mha-轟
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あれは、彼に似た色を持つ花が咲き始めた3月の終わり頃だったと思う。隣に住んでいた幼馴染が引っ越すと、親から聞いて彼の家に駆けつけた。
個性が出る前のことで、相手の顔も記憶の中ではぼんやりしているけれど、彼とは毎日のようにどちらかの家に行っては遊んでいた。
『しょーとくんの髪、さらさらできれい』
『どんな個性が出るんだろ、楽しみ!』
『離れてもまた会いたいな』
自分はなんて答えたのか覚えていなかったけれど、相手が自分にかけてくれた言葉は忘れていない。夢で時々思い出してしまうくらい、彼の言葉に救われていた。
父への憎悪が芽生えてから、夢を見ることは殆どなくなってしまった。
だから、今までずっと忘れていた。
自分にはずっと大切にしていた“幼馴染”がいた。
雄英体育祭で緑谷から「君の力じゃないか」と認められ、久方ぶりに左手の力を使った今日。
久しぶりに彼の夢を見た。
『一緒にヒーロー、やれたらいいね!』
黒塗りの高級車の窓を開け、手をこちらに振りながら彼はまたねと笑った。表情を見れば、強がりだなんてすぐに見抜けた。今にも零れそうな涙に、こちらまでつられて泣いてしまった。またねとお互いに繰り返して埒が明かなくなって、最終的に彼は彼の母に手を引くように言われて、夕日の沈む方角へ車は去っていった。
車が離れていくのをずっと見ていた俺に、隣に立っていた姉が「ほら、ふきなさい」とハンカチを渡してくれた。
彼の髪色を思わせる勿忘草の花がふと浮かんで、私を忘れないでと言っている。そんな気さえした。
個性が出る前のことで、相手の顔も記憶の中ではぼんやりしているけれど、彼とは毎日のようにどちらかの家に行っては遊んでいた。
『しょーとくんの髪、さらさらできれい』
『どんな個性が出るんだろ、楽しみ!』
『離れてもまた会いたいな』
自分はなんて答えたのか覚えていなかったけれど、相手が自分にかけてくれた言葉は忘れていない。夢で時々思い出してしまうくらい、彼の言葉に救われていた。
父への憎悪が芽生えてから、夢を見ることは殆どなくなってしまった。
だから、今までずっと忘れていた。
自分にはずっと大切にしていた“幼馴染”がいた。
雄英体育祭で緑谷から「君の力じゃないか」と認められ、久方ぶりに左手の力を使った今日。
久しぶりに彼の夢を見た。
『一緒にヒーロー、やれたらいいね!』
黒塗りの高級車の窓を開け、手をこちらに振りながら彼はまたねと笑った。表情を見れば、強がりだなんてすぐに見抜けた。今にも零れそうな涙に、こちらまでつられて泣いてしまった。またねとお互いに繰り返して埒が明かなくなって、最終的に彼は彼の母に手を引くように言われて、夕日の沈む方角へ車は去っていった。
車が離れていくのをずっと見ていた俺に、隣に立っていた姉が「ほら、ふきなさい」とハンカチを渡してくれた。
彼の髪色を思わせる勿忘草の花がふと浮かんで、私を忘れないでと言っている。そんな気さえした。
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