序章
夢主の名前
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見え透いた悪意に息が止まる。
力のある奴はなんでも言えるのだろう。気遣いも、空気を読むことも必要ない。
誰かの心に土足で入ることも、厭わない。
「どうして、そこで紅葉が出てくるのですか?」
「あー、そろそろだろ?命日。」
「…………ええ。よく覚えていますね。」
「まあ、それなりに色々あったわけだし、覚えてるさ。今年くらいは墓参りに行かせてくれよ。」
「…それはまた別に、検討しますね。」
「はいはい、その文言はもう聞き飽きたよ。」
「良い知らせを楽しみにしてるんだぞ。日本。」
電話は切られた。
「…」
腹の底から煮え繰り返る憤怒で身体が震えた。
頭からつま先まで、身体の動かし方を忘れてしまったかのように、自分の身体が、自分のものでないように感じた。
だが、同時に、国らしい身体だと思った。
自分の身体を自分で制御できないこと。それは国家という存在なら当たり前なのだと。
______いや、それにしたっておかしい。
国民は、"紅葉"のことなんか知らない。
紅葉と交流を持った人々は、もうこの国ではごく少数だ。それに、紅葉は歴史にもその名を深く刻んでいるわけでもない。
じゃあ、この憤怒は、一体どこから来ているというのだ_____________
「貴方が…私から紅葉を奪ったのに。」