mha-轟
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あの日から、あの色を探している。
C組の教室にさえ行けば会えることは誰にでも分かることだけれど、それは何か違うような気がしてなかなか踏み出せずにいた。見た瞬間は今すぐにでもと思っていた。けれど、時間が経ってから冷静に考えると、まだ髪の色しか一致していない。別人である可能性すらある。
そして、もし本人だったと仮定して、彼が気づいていないだけならばまだいい。もしあえてさけているのだとしたらどうしよう。一番こわいことは嫌われているということだった。
自分から真意に近づくのはなかなか勇気のいるもので、いくらヒーローを志しているとはいえ、躊躇ってしまうのも無理はないのではないか。
悶々とした日々を過ごす中、時々図書館にも寄り、無意識ながらに視線を彷徨わせていた。
今日も今日とて、図書館へ行った帰り道。焦凍は、人の少なくなった廊下を昇降口に向かって歩いていた。前方に何かあるのに気づいて、首を傾げる。
拾得物、にしては大きすぎないか?
得体のしれない何かに眉をひそめつつ、ゆっくり歩を進めた。近づくにつれ、物ではなく人のようだと気づき、速度を上げて駆け寄った。
…あぁ、あの色だ。
うつ伏せに倒れている人を見て、真っ先に目に入ったのは髪色だった。夢で何度も何度もみた勿忘草色。水色の柔らかな髪。…きっと、彼に違いない。クラスで噂になっていた普通科の保月だろう。
クラスメート以外の全校生徒を詳しく知らないにも関わらず、この時の焦凍は確信しか持てなかった。
「大丈夫かッ、保月?!」
彼だという謎の確信があったからか、焦る気持ちが膨れ上がって、粗っぽく抱えて、自身の膝に上半身をのせ状態を起こした。
普段の焦凍を知る人であれば、彼らしくない慌てように驚いたであろう。しかしこの廊下は、下校時間を過ぎたこともあって人気が殆ど無かった。
「おいっ!しっかりしろッ」
よく見ると顔色は悪くない。口は微かに開き、規則正しく呼吸を繰り返していた。胸に当てると、心臓は穏やかに動いている。
そこまで目視で確認してからようやく意識を失って寝ているのだということに気づいた。
冷静になれ。
自身に言い聞かせながら、ひとまず知らず知らずのうちに全身に入っていた力を抜く。大きく息を吸って、吐きながら目を閉じた。
ひと呼吸をおいた後、目を開け改めて全身をみた。
制服から判断すると、ズボンを履く女子生徒というのは聞いたことがない。やはり男子生徒で間違いないのだろう。
小柄な体躯は焦凍でも容易に抱えられるほど軽い。見た目からしても痩せていて細く、とてもヒーロー科の生徒ではないと判断できる。失礼を承知で述べると、一年A組の女子生徒の方が身体つきがしっかりしている。蛙吹ですら、彼より力がありそうだった。
顔は目にかかるほど前髪が長く、肩につくかつかないかくらいの髪の長さがあった。女性でいうところのボブカットに近いもの。額は倒れた時にぶつけたのか真ん中が赤くなっていた。
はじめて見た感じがしない。
どことなく夢に出てくる幼い少年の頃の面影があり、彼が幼馴染の少年なのではないかと感じていた。
「…起きれるか?」
焦凍は身体を揺すったり、腕に触れて起こそうと試みた。何度かそんな行為を繰り返してみるも全くといっていいほど反応がない。
覚えがあった。
個性が出るより前、幼馴染と一緒に昼寝をした時も彼がなかなか起きなくて、半べそをかきながら母を呼びにいった。自分の母親の言葉ですぐに目を覚ましていたっけ。…懐かしい。そんなこと、すっかり忘れていた。
焦凍は横抱きにした少年を保健室に運びながら、昔の思い出を思い出していた。
C組の教室にさえ行けば会えることは誰にでも分かることだけれど、それは何か違うような気がしてなかなか踏み出せずにいた。見た瞬間は今すぐにでもと思っていた。けれど、時間が経ってから冷静に考えると、まだ髪の色しか一致していない。別人である可能性すらある。
そして、もし本人だったと仮定して、彼が気づいていないだけならばまだいい。もしあえてさけているのだとしたらどうしよう。一番こわいことは嫌われているということだった。
自分から真意に近づくのはなかなか勇気のいるもので、いくらヒーローを志しているとはいえ、躊躇ってしまうのも無理はないのではないか。
悶々とした日々を過ごす中、時々図書館にも寄り、無意識ながらに視線を彷徨わせていた。
今日も今日とて、図書館へ行った帰り道。焦凍は、人の少なくなった廊下を昇降口に向かって歩いていた。前方に何かあるのに気づいて、首を傾げる。
拾得物、にしては大きすぎないか?
得体のしれない何かに眉をひそめつつ、ゆっくり歩を進めた。近づくにつれ、物ではなく人のようだと気づき、速度を上げて駆け寄った。
…あぁ、あの色だ。
うつ伏せに倒れている人を見て、真っ先に目に入ったのは髪色だった。夢で何度も何度もみた勿忘草色。水色の柔らかな髪。…きっと、彼に違いない。クラスで噂になっていた普通科の保月だろう。
クラスメート以外の全校生徒を詳しく知らないにも関わらず、この時の焦凍は確信しか持てなかった。
「大丈夫かッ、保月?!」
彼だという謎の確信があったからか、焦る気持ちが膨れ上がって、粗っぽく抱えて、自身の膝に上半身をのせ状態を起こした。
普段の焦凍を知る人であれば、彼らしくない慌てように驚いたであろう。しかしこの廊下は、下校時間を過ぎたこともあって人気が殆ど無かった。
「おいっ!しっかりしろッ」
よく見ると顔色は悪くない。口は微かに開き、規則正しく呼吸を繰り返していた。胸に当てると、心臓は穏やかに動いている。
そこまで目視で確認してからようやく意識を失って寝ているのだということに気づいた。
冷静になれ。
自身に言い聞かせながら、ひとまず知らず知らずのうちに全身に入っていた力を抜く。大きく息を吸って、吐きながら目を閉じた。
ひと呼吸をおいた後、目を開け改めて全身をみた。
制服から判断すると、ズボンを履く女子生徒というのは聞いたことがない。やはり男子生徒で間違いないのだろう。
小柄な体躯は焦凍でも容易に抱えられるほど軽い。見た目からしても痩せていて細く、とてもヒーロー科の生徒ではないと判断できる。失礼を承知で述べると、一年A組の女子生徒の方が身体つきがしっかりしている。蛙吹ですら、彼より力がありそうだった。
顔は目にかかるほど前髪が長く、肩につくかつかないかくらいの髪の長さがあった。女性でいうところのボブカットに近いもの。額は倒れた時にぶつけたのか真ん中が赤くなっていた。
はじめて見た感じがしない。
どことなく夢に出てくる幼い少年の頃の面影があり、彼が幼馴染の少年なのではないかと感じていた。
「…起きれるか?」
焦凍は身体を揺すったり、腕に触れて起こそうと試みた。何度かそんな行為を繰り返してみるも全くといっていいほど反応がない。
覚えがあった。
個性が出るより前、幼馴染と一緒に昼寝をした時も彼がなかなか起きなくて、半べそをかきながら母を呼びにいった。自分の母親の言葉ですぐに目を覚ましていたっけ。…懐かしい。そんなこと、すっかり忘れていた。
焦凍は横抱きにした少年を保健室に運びながら、昔の思い出を思い出していた。