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『A』

D
 結局、夕べはあまり眠れなかった。下に降りるとアルバが朝食を作っていた。
「おはよう、アルバ。」
「おはよう。今日はずいぶんと早起きだな。」
 ふと、アルバの手を見る。指はちゃんとある。
「あ、指……」
「まだそんなこと言ってるのか。」
 アルバはいつもみたいに笑う。
「そんなことってなんだよう!怖かったんだからね!もしアルバが本当に指を切ってたらって思ったら、本当に怖くて、それで……」
 鼻の奥がつんと痛くなる。アルバはそんな僕をぎゅっと抱きしめてくれた。
「よーしよしよし、怖かったな。」
 ほんの少しだけ柔らかい胸に、顔が当たる。ちょっと恥ずかしくて顔を上げると、彼女は優しそうに微笑んで僕の頭をそっと撫でてくれていた。
「大丈夫。全部夢の中の話だ。ほら、私の手はいつも通りだろう?」
 アルバの左手が僕の頬を撫でる。彼女の真っ白な手を見て、僕は安心した。
「さて、と。」
 アルバは再び鍋に向かう。
「手伝うよ。」
「ありがとう。じゃあ、そうだな……ニールを起こしてきてくれるか?」
 うん!と返事をして、僕はニールを呼びに行った。
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