mha-轟
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あの勉強会を経て、焦凍と志乃の仲は廊下ですれ違うと挨拶出来るほど親しくなった。それも、それぞれお互い隣に友人がいたとしても言葉を交わすくらいには。
今日は先に行っていてと緑谷に言われ、教室を離れた。
『あ、轟君だ』
反対側から来たのは志乃で、手には数冊の教科書やノートが見えた。
「……移動教室か?」
『うん。轟君も?』
焦凍の持っている荷物を見て判断したらしい。あぁ、と小さく頷く。ヒーロー科の移動教室は、演習場の場所が離れているため、少し早めに出ないといけない。話す時間がないとわかったのか、志乃は残念そうに笑った。
『……そっか、じゃあまた今度』
いつも話し終えると、志乃からまた今度と離れていく。
一瞬眉をハの字にしてこちらを見た志乃の表情はそのいつもは違っていた。咄嗟に背を向けかけた彼の背中を呼び止める。
「保月っ!」
『、ん?』
いつもとは違うやり取りに少し驚いた志乃の表情に、新鮮さを覚えながら話しかける。
「昼、食堂来れるか?」
『えっ』
「嫌じゃなかったら、一緒に食うか?」
目を丸くする志乃を見るのは初めて。あぁ、今日は新しい表情が多いななんて、無意識に口元が緩んだ。
『で、でも轟君。いつも他の人と食べてるよね?僕いたらお邪魔じゃない?』
「平気だ」
『そんなきっぱり…』
どうしようかな。
そうぼやきながら考えている志乃に、焦凍は後押しの一声をかけた。
「緑谷も飯田もいい奴だ。一人増えても気にしねぇ」
あの二人なら言い切ることができる。
『……じゃあ授業終わったらお邪魔するね』
焦凍の押しに負け、眉をハの字にしながらも頷いてくれた志乃に内心感謝する。
「おう、待ってる」
志乃の背中を少しだけ見送ってから、焦凍も背を向け歩き出した。
他人を思いやることのできるやつだから、いつもと違う表情があると気にかけたくなる。昔から、自分のことは二の次だからこそ、些細なことでも見逃したくねぇ。
授業はあっという間に終り、気づけば席に緑谷や飯田が昼食を誘いに来ていた。食堂への道中、二人に事情を話せば、快く受け入れてくれた。
「轟君、噂の保月君といつの間にか仲良くなってたんだね」
「……たまに話す」
「そっかぁ、楽しみだ。二人一緒に見れるの!ハッ、でもそんな二人と一緒にご飯って周りから相当注目を浴びるのでは!?」
緑谷はいつもの癖のようにぶつぶつと小声で話すのをしばらく眺めていると、反対から飯田に呼ばれた。
「轟君、彼を誘ったのには何か理由があるんじゃないか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「君が誰かを誘うなんて、よっほどの理由がない限りしないだろう。保月君のことはあまり詳しくないが、轟君、君のことだったら少しわかるようになってきたつもりだ」
飯田があまりにも真剣な表情で話しているのが耳に入ったのか、いつの間にか緑谷もつぶやくのをやめて聞いていた。
「…そこまで立派な理由じゃねぇんだ。ただ、引っかかった。後で話すけど、ガキの頃よく遊んでたから」
食堂の入口が近づき、焦凍は口を閉じた。
ざる蕎麦定食を持って、先に席を探しに行った緑色を探す。志乃が来ることを伝えているから、少し広くスペースをとっているだろうと予想しながら、辺りを見る。
『轟君、こっちだよ!』
自分を呼ぶ声が聞こえ、声を頼りに視線を動かすと、特徴的な緑色と水色が見えた。
「来てたのか」
『うん、ついさっき。席探ししてた緑谷君に見つかりました!』
「見つけました!」
向い合って座る緑谷の隣にトレーを置くと、「君はこっちでしょ」と彼の手で志乃の隣にトレーがスライドされていく。
「緑谷…」
「隣は親しい人のが安心するよ。あ、改めまして、保月君。1-A緑谷出久です」
『えっと…お気遣いありがとうね。緑谷君。僕は1-C保月志乃。轟君から聞いてたかもだけど』
「うん!よろしくね保月君」
二人が自己紹介を交わしている間に、飯田がトレーを持って現れた。緑谷の隣に座りながら、志乃と言葉を交わす。
「久し振りだな、保月君。俺の事は覚えているかな?」
『うん、中学校一緒だったね。久し振り、飯田君』
「あぁ!」
覚えられていたことが嬉しいのか、飯田の表情がぱぁと明るくなる。
「実は君が雄英に入れるとわかった時、話しかけたかったんだ」
『そうだったの?ごめんね、気付かなくて…』
「いや。中学ではあまり接点がなかったからこそ、俺もどうなのかと躊躇っていた」
『実は僕も同じ聡明中学出身なの飯田君だけだから気になってた』
飯田の言葉に、志乃も納得したような表情で、少しだけ笑った。その笑顔に違和感を覚える。そこまで幼い記憶がはっきり残っているわけではない。説明がはっきりできるわけでもない。けれど、そんなふうに笑わないでくれと言わずにはいられない気持ちになるそんな笑い方だった。
「二人、いるんだな」
気づけば、思い出話をする二人の会話に割って入っていた。
「緑谷君と爆豪君も二人だろう?」
「あ、うん。かっちゃんは嫌がってたけどね…」
「容易に想像がつくな」
『仲良しなんだね?爆豪くんと』
「仲良し?!いやいや、幼馴染なだけだよ。仲良しなんてかっちゃんに言ったら何されることやら…。絶対爆破させられるに決まってる…」
『ご、ごめんね。愛称で呼んでたからてっきり』
「いや、保月君は悪くないから!」
一旦話が一区切りしたところで、緑谷が「そろそろご飯食べようか」と、話に夢中で誰も一口も食べていなかった昼食に視線を向けた。
先ほどの会話で横槍を入れたことに焦凍以外は何もなかったように会話が進んでいた。焦凍はというと、内心自分があんな些細なことで会話を中断させたことが自分らしくないと複雑な心境だった。
志乃のことを知るためだったら些細な表情を逃したくないと思った自分がいる。しかし、せっかく同級生と話すきっかけができ、話しているのを邪魔するのは違う。それはわかっていた。ただ、飯田と話す志乃に嫉妬してしまったのもまた事実。
志乃には、昔みたいな曇りのない、つられてこちらも笑ってしまうような優しい暖かな表情で笑っていて欲しい。
それが俺の願望だった。
今日は先に行っていてと緑谷に言われ、教室を離れた。
『あ、轟君だ』
反対側から来たのは志乃で、手には数冊の教科書やノートが見えた。
「……移動教室か?」
『うん。轟君も?』
焦凍の持っている荷物を見て判断したらしい。あぁ、と小さく頷く。ヒーロー科の移動教室は、演習場の場所が離れているため、少し早めに出ないといけない。話す時間がないとわかったのか、志乃は残念そうに笑った。
『……そっか、じゃあまた今度』
いつも話し終えると、志乃からまた今度と離れていく。
一瞬眉をハの字にしてこちらを見た志乃の表情はそのいつもは違っていた。咄嗟に背を向けかけた彼の背中を呼び止める。
「保月っ!」
『、ん?』
いつもとは違うやり取りに少し驚いた志乃の表情に、新鮮さを覚えながら話しかける。
「昼、食堂来れるか?」
『えっ』
「嫌じゃなかったら、一緒に食うか?」
目を丸くする志乃を見るのは初めて。あぁ、今日は新しい表情が多いななんて、無意識に口元が緩んだ。
『で、でも轟君。いつも他の人と食べてるよね?僕いたらお邪魔じゃない?』
「平気だ」
『そんなきっぱり…』
どうしようかな。
そうぼやきながら考えている志乃に、焦凍は後押しの一声をかけた。
「緑谷も飯田もいい奴だ。一人増えても気にしねぇ」
あの二人なら言い切ることができる。
『……じゃあ授業終わったらお邪魔するね』
焦凍の押しに負け、眉をハの字にしながらも頷いてくれた志乃に内心感謝する。
「おう、待ってる」
志乃の背中を少しだけ見送ってから、焦凍も背を向け歩き出した。
他人を思いやることのできるやつだから、いつもと違う表情があると気にかけたくなる。昔から、自分のことは二の次だからこそ、些細なことでも見逃したくねぇ。
授業はあっという間に終り、気づけば席に緑谷や飯田が昼食を誘いに来ていた。食堂への道中、二人に事情を話せば、快く受け入れてくれた。
「轟君、噂の保月君といつの間にか仲良くなってたんだね」
「……たまに話す」
「そっかぁ、楽しみだ。二人一緒に見れるの!ハッ、でもそんな二人と一緒にご飯って周りから相当注目を浴びるのでは!?」
緑谷はいつもの癖のようにぶつぶつと小声で話すのをしばらく眺めていると、反対から飯田に呼ばれた。
「轟君、彼を誘ったのには何か理由があるんじゃないか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「君が誰かを誘うなんて、よっほどの理由がない限りしないだろう。保月君のことはあまり詳しくないが、轟君、君のことだったら少しわかるようになってきたつもりだ」
飯田があまりにも真剣な表情で話しているのが耳に入ったのか、いつの間にか緑谷もつぶやくのをやめて聞いていた。
「…そこまで立派な理由じゃねぇんだ。ただ、引っかかった。後で話すけど、ガキの頃よく遊んでたから」
食堂の入口が近づき、焦凍は口を閉じた。
ざる蕎麦定食を持って、先に席を探しに行った緑色を探す。志乃が来ることを伝えているから、少し広くスペースをとっているだろうと予想しながら、辺りを見る。
『轟君、こっちだよ!』
自分を呼ぶ声が聞こえ、声を頼りに視線を動かすと、特徴的な緑色と水色が見えた。
「来てたのか」
『うん、ついさっき。席探ししてた緑谷君に見つかりました!』
「見つけました!」
向い合って座る緑谷の隣にトレーを置くと、「君はこっちでしょ」と彼の手で志乃の隣にトレーがスライドされていく。
「緑谷…」
「隣は親しい人のが安心するよ。あ、改めまして、保月君。1-A緑谷出久です」
『えっと…お気遣いありがとうね。緑谷君。僕は1-C保月志乃。轟君から聞いてたかもだけど』
「うん!よろしくね保月君」
二人が自己紹介を交わしている間に、飯田がトレーを持って現れた。緑谷の隣に座りながら、志乃と言葉を交わす。
「久し振りだな、保月君。俺の事は覚えているかな?」
『うん、中学校一緒だったね。久し振り、飯田君』
「あぁ!」
覚えられていたことが嬉しいのか、飯田の表情がぱぁと明るくなる。
「実は君が雄英に入れるとわかった時、話しかけたかったんだ」
『そうだったの?ごめんね、気付かなくて…』
「いや。中学ではあまり接点がなかったからこそ、俺もどうなのかと躊躇っていた」
『実は僕も同じ聡明中学出身なの飯田君だけだから気になってた』
飯田の言葉に、志乃も納得したような表情で、少しだけ笑った。その笑顔に違和感を覚える。そこまで幼い記憶がはっきり残っているわけではない。説明がはっきりできるわけでもない。けれど、そんなふうに笑わないでくれと言わずにはいられない気持ちになるそんな笑い方だった。
「二人、いるんだな」
気づけば、思い出話をする二人の会話に割って入っていた。
「緑谷君と爆豪君も二人だろう?」
「あ、うん。かっちゃんは嫌がってたけどね…」
「容易に想像がつくな」
『仲良しなんだね?爆豪くんと』
「仲良し?!いやいや、幼馴染なだけだよ。仲良しなんてかっちゃんに言ったら何されることやら…。絶対爆破させられるに決まってる…」
『ご、ごめんね。愛称で呼んでたからてっきり』
「いや、保月君は悪くないから!」
一旦話が一区切りしたところで、緑谷が「そろそろご飯食べようか」と、話に夢中で誰も一口も食べていなかった昼食に視線を向けた。
先ほどの会話で横槍を入れたことに焦凍以外は何もなかったように会話が進んでいた。焦凍はというと、内心自分があんな些細なことで会話を中断させたことが自分らしくないと複雑な心境だった。
志乃のことを知るためだったら些細な表情を逃したくないと思った自分がいる。しかし、せっかく同級生と話すきっかけができ、話しているのを邪魔するのは違う。それはわかっていた。ただ、飯田と話す志乃に嫉妬してしまったのもまた事実。
志乃には、昔みたいな曇りのない、つられてこちらも笑ってしまうような優しい暖かな表情で笑っていて欲しい。
それが俺の願望だった。