不本意ですが、今日からよろしくお願いします。
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「この度は!腕輪を探していただき!ありがとう!ございます!」
ぺこーっぺこーっと頭を下げ続ける依頼主に、ユウリもグレイも若干引き気味である。
「報酬は提示したものの倍お支払いいたしますので…!!」
「え!?」
依頼主の太っ腹な発言に、グレイは慌てたようにするも、ユウリが「ではお言葉に甘えまーす!ありがとうございまーす!」と返事をしてしまった。
「お前なぁ……」
「別に、きちんと受理した仕事をきちんとこなして、相手が喜んでそうしたいって言ってくれてるんだから、後ろめたいことなんて何もないじゃない?」
「う……たしかに……」
「むしろ断った方が可哀想だよ。せっかくの厚意なのに……」
「そ、そうだな……」
グレイとユウリがコソコソと話しているのを、依頼主はニコニコとした顔で見ていた。
「どうです?私の報酬でカップル水入らず、ご旅行に行かれるなどすれば……」
「「か、カップル!?!?」」
カップルと言われた二人は顔を赤くして依頼主を見る。
「私たち、そんな関係では…っ!」
「そ、そうだぜ!」
しかし、依頼主はそれを微笑ましそうに見るだけであった。
そして依頼主は、腕輪をさらりと撫でた。
もしかすると、その腕輪は、彼の亡き恋人のものなのかもしれない。
「では、この度は本当にありがとうございました。」
「では、失礼します。」
依頼主に深く頭を下げられながら、ユウリとグレイは依頼主宅を去った。
「でも、よかったねぇグレイ。」
「あー?」
「報酬倍だよ!倍!」
「じゃあ半分お前にやるよ。」
「え!?」
「ここが、お前の言う異世界なら、お前のとこの通貨が使える保障ねーだろ?」
「うっっ、たしかに……」
グレイの「見せてみ?」という言葉に、おずおずと財布の中を見せるユウリ。
中には、やはりグレイにとって見慣れない貨幣が納まっていた。
「やっぱり。それ、使えねーぞ。」
「はぁぁぁん……さいってーーー……」
「いいから受け取っとけよ。人の厚意には甘えるもんなんだろ?」
「うっ……それはそう……」
「じゃあ、ほい。こんだけな。」
「多いのか少ないのかすら分からん。」
「お前、こっちのことも学ばねーとなぁ……」
「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします……」
グレイについて行った先にあったのは、大きな建物だ。
看板には、グレイの右胸にある紋章と同じものが描かれていた。これこそが、
「わぁぁ!素敵なギルドだね!」
「はは。だろ?」
ユウリのキラキラとした目を見ながら嬉しそうに笑うグレイ。ギルドを褒められて嬉しいのだ。
「よし、じゃあ中入るぞ。」
「あわ、緊張してきた。」
ユウリの左手をとって引きながら、グレイは
カウンターには珍しくマカロフが座っており、「む?」とすぐにグレイと、横のユウリに気がついた。
「お!グレイ!おかえりー!」
「グレイ!おかえり!」
「おかえりなさい!グレイ!」
「おーう!ただいまー!」
たくさんのギルドメンバーに挨拶をもらうグレイを見て、ユウリは(すごい、グレイって人気者なんだ……)と驚いた。
ユウリの居た世界のギルドは、派閥争いがあったり、お互いをライバル視する者が多く、こんな風に親しげな挨拶を交わしたりする者は少なかったのだ。
「グレイ、少し来なさい。」
グレイはマカロフに呼ばれ、カウンターに向かった。もちろんユウリも一緒である。
「そやつは、どうした?」
「あぁ、こいつはユウリっつって、まどろみの森で会ったんだけどよ……ちょっと訳ありみてぇで、連れてきちまった。」
グレイは苦笑してマカロフを見た。
マカロフはふむぅ…と考えるような素振りをしてから、ユウリへと向き直る。
「お主……」
「は、はい!お初にお目にかかりましゅ!ユウリ・アストラルです!よろしくお願いします!!」
緊張から、顔を真っ赤にして言葉を噛みながらも頭を下げるユウリ。
周りからは囃し立てるような声が届いた。
「なんだー?ついにグレイも春かあ〜?」
「グレイの彼女!?めっちゃ可愛いじゃねぇか!!」
「ちっげーーーーよ!!」
グレイはぐもっとツッコミを入れた。
「ふむぅ……顔を上げなさい。」
「は、はい……」
「
マカロフの緊張した面持ちに、横に笑顔で佇んでいたミラジェーンは不思議そうに問いかけた。
「ユウリ、といったな?」
「っはい!」
「お主、何者じゃ?」
「え?」
辺りがシーンと静まりかえる。
ユウリは何故か責められている気持ちになり、心臓が早鐘を打った。
「えと……」
「ここに、何をしに来た?」
「……」
青ざめた表情で黙り込むユウリに気づいたグレイが、ユウリの肩を寄せる。
「じいさん!ユウリは……」
「グレイ。わしはそやつに聞いておるんじゃ。」
「っ……」
マカロフの厳しい一言に、グレイは押し黙る。
「……わからない、です。」
「ふむぅ?」
「わからないんですぅぅぅ…!!」
突然キツく問われたユウリはボロボロと涙を流してそう言った。
グレイは、やはり見かねてわんわん泣くユウリの代わりに、経緯を説明した。
マカロフは「ふむ。」と頷いて再びユウリに問いかける。
「ユウリ、お主は記憶喪失なのか?」
「ふえ……あ、違うと思います。」
「では、ここに来る前の世界のことを、わしに教えてくれんか?」
「うえ……はい。」
ユウリは時々鼻をすすりながらも、細かく前の世界のことを説明した。
住んでいたところ、ギルドの概念、モンスターや魔法についてなど……
それを聞いたマカロフは、「うむ。」と一つ頷いた。
「わかった。その話、信じよう。」
「
マカロフの言葉に、ギルドの面々は驚きの声を上げる。
やはり皆にとっても俄には信じ難い話であった。
「すまんかったのぅ、ユウリ。わしはこのギルドの
「ま、
「そうじゃ。わしの大事なこやつらを守るために、お主を試した。」
「ぐす……はい、分かります。」
ユウリは涙目のままだったが、マカロフの言葉に頷いた。
「ユウリの魔力は少々特殊なようじゃったから、わしはその正体を確かめる必要があった。しかし、異界に居たのが本当なら、それもまた、理解出来る。」
「そうだったんだ……」
ユウリは納得したようにもう一度頷いた。
「で、じゃ。ここに来たのは、ギルドのメンバーになるため……そうじゃな?」
「は、はい!」
「ユウリを
「!!!!!」
ユウリはマカロフの言葉にパァァと顔を輝かせた後、ふにゃりと笑った。
((((か、かわいい……))))
ギルドのメンバーはユウリの笑顔を見ては、彼女を疑うことが馬鹿らしくなったようだ。
「嬉しい〜〜〜〜っ!!」
そして、今度はマカロフにガバッと抱きついたのである。
「!?!?」
「ほっほっほ!ミラ、ユウリにマークを付けてやりなさい。」
「はい、
グレイはショックを受けたかのように固まった。対してマカロフはとても嬉しそうだ。
名を呼ばれたミラジェーンは、スタンプを持ってユウリに近づいた。
グレイもハッと正気に戻ってはユウリの元に歩いていく。
「おいユウリ、お前誰にでも抱きつくのか。」
「え?」
「あらグレイ。嫉妬かしら?」
「ち、ちげーよミラちゃん!!」
全力で否定するグレイだったが、真っ赤な顔では説得力がない。
「と、とにかく、誰にでも抱きつくのはやめろ。」
「はぁい。」
ユウリは分かっているのかいないのか、グレイの言葉に右手を上げて応えた。そんなユウリにミラは改めて声をかける。
「ユウリって呼んでもいい?私、ミラジェーン。ミラって呼んで!」
「ミラさん!私のことは好きに呼んでください!」
「あら、ミラでいいのに。」
「え、えーっ、じゃあ、ミラ……」
気恥かしそうに、でも笑顔でミラと呼ぶユウリにミラジェーンはキュンと胸を高鳴らせ、「ふふ、ユウリったら可愛い〜っ」と抱きついた。
「それでね、ユウリ。」
「ん?なぁに?」
「
「自分で選べるの?」
「ええ。」
「うーん、どこがいいかなぁ……?」
ユウリはしばらくうーんうーんと悩んでいたが、ピコンと何かを思いついた顔になり、おもむろに服を軽くはだけさせた。
「左胸にする!」
「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待て!!!」
「どうしたの?グレイ?」
グレイの慌てぶりに首を傾げるユウリ。ミラはあらあらと言って笑っているだけだ。
他のギルドメンバーは顔を赤くしている。
「胸元をみだりに見せるな!!」
「…あ!!ごめんね!?お目汚しを……」
「じゃなくて!危機感を持てって言ってんの俺は!!」
グレイの言葉は、過去にユウマにも言われたことがあった。
ユウリは納得したような、でも納得がいかないような顔をして「ごめんなさい…」と呟いた。
「ミラちゃん、医務室で押してやってくんね?」
グレイの言葉にミラジェーンは頷き、ユウリを連れて医務室に入っていった。
グレイはハーーーっと息をついては、カウンターに座る。
しかし、マカロフが「惜しかったのぅ……」と呟くのを聞いてピキっと青筋を立てたのだった。