さいくろ
剛ミーさんには「もう何も聞こえない」で始まって、「君が目覚めるまでは」で終わる物語を書いて欲しいです。寝る前に読みたくなる話だと嬉しいです。
#書き出しと終わり
shindanmaker.com/828102
#sironekonovels
もう何も聞こえない、剛くんの寝息以外は。世界から切り離されて、島にいるのはボク達二人だけ。静かな息遣いとキミの手がじんわりとボクを温めてくれる。
この手が温かい間は……ううん。たとえ冷たくなっちゃっても、地獄だろうが天国だろうが着いていくからね。
それがボクに出来る唯一のこと。
ボクにできる、最大限の愛情表現。
剛くんと一緒なら、なんだって怖くないんだ。サイボーグ風邪だって気合いで治してやるんだから!
だからね剛くん、そんな顔しないで。
どんな夢を見てるんだろう。眉間にシワが寄って、目からはころんと涙が落ちた。ボクの名前を呼んで唸ってる。
「剛くん」
手を握り返して、名前を呼ぶ。どうしてそんなに苦しそうなんだろう、どんな夢を見ているんだろう。夢の中に助けに行けないのがもどかしい。
──本当は、ひとつだけ怖いことがあるんだ。剛くんがボクの手の届かないところで苦しむことが……抱え込んじゃうことが怖い。
ボクの体は剛くんが何度でも直してくれる。どんな奴が相手だろうが、何度だって助ける。傷一つつけさせるものか。
けど、剛くんは?
剛くんの体はボクには治せない。剛くんに何かあったら、守り抜けなかったら。そんな想像が脳裏を掠める度に、体が芯から一気に冷えていく。
そんなときは頭を振って、剛くんを抱きしめて……ずっとずっと顔を眺めるんだ。体温がこの金属の体に染み込むように、鼓動を分けてもらうように。誰も剛くんに触れられないように、独占するように。
こんな余裕のないところ、とても見せられないなぁ。心配されちゃいそうだ。
剛くんが「ワシなら大丈夫だよ」って、辛いこと全部抱えて笑う人だって知ってるんだからね。そこはお互い様だって分かってる。
ただ、キミと同じように……好きな人には余裕があるように見せたいだけ。心配されたくないから、ちょっとだけ見栄をはりたいんだ。
だから、キミの知らないところで甘えさせて。ちょっとの間だけ「強くてカッコイイサイボーグのミーくん」から、「剛くんを大好きなただの猫」でいさせて。
こうして安心できるように、ずっと見つめさせて欲しいんだ。キミが目覚めるまでは。
END
***
剛ミーさんには「きらりと何かが光った」で始まり、「大人になって気付いた」がどこかに入って、「二度は言わないよ」で終わる物語を書いて欲しいです。
#書き出しと終わり
shindanmaker.com/851008
#sironekonovels
※一部死ネタ描写と原作程度のグロ表現が入りますので、閲覧の際は充分ご注意ください。最終的には救われます
キラリ、と何かが光った。それが断面だと思い至るまでにしばらく時間がかかった。
肩から腰まで斜めに切り落とされて、地面に落ちる。片方残った腕で剣を振り回すけど、相手は霞のようにぼやけて戻る。
ぼくはただ、震えて見ているしかできなかった。怖くて足が震えて、駆け寄ることすらできなかった。
ミーくんが苦しそうに声をあげて、それでも手を止めずに戦っているのに……何も、出来なかった。
ぼくの顔を何かが掠めていった。頬がじわじわ熱を持って、温かいものが伝っていく。恐る恐る後ろを振り向いてよく見ると、それは『耳』だった。ミーくんの耳が切られて、弾き飛ばされた。
断末魔。
弾かれたように顔を向けると、半分になった姿が見えた。
笑う膝を引きずるように歩み寄る。抱き上げた体はやけに重くて、まるで鉄塊のようだった。何故かその顔は笑っているように見えて、視界がにじむ。
『これは罰だ』
ミーくんの体の向こうに足が見える。見覚えのある靴とズボン。
昔のぼくが……ぼくの姿をした悪魔が嘲笑っていた。
『何も出来なかった、弱虫なお前のせいだ。大事なミーくんすら守れない役立たずめ』
違う、と言いたかった。けれどその言葉は喉で詰まって出てこない。
違う、と断言できなかった。それがぼくの弱さをハッキリと炙り出していた。
悪魔の笑い声が響く。ミーくんの体を抱きしめて涙を流すしかできなかった。
嘲笑が反響して、暗い空間に押し込められる。
悪魔の声に混ざって、普段は温かくぼくを受け入れてくれていた声も聴こえてきた。
*
「──くん。剛くん!」
はっ、と目が開いた。頭がガンガン痛む。
暗い中で目を凝らすと、青くて小さな体のサイボーグがこっちを心配そうに見つめていた。思わずキツく抱き締める。
「ミーくん! ああ、ミーくん、ミーくん……」
息を飲んで、ゆっくり背中に手を回してくれた。抱き締めるついでに指を軽く滑らせて確認する。体に切れ目は入っていなかった。
「大丈夫。大丈夫だよ、剛くん」
「あ、ああ、あああああ」
「ゆっくりゆっくり、息を全部吐き出して。ボクはここにいるから、何も怖がらなくていいんだよ」
どこまでも優しい声。嗚咽を漏らしながら、色んなことが言いたくても言葉が出なくて。
「あんなにうなされて、怖かったね」
何も言えなくても、何でも分かっているみたいで。酷く痛む頭も、混乱した思考回路も、全部ミーくんの声に溶けていく。辛い気持ちが消えていく。
「ミーくん……生きてる、よね」
微かに息を呑むのが聞こえた。夢の内容を察したのかもしれない。
普段ならこういう辛いことは隠すけど、そんな余裕もなかった。ミーくんの手の力がほんの少しだけ強くなった。
「生きてるよ、剛くん。剛くんのお陰で、ボクはここにいるんだよ」
とん、とん、背中を軽く叩かれる。
嬉しいし心地いいけど、今だけはそんなに優しくしないで欲しかった。
悪魔と一緒に嘲笑するミーくんの声が頭にこびりついて離れない。夢と現実の境目が曖昧になりそうだ。
「ごめん、ミーくん。守れなかった、何も出来なかった……!」
「いいんだよ。ボク、何があっても絶対に剛くんのことは恨んだりしないよ。ボクが何か言ったなら、それはただのニセモノだ」
「ミーくんは強いのに、強いから、ずっと守られてばっかりで……悔しいよ。情けないよ……」
強くなりたい、ミーくんみたいに。
そう呟いたらミーくんの手が止まった。一瞬黙り込んで、それから笑みを零す。
「剛くんは強いよ、ボクよりもずっと」
「そんな訳、」
「本当さ。凄く強いよ、心がね」
本当はね、嬉しいんだ。こんな風に弱音を言ってくれて、怖かったって言ってくれて、凄く嬉しいんだ。
だってキミはいつも一人で抱え込んじゃうから。ボクよりもずっとしんどいことにも笑って耐えて、自分の気持ちを隠して。それでやっていけちゃうんだから。
そう語るミーくんは、本当に苦しそうな声色をしていた。胸元に手を当てて俯いている。
「だからね、そんな強い剛くんが誇りであると同時に……怖いんだ。ボクの守れないところで壊れちゃいそうで、凄く怖い。弱音を聞けて嬉しいと思っちゃうくらい怖い」
ごめんね、こんな酷いこと言っちゃって。
苦しむところが見られて嬉しいなんて、こんなこと言うつもりなかったのに。
そう笑うミーくんは誰よりも優しい顔をしていた。優しくて、辛そうな顔。
「これ以上剛くんが強くなったら、ボクはいらなくなっちゃうのかなって。それくらいなら弱いままでいて欲しい、なんて……酷いよね、ボク」
自嘲気味に笑う顔を見ていたら、脳の奥でチカチカと火花が散った。
大人になってからこの世界の醜さに気付いた。世の中には様々な壁があって、それらの壁を皆が気付かずに生きている。中には壁の向こうから火種を投げてくる奴もいた。そんな壁を取り除こうと、奴らを見返してやろうと頑張ってた。
けど……一番近くにあった壁を、壊してなかったじゃないか。
ミーくんがワシを見て不安に思っていたなんて知らなかった。変に意地張って強がって、自分の本音を明かさなかった。そのせいで余計に心配させた。
ワシとミーくんの間には、気付かないうちに壁を作っていた。
多分、無意識に。
相手によく思われたい、ずっと傍にいてほしいがために。
この壁のせいでお互いに苦しい思いをした。それなら──
こんな壁、壊してしまえ。
一気に身を起こしてしっかりと彼を見下ろす。ベッドに転がったまま、ミーくんが目を丸くしてこっちを見上げている。
「剛くん?」
「世の中には様々な『壁』がある!」
喉が張り裂けそうな声を上げる。ビクリを体を震わせて、元々丸くなっていた目をさらに丸くした。
「ご、剛くん? 一体、」
「金持ちと貧乏人の『壁』! 国と国の『壁』! そして!」
「ね、ネコと人間の……あ」
口を抑える。流石ミーくん、もう気付いたんだね。
「壁を壊そうって言ってたワシらがさ、知らないうちに壁を作っちゃってたんだ」
だから、こうしよう。
左手を差し伸べる。おずおずと差し出された手を握って、にっこり笑った。
「これからは、辛いことは全部言おう。ワシらの間には壁なんか必要ないんだ、そうだろう?」
表情が緩んでいく。
心から嬉しそうに、幸せそうに。
「うん、剛くん!」
どちらからともなく抱きしめあって、ベッドに転がった。顔を見ていたら気持ちが一気に軽くなって、自然と笑い出していた。
そうだ、ワシは弱虫だ。そしてミーくんも弱かったんだ。
だからお互いを失いたくない、相手がいなくなるのが怖い。
お互いにそう思っているのなら、力を合わせて苦しいことを分け合えばいい。そこで強がる必要なんかなかった。
ワシらは、二人の間にあった壁を壊した。これから先も壁なんか必要ない。ずっと手を取り合って生きて行こう。
こんな当たり前のこと、二度は言わなくてもいいように。
END
#書き出しと終わり
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#sironekonovels
もう何も聞こえない、剛くんの寝息以外は。世界から切り離されて、島にいるのはボク達二人だけ。静かな息遣いとキミの手がじんわりとボクを温めてくれる。
この手が温かい間は……ううん。たとえ冷たくなっちゃっても、地獄だろうが天国だろうが着いていくからね。
それがボクに出来る唯一のこと。
ボクにできる、最大限の愛情表現。
剛くんと一緒なら、なんだって怖くないんだ。サイボーグ風邪だって気合いで治してやるんだから!
だからね剛くん、そんな顔しないで。
どんな夢を見てるんだろう。眉間にシワが寄って、目からはころんと涙が落ちた。ボクの名前を呼んで唸ってる。
「剛くん」
手を握り返して、名前を呼ぶ。どうしてそんなに苦しそうなんだろう、どんな夢を見ているんだろう。夢の中に助けに行けないのがもどかしい。
──本当は、ひとつだけ怖いことがあるんだ。剛くんがボクの手の届かないところで苦しむことが……抱え込んじゃうことが怖い。
ボクの体は剛くんが何度でも直してくれる。どんな奴が相手だろうが、何度だって助ける。傷一つつけさせるものか。
けど、剛くんは?
剛くんの体はボクには治せない。剛くんに何かあったら、守り抜けなかったら。そんな想像が脳裏を掠める度に、体が芯から一気に冷えていく。
そんなときは頭を振って、剛くんを抱きしめて……ずっとずっと顔を眺めるんだ。体温がこの金属の体に染み込むように、鼓動を分けてもらうように。誰も剛くんに触れられないように、独占するように。
こんな余裕のないところ、とても見せられないなぁ。心配されちゃいそうだ。
剛くんが「ワシなら大丈夫だよ」って、辛いこと全部抱えて笑う人だって知ってるんだからね。そこはお互い様だって分かってる。
ただ、キミと同じように……好きな人には余裕があるように見せたいだけ。心配されたくないから、ちょっとだけ見栄をはりたいんだ。
だから、キミの知らないところで甘えさせて。ちょっとの間だけ「強くてカッコイイサイボーグのミーくん」から、「剛くんを大好きなただの猫」でいさせて。
こうして安心できるように、ずっと見つめさせて欲しいんだ。キミが目覚めるまでは。
END
***
剛ミーさんには「きらりと何かが光った」で始まり、「大人になって気付いた」がどこかに入って、「二度は言わないよ」で終わる物語を書いて欲しいです。
#書き出しと終わり
shindanmaker.com/851008
#sironekonovels
※一部死ネタ描写と原作程度のグロ表現が入りますので、閲覧の際は充分ご注意ください。最終的には救われます
キラリ、と何かが光った。それが断面だと思い至るまでにしばらく時間がかかった。
肩から腰まで斜めに切り落とされて、地面に落ちる。片方残った腕で剣を振り回すけど、相手は霞のようにぼやけて戻る。
ぼくはただ、震えて見ているしかできなかった。怖くて足が震えて、駆け寄ることすらできなかった。
ミーくんが苦しそうに声をあげて、それでも手を止めずに戦っているのに……何も、出来なかった。
ぼくの顔を何かが掠めていった。頬がじわじわ熱を持って、温かいものが伝っていく。恐る恐る後ろを振り向いてよく見ると、それは『耳』だった。ミーくんの耳が切られて、弾き飛ばされた。
断末魔。
弾かれたように顔を向けると、半分になった姿が見えた。
笑う膝を引きずるように歩み寄る。抱き上げた体はやけに重くて、まるで鉄塊のようだった。何故かその顔は笑っているように見えて、視界がにじむ。
『これは罰だ』
ミーくんの体の向こうに足が見える。見覚えのある靴とズボン。
昔のぼくが……ぼくの姿をした悪魔が嘲笑っていた。
『何も出来なかった、弱虫なお前のせいだ。大事なミーくんすら守れない役立たずめ』
違う、と言いたかった。けれどその言葉は喉で詰まって出てこない。
違う、と断言できなかった。それがぼくの弱さをハッキリと炙り出していた。
悪魔の笑い声が響く。ミーくんの体を抱きしめて涙を流すしかできなかった。
嘲笑が反響して、暗い空間に押し込められる。
悪魔の声に混ざって、普段は温かくぼくを受け入れてくれていた声も聴こえてきた。
*
「──くん。剛くん!」
はっ、と目が開いた。頭がガンガン痛む。
暗い中で目を凝らすと、青くて小さな体のサイボーグがこっちを心配そうに見つめていた。思わずキツく抱き締める。
「ミーくん! ああ、ミーくん、ミーくん……」
息を飲んで、ゆっくり背中に手を回してくれた。抱き締めるついでに指を軽く滑らせて確認する。体に切れ目は入っていなかった。
「大丈夫。大丈夫だよ、剛くん」
「あ、ああ、あああああ」
「ゆっくりゆっくり、息を全部吐き出して。ボクはここにいるから、何も怖がらなくていいんだよ」
どこまでも優しい声。嗚咽を漏らしながら、色んなことが言いたくても言葉が出なくて。
「あんなにうなされて、怖かったね」
何も言えなくても、何でも分かっているみたいで。酷く痛む頭も、混乱した思考回路も、全部ミーくんの声に溶けていく。辛い気持ちが消えていく。
「ミーくん……生きてる、よね」
微かに息を呑むのが聞こえた。夢の内容を察したのかもしれない。
普段ならこういう辛いことは隠すけど、そんな余裕もなかった。ミーくんの手の力がほんの少しだけ強くなった。
「生きてるよ、剛くん。剛くんのお陰で、ボクはここにいるんだよ」
とん、とん、背中を軽く叩かれる。
嬉しいし心地いいけど、今だけはそんなに優しくしないで欲しかった。
悪魔と一緒に嘲笑するミーくんの声が頭にこびりついて離れない。夢と現実の境目が曖昧になりそうだ。
「ごめん、ミーくん。守れなかった、何も出来なかった……!」
「いいんだよ。ボク、何があっても絶対に剛くんのことは恨んだりしないよ。ボクが何か言ったなら、それはただのニセモノだ」
「ミーくんは強いのに、強いから、ずっと守られてばっかりで……悔しいよ。情けないよ……」
強くなりたい、ミーくんみたいに。
そう呟いたらミーくんの手が止まった。一瞬黙り込んで、それから笑みを零す。
「剛くんは強いよ、ボクよりもずっと」
「そんな訳、」
「本当さ。凄く強いよ、心がね」
本当はね、嬉しいんだ。こんな風に弱音を言ってくれて、怖かったって言ってくれて、凄く嬉しいんだ。
だってキミはいつも一人で抱え込んじゃうから。ボクよりもずっとしんどいことにも笑って耐えて、自分の気持ちを隠して。それでやっていけちゃうんだから。
そう語るミーくんは、本当に苦しそうな声色をしていた。胸元に手を当てて俯いている。
「だからね、そんな強い剛くんが誇りであると同時に……怖いんだ。ボクの守れないところで壊れちゃいそうで、凄く怖い。弱音を聞けて嬉しいと思っちゃうくらい怖い」
ごめんね、こんな酷いこと言っちゃって。
苦しむところが見られて嬉しいなんて、こんなこと言うつもりなかったのに。
そう笑うミーくんは誰よりも優しい顔をしていた。優しくて、辛そうな顔。
「これ以上剛くんが強くなったら、ボクはいらなくなっちゃうのかなって。それくらいなら弱いままでいて欲しい、なんて……酷いよね、ボク」
自嘲気味に笑う顔を見ていたら、脳の奥でチカチカと火花が散った。
大人になってからこの世界の醜さに気付いた。世の中には様々な壁があって、それらの壁を皆が気付かずに生きている。中には壁の向こうから火種を投げてくる奴もいた。そんな壁を取り除こうと、奴らを見返してやろうと頑張ってた。
けど……一番近くにあった壁を、壊してなかったじゃないか。
ミーくんがワシを見て不安に思っていたなんて知らなかった。変に意地張って強がって、自分の本音を明かさなかった。そのせいで余計に心配させた。
ワシとミーくんの間には、気付かないうちに壁を作っていた。
多分、無意識に。
相手によく思われたい、ずっと傍にいてほしいがために。
この壁のせいでお互いに苦しい思いをした。それなら──
こんな壁、壊してしまえ。
一気に身を起こしてしっかりと彼を見下ろす。ベッドに転がったまま、ミーくんが目を丸くしてこっちを見上げている。
「剛くん?」
「世の中には様々な『壁』がある!」
喉が張り裂けそうな声を上げる。ビクリを体を震わせて、元々丸くなっていた目をさらに丸くした。
「ご、剛くん? 一体、」
「金持ちと貧乏人の『壁』! 国と国の『壁』! そして!」
「ね、ネコと人間の……あ」
口を抑える。流石ミーくん、もう気付いたんだね。
「壁を壊そうって言ってたワシらがさ、知らないうちに壁を作っちゃってたんだ」
だから、こうしよう。
左手を差し伸べる。おずおずと差し出された手を握って、にっこり笑った。
「これからは、辛いことは全部言おう。ワシらの間には壁なんか必要ないんだ、そうだろう?」
表情が緩んでいく。
心から嬉しそうに、幸せそうに。
「うん、剛くん!」
どちらからともなく抱きしめあって、ベッドに転がった。顔を見ていたら気持ちが一気に軽くなって、自然と笑い出していた。
そうだ、ワシは弱虫だ。そしてミーくんも弱かったんだ。
だからお互いを失いたくない、相手がいなくなるのが怖い。
お互いにそう思っているのなら、力を合わせて苦しいことを分け合えばいい。そこで強がる必要なんかなかった。
ワシらは、二人の間にあった壁を壊した。これから先も壁なんか必要ない。ずっと手を取り合って生きて行こう。
こんな当たり前のこと、二度は言わなくてもいいように。
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