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冒険者達の記録書

Rugi
 明日ここを出ることが決まった。行き先はこの国の首都ディオ。今日中に準備を済ませ、明日の朝に出発するのだそうだ。
 今は夜。オレは暑苦しいベッドの中で冴えた目を持て余していた。とうとう我慢出来ず、厚い布団をめくって部屋を出た。
 長い廊下。デカい扉が並ぶ道を歩いていると、一際立派な扉の前に来た。確か、ここはレグの部屋だったはず。扉の隙間から光が洩れている。オレはそれをそっと覗いた。
「『同じ星を見た洞の中。月をあなたの身と共に封じろ』、か。……そろそろあいつの墓参りにも……」
 何か手紙を読んでいるのだろうか。ドアの隙間からじっと見ていると、レグが振り向いた。
「……ルギか」
「バレた?」
「バレた?じゃねぇまだ寝てろ。首根っこ掴むぞ」
 レグはキツくオレを睨むがそんなもので怖がるオレじゃない。オレはレグの手に握られた紙切れに目を向けた。
「それ、手紙だよな?」
 ああ、とレグは頷く。手紙をチラッと見ようとしたが、すぐに隠されてしまった。
「友人から届いた……遺書だ」
「遺書?……この手紙送ったヤツ、もう死んじゃってんの?」
「ああ」
 レグは再び手紙に目を向ける。
「寝てろ、良い子はまだ寝る時間だぞ」
「レグは寝ないのか?」
「俺は3日4日寝なくても平気なんだよ。それにやる事があってな。見ろ、全部俺宛ての手紙だ。今晩中にこれを全て読まねば……」
 机の上には紙の山。これ全部手紙なのか……。
「このディータ=べーデって奴誰だ?」
「勝手に見るな。……ロンドの知り合いの甥っ子だ。」
「へぇ~、じゃあこのゾリアスってのは?」
「俺の師匠だ。って、勝手に見るなと言っただろ。」
「テオドール、ニール、レージェシアン……いっぱいいるぞ!人気者だな!」
「ルギ、これ以上見るならつまみ出すぞ。」
 レグは片手でオレを持ち上げて扉へ運ぶ。これじゃ本当に放り出されてしまう。オレは話題を変える事にした。
「ままま待てって!オレ気になってる事があるんだよ!」
「うるせぇ早く寝ろ!」
「怒鳴るなよぉ!ミクとテノールについて聞きたいんだ!」
 レグの動きが止まる。
「あの2人、どう思う?オレ、あの2人のこといまいち分からなくてさ。」
 レグは溜め息を一つ吐き、話し始める。
「ミクの母上……ランさんからあの子の事は聞いている。賢くて見た目によらずおてんばな子、だそうだ。父親の狩りに同行した事もあるらしい。」
「テノールは?あいつの事、正直分かんないんだよ。このまま味方になってくれるのか、それとも離れてっちゃうのか……」
「まだこちらを怖がっているだけだ。不審な点はいくつかあるがな。警戒を解くのは容易ではないが、彼女も少しずつ心を許してくれている。お前も優しくしてやってくれ。」
 レグはまた動き出す。扉を開けるとその外へオレを放り込んだ。
「ほら、寝ろ。明日は早い。今のうちにたっぷり寝ておけ。」
 扉が閉まる。結局こうなるのかと打った尻をさすった。
 
Miku
 次の朝。目覚めは良好。わたしは遠い遠い空を眺めていた。
「急に首都へ行くなんて聞いた時はびっくりしたけれど、ロンド様が仰るのなら仕方ないわね。レグ様がついて行ってくださるみたいだし。」
 でも、とお母さんは心配そうな目でわたしを見る。
「お母さん、心配いらないよ。フロー村は旅人が引っ越してきてできた村なんでしょ?わたしだって旅人になれるわ!」
「あなた、やんちゃする時はいつもそう言ってるわね……。」
 お母さんと話していると、テノールが部屋に入ってきた。
「テノール、おはよう!」
「……」
 テノールはそっぽを向く。準備はできた?と尋ねようと思ったが、そういえばレグに「逃げられると困るからテノールの持ち物もミクが管理してくれ」と言われてたんだった。
「テノールの分の準備もできてるよ!」
「……うん」
 微かに返事が聞こえた。これだけでも一歩前進だ。朝ご飯食べよう、とわたしは手招きした。
 
「ミク。……いつでもるどうさまが見守っていますからね。」
 出発前、お母さんはそう言った。わたしは頷き、いってきますを口にした。
「るどうさまって何?」
 家を出た後、テノールが尋ねる。他所の人からするとさっぱり分からないのだろう。
「フロー村の守り神みたいなお方よ。昔からここの人々を導いてくださっているの。」
「そんなのどこにもいなかったけど」
「目に見えなくてもちゃんといるのよ。」
 彼女は目と口をぎゅっと閉じた。
「……分からない」
「あはは……」
 「るどうさま」の事を教えるのはもうちょっと後かな。
 
Reg
「……光の樹には誰も近付けないように。ギーバの自警団にも伝え、協力を募るように。あと、そこの部屋のドアが壊れたから直しておいてくれ。」
 俺は目の前の人々を前に指示を出す。彼らはここの元使用人。ローディンが起こした事件により辞めていった使用人達だ。屋敷にロンド1人残しておくのは良くないと思い、昨日外に出た時にまた戻ってもらうよう俺が頼んだのだ。昨日頼んだばかりなのにほとんどの元使用人が来てくれた。これもロンドの厚い人望のおかげだろう。
「レグ!お客様だぞ!!」
 ルギの声だ。その方向にはミクとテノールがいた。
「……もう時間か。」
 俺は呟き、使用人達に向き直る。
「それじゃあ、行ってくる。ロンドを頼んだぞ。」
「行ってらっしゃいませ!」
 新調した服を翻し、俺はルギ達の元へと向かった。
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