出しこちらに駆け寄ってきた。
「宮さん今、別の工場に行ってて……。 FD、裏のスペースに置いてもらえますか? 誘導します」
FDの前で誘導する手には、火の付いたタバコが見えた。
FDをショップ裏の指定されたスペースに停め、啓介は降りながら赤木に声をかけた。
「赤木もタバコ吸うんだな」
「あー……ごめんなさい。ちょうど火をつけたばっかで、勿体無くて……」
意外さを伝えたつもりだったが、赤木はタバコを持ったまま誘導したことが悪いと思ったのか、バツ悪そうな表情を見せながら、トントンと灰を落とした。
仕草が自然で、喫煙に慣れてないわけではなさそうだ。
「もったいないって、おっさんみたいなこと言うなぁ」
「ははは、普段吸わないんだけど……。
社長にもらった1本だから、大事に吸わないとね。」
普段吸わない、と言う割には慣れたように煙をくもらせながら、ニヤリと笑みを浮かべた。
女だてらに自動車メカニックをしていて、しかもFD好き。どんなヤツなのか興味があったが、ショップで顔を合わすことはあっても、二人きりでこんな風にクルマ以外の話をすることは今まで無かった。
啓介は赤木の隣に並び、タバコを吸おうと口に咥える。が、ライターが見当たらない。
「あれ……。ライターどこ行った??」
ポケットを探る様子を見て赤木が、「火、取ってくるよ」と、店舗へ向かおうとした。
「あ、いい。その火貸して」
「え?」
せっかくの二人きりのタイミングを逃したくなくて、とっさに引き留める。
「赤木のタバコの火。」
「―――あぁ、そう言うことか。どうぞ……んっ」
赤木は一瞬戸惑ったような目をしたが、すぐにタバコを咥えたまま啓介の方を向いた。
啓介は少しだけかがみ込むようにして、タバコの先を近づける。
自分が誘ったことなのに、いざとなると思った以上に赤木との距離が近くて動揺する。
ただの車仲間では、絶対に近づかない距離。
赤木の伏せられた瞳から伸びる睫毛。滑らかな肌。形のよい唇に視線を奪われる。
空気越しに赤木の体温を感じて、ゾワリと、身体の奥に走る感覚。
前の彼女と別れて以降、久しぶりの刺激だ。
(あぁ、まるでキスするみたいだ、、、)
赤木の火を誘い込むように息を吸う。
呼吸を合わせながら、少しずつ角度を変えながら、タバコの先を合わす。
(――キスしてぇ、、、)
啓介の心を知ってか知らずか、タバコに火が移ったのを視線の先で確認し、赤木はスッと身体を離した。
「ふふっ、、、マズいね。タバコ」
「――あぁ、マズい」
過燃焼させると不味くなるって誰かが言ってたっけ。
マズいのはタバコの味だけでは無い。この距離は、啓介を勘違いさせてしまう。
まるで、2人が特別な関係かのように。
このまま赤木の細い腰を引き寄せて、抱きしめることが当然の関係かのように。
赤木は何も感じなかったんだろうか?
啓介は、赤木がタバコを咥える唇に、差し挟む指先に、FDを眺め微笑む目に、視線が奪われ離れなくなっているのに。
啓介の戸惑いに反して、赤木は平然とした態度で距離を詰め、そして離れた。
視線は、啓介ではなくFDに向けられている。白い煙を吐き出しながら、愛おしい物を見るように目を細めている。
「いつ見ても、いい車。しびれるわぁ」
赤木の好きな車がFDというのは知っている。
「そりゃ、オレの車だからな」
愛機FD。啓介が1番好きな物であり、1番大切にしている物である。
そのFDを褒められるのは、当然悪い気はしない。でも今は複雑な心境である。
赤木の視線だけでなく、興味も全てFDに向けられていることに、嫉妬のような感情が生まれている。
「キズつけたら、怒るよ?」
「そんなことするかよ、オレを誰だと思ってんだ」
「どうだか、、、。大事に乗ってよね」
「とーぜんっ!」
こんなラフなやり取りもできるのに、視線が合わない。
赤木はふぅっと最後の煙を吐いた後、吸い終わったタバコを灰皿に押し付けた。
「よしっ。今日はどこ調整します??」
赤木は急に啓介の方を向く。
「宮さん来るまでに、準備しておきます。」
その表情は真剣で、強い眼差しが啓介に刺さる。
(おいおい……一瞬で仕事モードかよ)
言葉遣いまで変わる切り替え様に、唖然とする。
だが、まぁ確かに仕事中だからそんなもんかと思い直し、啓介は調整箇所と理由を簡潔に伝えた。
「了解です」
そう言って赤木は、テキパキと必要な工具を揃えて準備を始めた。啓介はその姿を眺めながら、残り少なくなったタバコを咥える。
この火が消えるまで。
宮口が戻ってくるまで。
赤木との時間を楽しみたい。
(オレにも興味を向けさせたい。どうすっか・・・)
あまりの無関心さに、逆に気を引きたい感情が強くなる。まるで、子供のように。
……そうだ。
「――赤木。今晩FDに乗るか?」
啓介のいきなりの思わぬ提案に、赤木は振り向き驚いた様に目を見開いた。
瞳は動揺を示しているが、口元が嬉しそうに緩んだことを啓介は見逃さなかった。
なんだ、簡単じゃないか。
赤木の興味を惹く方法。
「啓介さん、お待たせしました!」
帰ってきた宮口が、こちらに向かってくる。
「今日21時、コンビニ集合な」
赤木の耳元で呟き、啓介も宮口の方に向かった。
赤木がどんな表情をしているかは、見ていない。
夜が楽しみだ。
end.
2023/03/11