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『A』 小話

Alba
 自分は傷の治りが早いのだと気付いてから、「どこまで傷付けても大丈夫か」という好奇心から私は自分を傷付けるようになった。夕べは思いきって左手の小指を切り落としてみた。切り落としたそばからとんでもない速さで伸びていく指は、数分もすれば爪まで元通りになった。……まるで、トカゲのしっぽのようだ。指が治るのだから、腕を切り落としても治るのだろうか?……治らなかった時が怖いし、そもそも私に腕を切る力は無いからやめておこう。
 それにしても。指を切っているのをディーに見られ、その上彼にトラウマを植え付けてしまうことになるとは。傷はすぐに治るのだからどうとでも誤魔化せるだろうと油断していた。これからは彼らに見られないように気をつけなければ。私だけならばどうなっても構わないが、彼らに苦痛を与えるようなことはあってはならない。
「……」
 小指が、右腕が、背中が……いや、全身が痛む。傷が治っても痛みはちっとも治まらない。我ながらなんとまあ不思議な身体だ。作業に支障をきたさなければいいのだが。
「アルバ!起こしてきたよ!」
 ディーがキッチンに入ってくる。それに寝ぼけ眼のニールが続く。
「おはよう、ニール。」
 もうすでに出来上がった料理を並べ、私たちは席に着いた。
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