序章
夢主の名前
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日本という存在が、大多数を反映した平均的な存在に過ぎないとしても、彼は菊の心情を聞かずにはいられなかった。
国とはいえ、気味が悪いことに、彼には人間と同じように喜怒哀楽を感じる機能がある。そして、今この国に生きる者の大多数が知らない、終戦直後の荒廃した日本を知っている。敗戦国の屈辱を知っている。
「私は…貴方のやり方には賛同できません。平和のためには必要以上に力を持たないこと、無駄に周辺国を刺激しないことが重要であると思います。」
「……………そうか。随分と、この数十年で平和ボケしたのだな。」
「やはり君は不老長寿の存在。人間を超越した君には、人間の想いなど、どうでも良いのだな…」
「そういうわけでは…ただ、もう軍事だ戦争だという時代は終わったのです…」
「終わってなどいない。結局、今でも弱肉強食の世であることに変わりはない。」
「終わらせたがっているだけだ。理想論信者の何も知らない奴が、耳触りの良いことを吹聴しているだけだ。」
「菊!!君はもっと芯のある奴だった筈だ!!いつからそんな消極的になった!!」
「っ…」
菊もなんとなく、自分が幾分か大人しくなったと感じていた。だが、それは国内が平和である証だと認識しており、そもそも国という概念自体が積極性を持つこと自体おかしいとさえ思った。
自分の中に積極性が芽生えたとしても、それは大多数の思いを反映したにすぎない。自分から生じる思いなどないのだと。国の人生とは、人が生み出す時の流れに生きる人生なのだと。
菊は、その形の人生を受け入れ、日本として生きているのだ。
「…ああ、もしかして、"あの少女"のことか?」
「っそれは…」
「またいつあいつに取られるか、気が気でないんだろう。」
「違い、ます…」
「彼女は君のなんなんだ。妙に君は彼女を気にかけている。彼女について君に聞いても、何も話してくれない。何故だ?」
「…」
あの少女___________菊が最も言及されるのを恐れていたことだ。
本田菊の、日本としての、罪。
そして彼の大切な、家族である。