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キミ想イ

 諦めと拒絶。
 瀬田は俺と目を合わせようとしない。
 当然の結果だ。
 瀬田は本気で俺のことを心配してくれている。それを俺は、笑ってはぐらかしているんだから。
 それなのに。
「行くとこ……って、別に。あれは……」
「いいから行けって!! ……お前のそのヘラヘラしたツラ見てっとなァ、ぶん殴りたくなるんだよ!! 真剣に考えるだけバカバカしくなる!!」
 それなのに、どうしてこんなに悲しくなるんだ。
 胸が軋むように痛むんだ。
 心臓が、早鐘のように鳴る。呼吸がうまくできない。ほてった顔が熱い。足が震える。
「違うんだ、瀬田……。俺……」
 潤んだ目をさり気なく擦る。
 真っ白な頭の中で、あの嘲笑だけが響いている。
 
 好きなんだ。お前が。
 友達としてじゃなくて、本当に本気で……好きなんだ。
  
 そう言えたなら。
 真っ直ぐにお前の目を見て、声なんか途中で裏返ったりして、真っ赤な顔して、バカみたいなこと口走って……。
 そんな風に、自分の気持ちを素直に言えたなら。 
 瀬田が顔を上げて、言い淀んでいる俺を見つめている。
「斯波……?」
 その目に吸い込まれそうになり、俺は喉の奥まで出かけた言葉をグッと飲み込んだ。
 ダメだ。無理だ。
 言える訳無い。
「……なーんて、ね。驚いた?」
 声の震えを隠すために笑ってみせる。
 瀬田の目なんか見れない。俯いて、でも口元だけには笑みを浮かべて。引きつった頬が別の生き物みたいにピクついてる。
 仮面を上手くつけられない。
「あ、あんま、瀬田がマジなるからさー。からかってみた。悪ィ悪ィ」
 勝手に言葉が出てくる。心をごまかす最低な言葉だ。
 やっぱりムリだよ。修兄ちゃん。
 俺には、できない。
「でも、本当に何も無いんだ。お前、思い込み激しすぎ」
 あぁ。今の、絶対瀬田を怒らせた。
 殴られるかもしれない。
「俺なら、大丈夫だ、か……」
 殴られるのを覚悟で顔を上げると、そこにいたのは困惑した表情の瀬田だった。
 瞬間、俺は両手で口を押さえて俯いた。
 バレた。
 泣きそうになっているのを。
 必死に隠そうとしてて、喋り過ぎたのかもしれない。
「斯波、お前……」
「や……やっぱ、俺、行くわ!! じゃーな!!」
 殆ど涙声でそう言うと、俺は瀬田を残して駆け出した。
 全力で走る。
 同時に涙が溢れ出た。
 最悪だ。
 絶対おかしいって思われた。
 
 修兄ちゃん。
 
 修兄ちゃん。
 修兄ちゃん。
 
 
 俺、告白にすら届かないよ。

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