mha-轟
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢を見た朝は涙が止まらなかった。水で何度洗っても、赤くなった目は誤魔化せなくて、姉に心配をかけてしまった。
あの日から何度か夢を見ることが増えた。
憎んでいた左側の個性を使うようになったことがきっかけだったのかと思うほど、左側を使った日には必ずといったくらい夢を見た。
見るたびに、彼に会いたくなる。
引っ越してから、手紙や連絡が来ることは一切なく、どこに引っ越したのかも、元気かどうかさえも分からない。
個性が出てから、稽古場で過ごすことがほとんどだった。もしかすると電話くらいはきていたのかもしれないけれど。それが俺まで繋がることはなかった。
そしていつの日からか彼の名前すら忘れていた今がある。夢ですら名前の部分ははっきりと思い出せず、ぼんやりとしていた。
「そーいえば、お茶子ちゃん。こないだ話してた男子見たわ。ホントに綺麗な顔立ちね」
「でしょ!梅雨ちゃんもそう思うよねっ」
「例の彼でしたら、私もお見かけしましたわ。ちょうど図書室へ入っていくところでしたの」
「文系男子かぁ!ヒーロー科にはいないタイプだから、新鮮だよね」
「それに見てると、こう…守りたくなる」
「わかる!!」
体育祭が終って少し経ってから、クラスの女子が一箇所に固まって話すことが度々増えた。大きな声で話すものだから、特に周りに関心のない焦凍の耳にも入ってきていた。
どうやら連日の話をつなげてみると、普通科にいる男子生徒の話で盛り上がっているようで、最初に見かけた麗日を中心に見た見ないで騒いでいるらしい。
職場体験を終えてから、よく話すようになった緑谷や飯田と一緒に昼食を取りながら、ますますヒートアップする女子の会話を聞き流していた。
「弟みたい」
「…ウチより女子っぽい」
「外見も相まってね」
「お菓子作りや園芸の趣味はないのかしら?」
「もし好きだったら、A組だと砂藤や口田と相性良さそうだよね」
「確かに!」
「あっでもでも、轟君との2ショットも見てみたい!」
「眼福…!」
唐突にあがった自分の名前に驚き、口にしたばかりの卵焼きを噛まずに飲んでしまった。喉の上から何度か叩くと、つっかえがなくなり、ようやく息ができた。
「大丈夫?轟君」
「あぁ、平気だ」
むせるのを心配してくれた緑谷は苦笑いしながら、「噂になるのもわかるんだけど…」と、呟いていた。緑谷も女子の話が耳に入っていたようで、ちらりと麗日を視界に入れる。
「どうして分かるんだ?」
「絵になるんだよ。二人共…その、顔がいい…から」
「保月君の事は中学時代から人気だったからな。噂になるのも頷ける」
「へぇー、保月っていうのか」
「あぁ。保月志乃君だ。クラスが離れていてあまり話したことはないが、見てる限り控えめで大人しい印象だったな」
思い出しているのか飯田が目を閉じながら頷くのをみて、もう一度へぇーと呟いた。
多分、今までどう戦っていけば父を越えられるのかということにしか興味が持てなかった。自分のことでいっぱいで、周りに関心がなかった。
だからきっと周りの話が右から左へ抜けていっていたのだと思う。
そんな雑談をしてから数日。
少しずつ6月も下旬に近づき、学生にとっては通らなくてはならない期末試験の話題が増えてきた。普段は生徒が疎らな図書室も席がほとんど埋まるほどで、焦凍もその人に紛れて、本棚の並ぶ列の間をさ迷っていた。
どこか空いている席はないだろうか。
歩いているだけで、時間が過ぎていくのが勿体なく感じられて、諦めて家に帰ろうかとも思い始めた時、見知った顔がある事に気付いた。
紫の髪に鋭い目つきをする、彼の名前は確かに…。
「心操っ、あったよ」
「サンキュ」
そう、体育祭で緑谷と対戦した心操だ。彼もここで勉強しているのか。彼の前にあるテーブル上の筆記用具を見てぼんやりと思った。本棚の隙間から彼らを見ていると、彼に数冊の本を手渡したクラスメートが暫くそのまま話し始めた。
「てか、まだ寝てんの?」
「さっきから一度も起きねぇ」
「マジか」
「保月、一度寝ると最低でも15分は夢の中だからな」
テーブルの上で手を止めていた心操の右手が動いてテーブルの下に消えた。保月といえば、確か以前教室で話題になっていた名前だった。無意識に手の行方を追う。テーブルの下、彼の膝辺りまでついた時、膝の上でやわらかい髪が見えた。そこはよく見ると二人がけの椅子で、隣にも同じように筆記用具が置いてあった。
目を奪われた。既視感がわく。
髪色が夢の中の彼と同じだ。
長い前髪で表情や輪郭までは分からない。でももし、彼が夢の中の幼馴染であったなら、今すぐにでも起こして真偽を確かめたい。話しかけてあの時の話が出来たならと先走った考えまで浮かんでしまう。
浮かれていると自覚しながらも、夢と関連させて考えてしまうのは仕方ないことだった。
あの日から何度か夢を見ることが増えた。
憎んでいた左側の個性を使うようになったことがきっかけだったのかと思うほど、左側を使った日には必ずといったくらい夢を見た。
見るたびに、彼に会いたくなる。
引っ越してから、手紙や連絡が来ることは一切なく、どこに引っ越したのかも、元気かどうかさえも分からない。
個性が出てから、稽古場で過ごすことがほとんどだった。もしかすると電話くらいはきていたのかもしれないけれど。それが俺まで繋がることはなかった。
そしていつの日からか彼の名前すら忘れていた今がある。夢ですら名前の部分ははっきりと思い出せず、ぼんやりとしていた。
「そーいえば、お茶子ちゃん。こないだ話してた男子見たわ。ホントに綺麗な顔立ちね」
「でしょ!梅雨ちゃんもそう思うよねっ」
「例の彼でしたら、私もお見かけしましたわ。ちょうど図書室へ入っていくところでしたの」
「文系男子かぁ!ヒーロー科にはいないタイプだから、新鮮だよね」
「それに見てると、こう…守りたくなる」
「わかる!!」
体育祭が終って少し経ってから、クラスの女子が一箇所に固まって話すことが度々増えた。大きな声で話すものだから、特に周りに関心のない焦凍の耳にも入ってきていた。
どうやら連日の話をつなげてみると、普通科にいる男子生徒の話で盛り上がっているようで、最初に見かけた麗日を中心に見た見ないで騒いでいるらしい。
職場体験を終えてから、よく話すようになった緑谷や飯田と一緒に昼食を取りながら、ますますヒートアップする女子の会話を聞き流していた。
「弟みたい」
「…ウチより女子っぽい」
「外見も相まってね」
「お菓子作りや園芸の趣味はないのかしら?」
「もし好きだったら、A組だと砂藤や口田と相性良さそうだよね」
「確かに!」
「あっでもでも、轟君との2ショットも見てみたい!」
「眼福…!」
唐突にあがった自分の名前に驚き、口にしたばかりの卵焼きを噛まずに飲んでしまった。喉の上から何度か叩くと、つっかえがなくなり、ようやく息ができた。
「大丈夫?轟君」
「あぁ、平気だ」
むせるのを心配してくれた緑谷は苦笑いしながら、「噂になるのもわかるんだけど…」と、呟いていた。緑谷も女子の話が耳に入っていたようで、ちらりと麗日を視界に入れる。
「どうして分かるんだ?」
「絵になるんだよ。二人共…その、顔がいい…から」
「保月君の事は中学時代から人気だったからな。噂になるのも頷ける」
「へぇー、保月っていうのか」
「あぁ。保月志乃君だ。クラスが離れていてあまり話したことはないが、見てる限り控えめで大人しい印象だったな」
思い出しているのか飯田が目を閉じながら頷くのをみて、もう一度へぇーと呟いた。
多分、今までどう戦っていけば父を越えられるのかということにしか興味が持てなかった。自分のことでいっぱいで、周りに関心がなかった。
だからきっと周りの話が右から左へ抜けていっていたのだと思う。
そんな雑談をしてから数日。
少しずつ6月も下旬に近づき、学生にとっては通らなくてはならない期末試験の話題が増えてきた。普段は生徒が疎らな図書室も席がほとんど埋まるほどで、焦凍もその人に紛れて、本棚の並ぶ列の間をさ迷っていた。
どこか空いている席はないだろうか。
歩いているだけで、時間が過ぎていくのが勿体なく感じられて、諦めて家に帰ろうかとも思い始めた時、見知った顔がある事に気付いた。
紫の髪に鋭い目つきをする、彼の名前は確かに…。
「心操っ、あったよ」
「サンキュ」
そう、体育祭で緑谷と対戦した心操だ。彼もここで勉強しているのか。彼の前にあるテーブル上の筆記用具を見てぼんやりと思った。本棚の隙間から彼らを見ていると、彼に数冊の本を手渡したクラスメートが暫くそのまま話し始めた。
「てか、まだ寝てんの?」
「さっきから一度も起きねぇ」
「マジか」
「保月、一度寝ると最低でも15分は夢の中だからな」
テーブルの上で手を止めていた心操の右手が動いてテーブルの下に消えた。保月といえば、確か以前教室で話題になっていた名前だった。無意識に手の行方を追う。テーブルの下、彼の膝辺りまでついた時、膝の上でやわらかい髪が見えた。そこはよく見ると二人がけの椅子で、隣にも同じように筆記用具が置いてあった。
目を奪われた。既視感がわく。
髪色が夢の中の彼と同じだ。
長い前髪で表情や輪郭までは分からない。でももし、彼が夢の中の幼馴染であったなら、今すぐにでも起こして真偽を確かめたい。話しかけてあの時の話が出来たならと先走った考えまで浮かんでしまう。
浮かれていると自覚しながらも、夢と関連させて考えてしまうのは仕方ないことだった。