序章
夢主の名前
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「あれは、夭折した少女のミイラではないのか。」
「いいえ、彼女は生きています。眠っているだけです。ずっと…眠り続けているのです。」
「ありえない。点滴や呼吸器も何も付けてないだろう。その状態で昏睡状態の人間が生命を維持できるわけがない。」
「ええ、彼女は普通の人間ではありませんから。」
「…まさか本当に、不老長寿の人間だとでも言うのか。」
「…そんなのまるで、"国"みたいじゃないか。」
「彼女は…私と共に過ごしたことによって、国家と同じような存在になってしまったのです。」
「私が飼っている犬のぽちくんも同じような個体です。国と共に過ごした生物は、国と同じような存在になってしまう。」
「そんなことが…あり得るのか?本当に……………………いや、こんな場面で、君が嘘をつくわけもないか。」
「そうだとして、なぜ国家で彼女を管理するんだ?君にとって大切な存在なら、一緒に生きれば良いじゃないか。その方が、国民に後ろめたい気持ちもないだろう。そもそも、そんな大事なことをなぜ今まで黙っていた!」
「彼女のことが知られれば、どうなるかわかるでしょう。極めて不老不死に近い個体を生み出せることが公になれば、その方法は戦争や労働へ利用される。」
「彼女のような存在は、人間世界の調和を乱しかねない。」
「っ…」
「それに、国家を挙げて彼女を封印することは、日米同盟の隠された条項ですから。」
「なに!?アメリカが関わっているのか?」
「はい。」
「あの人は誰よりも、調和を重んじる国ですから…」
「…話してくれてありがとう。日本。」
「いえ、いずれ、貴方には話さなければいけないと思っていましたから。」
「私には?」
「貴方は…私と共にあの戦後を生き抜いたから。」
「菊…」
「やはり、付いて行くなら貴方が良いと思いました。」
「…そうか。」
「私で良ければ、貴方に協力します。」
「…ああ、君でなくては困る。覚悟しておけよ?」
酒を汲み、盃を交わす。交わす音が、空間を切り裂いて、空気の色を変えていく。それは、二人の決意の色。
その色が、決して濁らないことを祈って______________
「というか、他の皆様はいつ頃いらっしゃるのでしょうか?」
「ああ、あと三十分ほどで皆集まるだろう。」
「ここは私の友人が経営する料亭でね。集合時間に関しては料亭に話を通してあるし、今日は貸し切りだ。料亭の者に聞かれていたとしても、皆口は堅い。」
「へぇ、萩原さんのご友人ですか…」
「おかしいか?」
「おかしいとは思いませんが、なんとなく、政界では一匹狼の印象だったので。」
「そうだな…なかなか気の合う連中もいなくてね。こちとら、戦後で時が止まっている老人なもので。」
「萩原さんってもしかして、意外とエゴサするタイプですか?」
「えごさ?ってなんだ?」
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