enst-紅茶部
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君に会いたい一心で僕はここへ来た。
校門の前、その先に見える校舎に目を向けて、深呼吸をした。何年ぶりだろうなんて、思い出にひたることはしない。ただ、彼の姿を一目見れるだけでいい。それ以上のことは望まない。成長した彼は、どうなってるだろう。
まだ一歩すら学院内に入っていないといないというのに、僕の中で緊張と不安とがごちゃまぜになってぐちゃぐちゃに暴れていた。
「それでは転校生を紹介します。入って」
担任の声に促されて、教室前方のドアを開けた。一年の夏休み明けということで、雰囲気はどこかそわそわした新学期の香りがする。夏休みに日焼けしたと思われる人が多くて、そんな当たり前のことが転校してきた自分には新鮮で、少し緊張がほぐれる。静かに入って、一礼する。
『はじめまして、花守瑠衣といいます』
長い前髪があって良かったと今日ほど感じたことはない。黒板の前ということもあって、自然と視線が集中する。こんなこと自体が滅多にないため緊張感が増した。
担任に促されて、案内された席をちらりと見る。優しそうな雰囲気が彼に似てる。なんて思いながら表情を見て、思わず固まった。はじめ君だ。これは夢なのだろうか。会いたいと思っていたはじめ君にこんなに早く会えるなんて思わなかった。しかも隣の席。同じクラスというだけでも奇跡なのに。
「よろしくお願いします」
『…こちらこそ』
席に座るまでにもその緊張が伝わってしまわぬようにするのが必死で彼からの挨拶がそっけなくなってしまった。
随分とあっさりしたファーストコンタクトに、あぁやっぱり僕のことは覚えていないのだと、寂しい気持ちと泣きたい気持ちがわく。でも仕方ない、わかっていたことだと割り切ることはすぐに出来た。
休み時間になると、やはり転校生の宿命というのか、席の近くに人が集まってきた。
黒髪に赤メッシュの元気な男子生徒がドドンッと胸を叩きながら席の前に立った。その勢いに少し気押される。
「俺は南雲鉄虎!趣味は筋トレ!好物はカルビ!将来の夢は男の中の男ッス!これからよろしく!」
彼の声量に、身体を引きつつ、『…よ、ろしく』と答える。みんながこんな積極的な性格の持ち主だったら、数日で登校拒否をしてしまいそうだ。もう当初の目的は果たせたのだしいいかもしれないと、転校初日にメンタルがノックダウンして、思考が現実逃避気味に陥った。
「そんで、瑠衣くんの趣味は?好物は?将来の夢は?」
『え、…ぁ、…あの…』
「声が小さいッスよー!もっと元気よくはっきりと!」
『……う、ぁ……』
何なの、このぐいぐい君。もう僕のライフはゼロなのだけど。どんどん頭が下がっていく。顔が上げられない。気にせず彼は話をしてるけど。早く休み時間が終わって欲しいと思わずにはいられない。
そう思っていると、隣の席に一つ足音が近づいてとまった。
「俺だったらトラウマになって、明日から登校拒否しそう…」
「あ、はは…、ぼくもなりそうです」
「そんなこと言うなよ!俺はただ友達になりたいだけだせー」
「無理強いは良くないですよ」
「…そうそう、困ってる」
「じゃあどう話しかければ良かったんだ?」
その誰かの呟きに、はじめ君が答えた。そのはじめ君に僕の前に立つメッシュくんが反論している。喧嘩するほど、何とやらである。
『……仲、良いんですね』
気づけば、くすりと小さく口元が笑っていた。僕の言葉に、はじめ君がふんわりと微笑む。
「すぐ仲良くなれますよ、ぼくは紫之創。これから宜しくお願いしますね、花守くん」
そう言って、手を差し伸べてくれる彼に、僕は戸惑って、彼の手だけを見ていた。
『……ぁ…、えっと……』
「よろしくお願いします」
握手なんてしていいのだろうかと戸惑っていると念を押すように言ってくれるので、その好意を受け取るように、おずおずとその手を取った。
「早速仲良くなったんだな、創」
午前中授業が終わり、昼休みに入る。お弁当を取り出すと、はじめ君から一緒に食べませんかとお誘いを受けた。迷って、言葉にならない母音を吐き出しているうちに、はじめ君の席に人が増えている。
「俺も仲良くなりたい。この学校は変な奴ばっかりだから大変だけどよろしく」
『あ、花守瑠衣…です。こちらこそ、よろしく…お願いします』
「あっ俺は、真白友也。創と同じRa*bitsってグループに所属してる」
「クラスメートなんだから、そんなに固くなるなよ、瑠衣。あ、高峯もまだ自己紹介してなかったよな、ほらっ」
手を離した友也くんは、休み時間に話した人の背中を押して机の前までやってきた。
「うぇー、あっ…!真白くん、強引。守沢先輩みたい…。うぅ…仕方ないなぁ……。俺は高峯翠、よろしく」
ため息をつきながらの自己紹介に、友だちになりたくなかったのかもと不安になった。そんな不安を吹き飛ばすかのような勢いで、もう一人登場した。えっと確か南雲君だったはず。
「翠くんは俺と同じ流星隊の隊員なんスよ!俺は流星ブラック!翠くんは流星グリーンッス!」
「黙ってたの、わざわざ言わなくても」
「ハァ…、鬱だぁ……」と呟く高峯君に、はじめ君と真白君が顔を見合わせ苦笑いしていた。そんな二人を見ながら、本当に仲がいいんだなと思うのと同時に、口下手で緊張しいで自分から話すのが苦手な僕がこの場所でやっていけるのかと思った。
「と、とにかく花守くん!そんなに戸惑うことないです。今はまだ不安かもしれませんけど、このクラスは優しい人ばかりだから、少しずつ慣れていってくださいね」
そんな僕の様子に気づいたのか、はじめ君が手を前にしてあわあわさせながら優しい言葉をかけてくれる。はじめ君のいる方へ視線は向けられたけれど、真正面から彼の目線に向き合うのがこわくて小さく笑った。
臆病という言葉が自分にはひどくお似合いだった。
校門の前、その先に見える校舎に目を向けて、深呼吸をした。何年ぶりだろうなんて、思い出にひたることはしない。ただ、彼の姿を一目見れるだけでいい。それ以上のことは望まない。成長した彼は、どうなってるだろう。
まだ一歩すら学院内に入っていないといないというのに、僕の中で緊張と不安とがごちゃまぜになってぐちゃぐちゃに暴れていた。
「それでは転校生を紹介します。入って」
担任の声に促されて、教室前方のドアを開けた。一年の夏休み明けということで、雰囲気はどこかそわそわした新学期の香りがする。夏休みに日焼けしたと思われる人が多くて、そんな当たり前のことが転校してきた自分には新鮮で、少し緊張がほぐれる。静かに入って、一礼する。
『はじめまして、花守瑠衣といいます』
長い前髪があって良かったと今日ほど感じたことはない。黒板の前ということもあって、自然と視線が集中する。こんなこと自体が滅多にないため緊張感が増した。
担任に促されて、案内された席をちらりと見る。優しそうな雰囲気が彼に似てる。なんて思いながら表情を見て、思わず固まった。はじめ君だ。これは夢なのだろうか。会いたいと思っていたはじめ君にこんなに早く会えるなんて思わなかった。しかも隣の席。同じクラスというだけでも奇跡なのに。
「よろしくお願いします」
『…こちらこそ』
席に座るまでにもその緊張が伝わってしまわぬようにするのが必死で彼からの挨拶がそっけなくなってしまった。
随分とあっさりしたファーストコンタクトに、あぁやっぱり僕のことは覚えていないのだと、寂しい気持ちと泣きたい気持ちがわく。でも仕方ない、わかっていたことだと割り切ることはすぐに出来た。
休み時間になると、やはり転校生の宿命というのか、席の近くに人が集まってきた。
黒髪に赤メッシュの元気な男子生徒がドドンッと胸を叩きながら席の前に立った。その勢いに少し気押される。
「俺は南雲鉄虎!趣味は筋トレ!好物はカルビ!将来の夢は男の中の男ッス!これからよろしく!」
彼の声量に、身体を引きつつ、『…よ、ろしく』と答える。みんながこんな積極的な性格の持ち主だったら、数日で登校拒否をしてしまいそうだ。もう当初の目的は果たせたのだしいいかもしれないと、転校初日にメンタルがノックダウンして、思考が現実逃避気味に陥った。
「そんで、瑠衣くんの趣味は?好物は?将来の夢は?」
『え、…ぁ、…あの…』
「声が小さいッスよー!もっと元気よくはっきりと!」
『……う、ぁ……』
何なの、このぐいぐい君。もう僕のライフはゼロなのだけど。どんどん頭が下がっていく。顔が上げられない。気にせず彼は話をしてるけど。早く休み時間が終わって欲しいと思わずにはいられない。
そう思っていると、隣の席に一つ足音が近づいてとまった。
「俺だったらトラウマになって、明日から登校拒否しそう…」
「あ、はは…、ぼくもなりそうです」
「そんなこと言うなよ!俺はただ友達になりたいだけだせー」
「無理強いは良くないですよ」
「…そうそう、困ってる」
「じゃあどう話しかければ良かったんだ?」
その誰かの呟きに、はじめ君が答えた。そのはじめ君に僕の前に立つメッシュくんが反論している。喧嘩するほど、何とやらである。
『……仲、良いんですね』
気づけば、くすりと小さく口元が笑っていた。僕の言葉に、はじめ君がふんわりと微笑む。
「すぐ仲良くなれますよ、ぼくは紫之創。これから宜しくお願いしますね、花守くん」
そう言って、手を差し伸べてくれる彼に、僕は戸惑って、彼の手だけを見ていた。
『……ぁ…、えっと……』
「よろしくお願いします」
握手なんてしていいのだろうかと戸惑っていると念を押すように言ってくれるので、その好意を受け取るように、おずおずとその手を取った。
「早速仲良くなったんだな、創」
午前中授業が終わり、昼休みに入る。お弁当を取り出すと、はじめ君から一緒に食べませんかとお誘いを受けた。迷って、言葉にならない母音を吐き出しているうちに、はじめ君の席に人が増えている。
「俺も仲良くなりたい。この学校は変な奴ばっかりだから大変だけどよろしく」
『あ、花守瑠衣…です。こちらこそ、よろしく…お願いします』
「あっ俺は、真白友也。創と同じRa*bitsってグループに所属してる」
「クラスメートなんだから、そんなに固くなるなよ、瑠衣。あ、高峯もまだ自己紹介してなかったよな、ほらっ」
手を離した友也くんは、休み時間に話した人の背中を押して机の前までやってきた。
「うぇー、あっ…!真白くん、強引。守沢先輩みたい…。うぅ…仕方ないなぁ……。俺は高峯翠、よろしく」
ため息をつきながらの自己紹介に、友だちになりたくなかったのかもと不安になった。そんな不安を吹き飛ばすかのような勢いで、もう一人登場した。えっと確か南雲君だったはず。
「翠くんは俺と同じ流星隊の隊員なんスよ!俺は流星ブラック!翠くんは流星グリーンッス!」
「黙ってたの、わざわざ言わなくても」
「ハァ…、鬱だぁ……」と呟く高峯君に、はじめ君と真白君が顔を見合わせ苦笑いしていた。そんな二人を見ながら、本当に仲がいいんだなと思うのと同時に、口下手で緊張しいで自分から話すのが苦手な僕がこの場所でやっていけるのかと思った。
「と、とにかく花守くん!そんなに戸惑うことないです。今はまだ不安かもしれませんけど、このクラスは優しい人ばかりだから、少しずつ慣れていってくださいね」
そんな僕の様子に気づいたのか、はじめ君が手を前にしてあわあわさせながら優しい言葉をかけてくれる。はじめ君のいる方へ視線は向けられたけれど、真正面から彼の目線に向き合うのがこわくて小さく笑った。
臆病という言葉が自分にはひどくお似合いだった。
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