とあるありがちな異世界に、双子の姉弟が住んでいた。
その姉弟は非常に仲がよく、二人で冒険者として生計を立てながらゆったりと暮らしていた。
しかし、ある日突然それは起こる。

「ユウマ……これ、どう思う？」
「どうも何も、怪しさしかないよね。」

双子の姉、ユウリ・アストラルは、口を開けたまま呆然とした様子で、弟に意見を求めた。
対する弟、ユウマ・アストラルは、いかにも呆れましたと言わんばかりの表情で、そう応えた。

二人の目の前にあるのは、大きな扉。
両開きの、厳かな感じの扉である。

しかし、その扉はあまりにも奇妙であった。
というのも、その扉が鎮座する場所は、二人が暮らす家の中なのだ。二人の部屋が並ぶ二階、その廊下の奥に。
もちろん、昨日は無かったと記憶している。
魔法の影響で物事を忘れられないユウリが言うのだから、間違いないだろう。

「えっと、どうすればいいのかな？これ。」
「放っておけば？無視してりゃそのうち消えるでしょ。」

焦った様子のユウリだったが、あまりにもユウマが楽観的なので、彼女はなんだか悩んでいるのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。

「それもそうか。」
「ふあ……俺もっかい寝るわ。おやすみぃ。」
「んじゃあ私も……って、ん？」

二人が扉に背を向けた途端、バタンッと大きな音を立てて扉が開く。
そして、物凄い勢いで二人を吸い込み始めた。
あまりにも唐突、そしてあまりにも予想外だったそれに、二人の対応は遅れてしまった。
咄嗟にユウマは扉の取っ手に掴まるも、ユウリは為す術なく扉の向こうに吸い込まれてしまう。

「うおぁぁぁぁ！？！？」
「ユウリ！？！？」

ユウマは一度グッと歯を食いしばると、意を決したように取っ手から手を放す。
そして、姉を追うように扉の向こうに消えた。

そして扉は、何事も無かったかのようにその場から消え去ったのだった。