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夜の次にくるもの

 瀬田です。
 この間、男に愛の告白をされました。
 生まれて初めてのマジ告白が、男……しかも、親友からなんて。
 辛すぎます。
 あれから、斯波とは微妙な関係。
「……おはよ」
「うん。……おはよ」
 こうして、朝、通り過ぎる時に挨拶して、席に着く。
 それ以上は何も話さない。
 あの日。
 あの、夕陽がやけに赤かった日。
 震える声で、アイツは俺を好きだと言った。友達としてじゃなく、本気で好きなのだと。
 そして、俺は……。
『……ごめん、斯波。俺、お前のこと友達としては好きだけど……。そういう風には見られない』
 そう言って断った。
 すると、斯波は……。アイツは笑って、
『……うん。わかってた』
 と言った。
 どこか、昏さを秘めた微笑みだった。
 それから、数日後。
 状況は、さらに悪化。
 斯波は塞ぎ込んでしまった。というか、元々あった周囲の人間に対するバリアを、より強化したって感じ。
 なんでこんなことになってしまったんだか。……って、俺が無理矢理聞き出したからだよな。
 まさか、アイツがそういう悩みを持っていたなんて。
 出会った時のアイツは、チャラくて軽くて。学校に遊びに来てるような奴だった。まぁ、それは今もだけど。
 いつもヘラヘラ笑ってて。真剣な話も茶化したりして。
 でも、本気の悩みは親身になって聞いてくれた。話を聞きながら泣き出すことなんて、しょっちゅうで……。
 チラリと目だけを動かして、自分の席に座っている斯波を見やる。
 アイツは、ぼんやり外の景色を眺めていた。
 一体、どういう気持ちだったんだろう。
 俺と一緒にいる間、アイツはどんな気持ちで……。
 胸のモヤモヤが消えない。
 俺は机に突っ伏して頭を軽く掻いた。同時に、深い溜め息が漏れる。
 アイツの悩みを何とかしてやりたくて必死だった。
 いつも悩みを聞いてもらうのは、自分だったから。今度は、俺がアイツの力に……なんて思って力んで。
 その悩みの種が俺だとも知らずに、強引に……。
 あー。最っ低だ、俺。何やってんだ。本当に。
 自分が馬鹿すぎて情けなくなる。
「どうした、瀬田」
 クラスメイトが話しかけてきた。
「眠いの?」
「……あー。眠い……の、かも」
 俺が突っ伏したままそう答えると、クラスメイトは「なんだそりゃ」と笑って通り過ぎて行った。
 実際、俺は殆ど眠れて無かった。
 だから、授業中は爆睡状態で。
 でも、それは斯波も同じだった。……アイツはいつもそんな感じだけど、今回は本気で眠れて無いんだと思う。
 顔を傾けて、また斯波を見た。アイツもクラスメイトと話してる。こうして見ると、普段とあんま変わらない。
 笑って、ふざけて。冗談を言っては笑わせる。いつもの斯波だ。
 でも、今ならハッキリわかる。
 ふとした時に見せる、アイツの疲れたような昏い瞳。自嘲めいて歪む口元。
 その一つ一つのサインを。深刻さを。
 あんだけ長い間一緒にいて、ずっと見逃していた。
 何が友達だ。
 親友だよ。
 自分が恥ずかしくて、斯波と目が合わせられない。
 自分でやらかしたことなのに。
 最低だ……俺。
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