Short Story
Name chenge
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□□□ 虫除けの跡 □□□
お題:『高橋啓介』『虫』
もう少しで梅雨が明けそうな時期。蒸し暑さは高崎市内よりも赤城の方が少しましかと思っていたが、僅かな差しか感じられない。
レッドサンズ1軍2軍メンバーの走りをナンバー2直々にしごいてやろうと、啓介は珍しくギャラリー参加していた。
(くそ暑ぃ……そして、虫が鬱陶しい!!)
季節と場所を考えれば、当然と言えば当然。
蚊だか何か分からない虫が、次々と身体に纏わり付いては振り払う。しかし、そんなことでは防げる訳もなく、帰る頃には肌が見えている部分以外も含め、何ヶ所も虫にヤラれていた。
メンバーの前では平然を装っていた啓介も、FDに乗り込み1人になるとべたつく汗の不快感や虫刺されの痒みで我慢ができなくなり、帰路を急いだ。
着いた先は自宅ではなく、来慣れた彼女の部屋。
「よう、シャワー貸してくんない?」
開口一番がそれ?と彼女は不服そうに言いながらも、クーラーを効かしてくれている部屋に案内された。用意された冷えた麦茶を飲み干す間に、バスタオルや着替えを用意してくれているところを見ると、突然の訪問を嫌がられているわけではないことは伝わり、啓介はニヤついた。
・・・・・・・・・
「ずいぶん熱烈なカノジョだこと」
「は? 何言ってんの?」
シャワーを浴び終え下着姿で部屋に戻った啓介に、彼女は意地悪気に言った。
それ、と指さされたのは、首回りなどにいくつも見える赤い跡。
「これはっ、虫だよ!虫刺され! 今日は凄かったんだって!!」
「ふ~ん、スゴかったんだぁ……ヨかった?」
「よかねーよ、最悪。すげー痒いし」
特に、鎖骨~首回りに赤い腫れが目立って、遠目に見るとキスマークに見えないこともない。しかし啓介にしてみれば、ただ痒みという苦痛を与える辛いモノでしかない。
彼女は、掻いたら跡残るよ、と痒み止めの軟膏を手に啓介に近づいた。
「ちょっとじっとしててね」
下着姿の啓介に、服を着た彼女が向かい合うように座る。軟膏をつけた指を、一つずつ赤い腫れに塗り込んでいく。首筋、うなじ、鎖骨……、痒みなのか指越しに伝わる熱なのか、ムズムズとした感覚を啓介は黙って抑え込んでいた。
「背中も赤くなってるところあるよ。ホントに熱烈なカノジョだねぇ」
「だから、違うって、いい加減怒るぞ」
「ねぇ、本当に『全部』虫刺され?」
「そうだって言ってんだろ?」
「嘘」
嘘なんてついていない。まったく覚えのないことを言われ、啓介は混乱する。
ここ、と彼女が指先でトントンと軽く叩いた。
鎖骨のわずかに下、シャツの首元に隠れるか隠れないか微妙な位置。
「これ、私が付けたんだよね、昨日」
赤い跡は、明らかに虫刺されではない。
「なんだよ、驚かすなよ……」
「へへへ、そんな戸惑うなんて思わなくて」
意地の悪い彼女は、啓介を揶揄うことを愉しんだようだ。
「悪い虫が寄ってこないようにと思ったんだけど、本物の虫には全然効果無かったね」
「当たり前だろ。しかも、キスマークなんかつけなくても、誰も寄せ付けねーよ」
あっさりとした性格なようで、意外に嫉妬心をあらわにする彼女。
「薬塗ったところ、キスできないね…」
残念そうに言う彼女が、可愛らしくて微笑ましくて。さっきまで抑えこんでいたムズムズとした感情が我慢できなくなる。
「じゃあ今日は、オレが虫除け効果のある印、たっぷり付けてやるよ」
悪い虫が寄ってこないように、と耳元で呟き、そのまま彼女を抱き上げベッドへ連れて行った。
「『高橋啓介』っていう強力な虫除けが隣にいれば、それだけで群馬中の悪い虫は寄ってこないんじゃないかな」と言った彼女の小さい拒否は、聞こえないふりをして、今日啓介が刺された以上の赤い跡を、彼女の肌に散らした。
End.
2023.7.1
お題:『高橋啓介』『虫』
もう少しで梅雨が明けそうな時期。蒸し暑さは高崎市内よりも赤城の方が少しましかと思っていたが、僅かな差しか感じられない。
レッドサンズ1軍2軍メンバーの走りをナンバー2直々にしごいてやろうと、啓介は珍しくギャラリー参加していた。
(くそ暑ぃ……そして、虫が鬱陶しい!!)
季節と場所を考えれば、当然と言えば当然。
蚊だか何か分からない虫が、次々と身体に纏わり付いては振り払う。しかし、そんなことでは防げる訳もなく、帰る頃には肌が見えている部分以外も含め、何ヶ所も虫にヤラれていた。
メンバーの前では平然を装っていた啓介も、FDに乗り込み1人になるとべたつく汗の不快感や虫刺されの痒みで我慢ができなくなり、帰路を急いだ。
着いた先は自宅ではなく、来慣れた彼女の部屋。
「よう、シャワー貸してくんない?」
開口一番がそれ?と彼女は不服そうに言いながらも、クーラーを効かしてくれている部屋に案内された。用意された冷えた麦茶を飲み干す間に、バスタオルや着替えを用意してくれているところを見ると、突然の訪問を嫌がられているわけではないことは伝わり、啓介はニヤついた。
・・・・・・・・・
「ずいぶん熱烈なカノジョだこと」
「は? 何言ってんの?」
シャワーを浴び終え下着姿で部屋に戻った啓介に、彼女は意地悪気に言った。
それ、と指さされたのは、首回りなどにいくつも見える赤い跡。
「これはっ、虫だよ!虫刺され! 今日は凄かったんだって!!」
「ふ~ん、スゴかったんだぁ……ヨかった?」
「よかねーよ、最悪。すげー痒いし」
特に、鎖骨~首回りに赤い腫れが目立って、遠目に見るとキスマークに見えないこともない。しかし啓介にしてみれば、ただ痒みという苦痛を与える辛いモノでしかない。
彼女は、掻いたら跡残るよ、と痒み止めの軟膏を手に啓介に近づいた。
「ちょっとじっとしててね」
下着姿の啓介に、服を着た彼女が向かい合うように座る。軟膏をつけた指を、一つずつ赤い腫れに塗り込んでいく。首筋、うなじ、鎖骨……、痒みなのか指越しに伝わる熱なのか、ムズムズとした感覚を啓介は黙って抑え込んでいた。
「背中も赤くなってるところあるよ。ホントに熱烈なカノジョだねぇ」
「だから、違うって、いい加減怒るぞ」
「ねぇ、本当に『全部』虫刺され?」
「そうだって言ってんだろ?」
「嘘」
嘘なんてついていない。まったく覚えのないことを言われ、啓介は混乱する。
ここ、と彼女が指先でトントンと軽く叩いた。
鎖骨のわずかに下、シャツの首元に隠れるか隠れないか微妙な位置。
「これ、私が付けたんだよね、昨日」
赤い跡は、明らかに虫刺されではない。
「なんだよ、驚かすなよ……」
「へへへ、そんな戸惑うなんて思わなくて」
意地の悪い彼女は、啓介を揶揄うことを愉しんだようだ。
「悪い虫が寄ってこないようにと思ったんだけど、本物の虫には全然効果無かったね」
「当たり前だろ。しかも、キスマークなんかつけなくても、誰も寄せ付けねーよ」
あっさりとした性格なようで、意外に嫉妬心をあらわにする彼女。
「薬塗ったところ、キスできないね…」
残念そうに言う彼女が、可愛らしくて微笑ましくて。さっきまで抑えこんでいたムズムズとした感情が我慢できなくなる。
「じゃあ今日は、オレが虫除け効果のある印、たっぷり付けてやるよ」
悪い虫が寄ってこないように、と耳元で呟き、そのまま彼女を抱き上げベッドへ連れて行った。
「『高橋啓介』っていう強力な虫除けが隣にいれば、それだけで群馬中の悪い虫は寄ってこないんじゃないかな」と言った彼女の小さい拒否は、聞こえないふりをして、今日啓介が刺された以上の赤い跡を、彼女の肌に散らした。
End.
2023.7.1