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ベリー・メリー・アンバースデイ

2014/04/08 23:19
あしたのファミリア
國府神くん(捏造)誕生日小話。やっぱりそこはかとなく國狗。



続き




「狗会局長、本日分の報告書を――」
「國府神君、非誕生日おっめでと~う!」
局長室に入ってきた國府神君に向けて、勢い良くクラッカーの紐を引く。途端鳴り響く破裂音。見事髪の毛に着地した、色とりどりのリボンに面食らった顔をする國府神君が見られただけでも、今回のサプライズパーティを開いた甲斐があるというもの。目論見が上手く行ったと、心の中でほくそ笑んだのも束の間、僕の優秀過ぎる秘書は、いつものしかめっ面を作ると、髪の毛についたリボンを払い除けて一言。
「…………。狗会局長、本日分の報告書を頂きたいのですが」
「何だい何だい、ノリが悪いよ國府神君。せっかく君の非誕生日祝いのパーティ開いてるってのにさあ」
「報告書を頂けたのなら、パーティでも何でもいくらでもおつき合いします」
「その言葉に二言はないね?」
「ええ。ありませんよ」 「報告書はそこの碁盤の上に置いてあるよ」
「きちんと出来上がっているのか、確かめてもよろしいですか」
「ど~ぞ」
指し示した碁盤の上から紙の束を拾い上げ、ニ、三枚捲った國府神君の顔が、みるみる内に驚きに満ちていく。それを見て、僕は今度は心の中でなくほくそ笑む。
「さあさあ國府神君、約束通り、今日は朝までとことんつき合ってもらおうじゃあないか」
「確かに、報告書は頂けたのでつき合いはしますが……そもそも非誕生日とは何なんですか」
「何って、言葉通りの日だよ。誕生日じゃない日、だから非誕生日。不思議の国のアリスの映画を見た事は?」
「ありませんが」
「あの映画の中に出てくるんだよ。非誕生日――何でもない日を祝う歌がね」
「はあ」
「僕は君の誕生日を知らないし、君は君自身の誕生日を知らない。何せ君は日付という概念が存在しない場所で生まれたんだ、誕生日が分からないのも無理のない話だと思うよ」
だからさ、と、僕は話を続ける。
「誕生日が分からないなら、誕生日じゃない日をお祝いすれば良いんじゃないかな。君だって、一年に一回ぐらいはお祝いのケーキ食べたいだろう?」
ま、僕がケーキ食べたいってのもあるんだけどさ。そうつけ加えて声を上げて笑えば、國府神君はふう、と呆れたように溜め息を吐いて寄越して。
「ケーキが食べたければ自分で買って食べますが――」
でも。
「局長に祝って頂くというのは、悪くはないですね」 彼にしては珍しく、黒目がちな両目を柔らかく細めたのだった。



2014.04.08




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