enst-紅茶部
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ガーデンテラスに戻ると、「あ、やっと来たねぇ〜」と欠伸をする朔間先輩と、「心配しましたよ〜」と手を振る紫之くんが迎えてくれる。紫之くんの隣で、天祥院先輩がふふっと優雅に笑い、紅茶を飲まれていた。
『り、凛月先輩っ……と、…お呼びしても良いでしょうか?』
席に座って、早速自分の中の結論を朔間先輩改め凛月先輩に尋ねてみる。これで断られたら、と思うと、苦しい。けれどまた考えなおせばいい。衣更先輩と天祥院先輩のアドバイスを思い出しながら、そっと凛月先輩を見る。
「うん、ありがと〜。はなちゃん」
それでいいよぉ〜と、ゆるく答えてくれた先輩に、ホッとして息を吐き出すと、隣りに座っていた衣更先輩がふはっと笑った。
「緊張しすぎだぜ、花守」
『…だ、…って……衣更先輩、そんなに笑わないでくださいよ』
「あんまりにガチガチな顔してたからさ。そんなに緊張することかよ」
『ぼ、僕にとっては…一大事…なんです』
「あ〜、泣くなって!」
ほろりと零れそうになった涙を、指先で衣更先輩が拭ってくれた。そのあと、泣き止めと言いながら優しくなでてくれる。兄弟でもいるのかなと思わず考えてしまうほど、その手つきは優しく温かい。
『……先輩って、ご兄弟いらっしゃいますか?』
「ん?あぁ、妹がいる」
なるほどとピースがハマったように頷いてしまった。
「さぁ、泣いてばかりでは折角のお茶会が台無しになってしまうよ。紅茶が冷めてしまったね。淹れなおして仕切り直ししよう」
「あ、会長!俺やりますよっ」
「衣更君は今回お客様なんだから、座っていて?僕が淹れたいんだ」
「…わかりました」
天祥院先輩が立ち上がるのと同時に立ち上がった衣更先輩がそろりと座って、それに天祥院先輩がふふっと笑った。
「僕のとっておきを用意するよ」
先輩の淹れてくれた紅茶は、運ばれてくる最中から柔らかい香りが漂ってきて、一口飲むとその香りが触れた先から広がって口いっぱいになった。なんと言うかとても落ち着く。自然と目を閉じて、香りだけを楽しみたくなる。
凛月先輩の美味しいお菓子に、天祥院先輩とっておきの紅茶。
こんな贅沢でいいのかなと、不安になったけれど、そんな時に目があった彼がふわっと笑うから、今だけは少しだけ肩の力を抜いて紅茶を楽しむことにした。
翌日。今日は衣更先輩に誘われたバスケ部の活動日だった。紫之くんも校内アルバイトが入っているということで、体育館で待ち合わせしようと話を移動教室の途中でたまたま会った衣更先輩からしてくれた。
「待てよ…1Aだったら、高峯がいるんじゃないか?」
『…?』
思案顔で顎に手をあてる先輩の姿は、探偵のように似合いすぎていて見とれてしまう。伏せがちだった先輩と目があって、びくりと肩を震わせた。
「花守」
『は、はい!』
「高峯と来るか?体育館まで」
『高峯くん、とですか?』
「あぁ、あいつもバスケ部なんだよ」
「同じクラスだろ?」と尋ねてきた先輩の言葉に、クラスでも高身長の彼を思い浮かべた。バスケ部だったんだと内心驚きだ。…確かに初日の自己紹介を交わしてからは、日常会話程度なら話している。けれど、それはまわりに紫之くんや真白くんがいるから成立しているのであって、ふたりきりとなると話は別である。たとえ教室から体育館の短い距離であったとしても。
そもそもふたりきりになったことない…!
お互い自分から話題を振るタイプではないし、きっと気まずい雰囲気になってしまうだけだ。
『えっと……』
どうだ?とばかりにじっと衣更先輩が見つめてくる中で、何となく返答に困って視線を泳がせてしまう。きっと衣更先輩は僕の性格を思ってくれての提案をしてくれている。だから、本来なら気まずい雰囲気になったとしても高峯くんと一緒に来るべきなのだ。
『…っ…、…いっしょに』
「あぁっ!サリ〜、ここにいたんだ!!」
「うわっ、スバル!?」
一緒に行きますと答えようとして、途中まで言ったところで、オレンジ髪の元気な2年生が衣更先輩の後ろから走ってきた。抱きつくように背中にくっつくまで、あっという間。衣更先輩も振り返る前に前のめりになったけれど、二・三歩動いただけだった。すごい運動神経。僕だったらきっと潰されてた。一瞬の出来事だったから、反応できずにいると、ふと目があった衣更先輩が僕の顔を見てぷはっと笑った。
「花守、驚かしてゴメンな。ったく、スバルも謝れよ」
「サリ〜に隠れてて見えなかったんだよ!けど、ホントごめんっ!あれ、もしかしてはじめまして?俺、明星スバル。2年でサリ〜とクラスは違うんだけど、Trick starってユニット組んでて、バッ」
「待て待て待てってば!そんな弾丸で喋ったら……」
『…っ、い、いどう、教室なので…っ!!』
「って言わんこっちゃない!」
衣更先輩のとなりで肩を並べた先輩は、突然ぎゅっと両手で手を握ってきてぶんぶんと腕を振るものだから、先輩の言葉なんて頭に入る前に緊張と恐怖から手の震えが止まらなくなる。咄嗟に振り払って、先輩ということすら頭から飛んでいって、反対方向に逃げ出した。衣更先輩が何か言っていたように聞こえたけど、この場から離れたい気持ちが、いつもはゆっくりの足をさらに急がせる。走ったことのない早さで、音楽室についた時には、苦しさで涙が出てきてしまった。
『り、凛月先輩っ……と、…お呼びしても良いでしょうか?』
席に座って、早速自分の中の結論を朔間先輩改め凛月先輩に尋ねてみる。これで断られたら、と思うと、苦しい。けれどまた考えなおせばいい。衣更先輩と天祥院先輩のアドバイスを思い出しながら、そっと凛月先輩を見る。
「うん、ありがと〜。はなちゃん」
それでいいよぉ〜と、ゆるく答えてくれた先輩に、ホッとして息を吐き出すと、隣りに座っていた衣更先輩がふはっと笑った。
「緊張しすぎだぜ、花守」
『…だ、…って……衣更先輩、そんなに笑わないでくださいよ』
「あんまりにガチガチな顔してたからさ。そんなに緊張することかよ」
『ぼ、僕にとっては…一大事…なんです』
「あ〜、泣くなって!」
ほろりと零れそうになった涙を、指先で衣更先輩が拭ってくれた。そのあと、泣き止めと言いながら優しくなでてくれる。兄弟でもいるのかなと思わず考えてしまうほど、その手つきは優しく温かい。
『……先輩って、ご兄弟いらっしゃいますか?』
「ん?あぁ、妹がいる」
なるほどとピースがハマったように頷いてしまった。
「さぁ、泣いてばかりでは折角のお茶会が台無しになってしまうよ。紅茶が冷めてしまったね。淹れなおして仕切り直ししよう」
「あ、会長!俺やりますよっ」
「衣更君は今回お客様なんだから、座っていて?僕が淹れたいんだ」
「…わかりました」
天祥院先輩が立ち上がるのと同時に立ち上がった衣更先輩がそろりと座って、それに天祥院先輩がふふっと笑った。
「僕のとっておきを用意するよ」
先輩の淹れてくれた紅茶は、運ばれてくる最中から柔らかい香りが漂ってきて、一口飲むとその香りが触れた先から広がって口いっぱいになった。なんと言うかとても落ち着く。自然と目を閉じて、香りだけを楽しみたくなる。
凛月先輩の美味しいお菓子に、天祥院先輩とっておきの紅茶。
こんな贅沢でいいのかなと、不安になったけれど、そんな時に目があった彼がふわっと笑うから、今だけは少しだけ肩の力を抜いて紅茶を楽しむことにした。
翌日。今日は衣更先輩に誘われたバスケ部の活動日だった。紫之くんも校内アルバイトが入っているということで、体育館で待ち合わせしようと話を移動教室の途中でたまたま会った衣更先輩からしてくれた。
「待てよ…1Aだったら、高峯がいるんじゃないか?」
『…?』
思案顔で顎に手をあてる先輩の姿は、探偵のように似合いすぎていて見とれてしまう。伏せがちだった先輩と目があって、びくりと肩を震わせた。
「花守」
『は、はい!』
「高峯と来るか?体育館まで」
『高峯くん、とですか?』
「あぁ、あいつもバスケ部なんだよ」
「同じクラスだろ?」と尋ねてきた先輩の言葉に、クラスでも高身長の彼を思い浮かべた。バスケ部だったんだと内心驚きだ。…確かに初日の自己紹介を交わしてからは、日常会話程度なら話している。けれど、それはまわりに紫之くんや真白くんがいるから成立しているのであって、ふたりきりとなると話は別である。たとえ教室から体育館の短い距離であったとしても。
そもそもふたりきりになったことない…!
お互い自分から話題を振るタイプではないし、きっと気まずい雰囲気になってしまうだけだ。
『えっと……』
どうだ?とばかりにじっと衣更先輩が見つめてくる中で、何となく返答に困って視線を泳がせてしまう。きっと衣更先輩は僕の性格を思ってくれての提案をしてくれている。だから、本来なら気まずい雰囲気になったとしても高峯くんと一緒に来るべきなのだ。
『…っ…、…いっしょに』
「あぁっ!サリ〜、ここにいたんだ!!」
「うわっ、スバル!?」
一緒に行きますと答えようとして、途中まで言ったところで、オレンジ髪の元気な2年生が衣更先輩の後ろから走ってきた。抱きつくように背中にくっつくまで、あっという間。衣更先輩も振り返る前に前のめりになったけれど、二・三歩動いただけだった。すごい運動神経。僕だったらきっと潰されてた。一瞬の出来事だったから、反応できずにいると、ふと目があった衣更先輩が僕の顔を見てぷはっと笑った。
「花守、驚かしてゴメンな。ったく、スバルも謝れよ」
「サリ〜に隠れてて見えなかったんだよ!けど、ホントごめんっ!あれ、もしかしてはじめまして?俺、明星スバル。2年でサリ〜とクラスは違うんだけど、Trick starってユニット組んでて、バッ」
「待て待て待てってば!そんな弾丸で喋ったら……」
『…っ、い、いどう、教室なので…っ!!』
「って言わんこっちゃない!」
衣更先輩のとなりで肩を並べた先輩は、突然ぎゅっと両手で手を握ってきてぶんぶんと腕を振るものだから、先輩の言葉なんて頭に入る前に緊張と恐怖から手の震えが止まらなくなる。咄嗟に振り払って、先輩ということすら頭から飛んでいって、反対方向に逃げ出した。衣更先輩が何か言っていたように聞こえたけど、この場から離れたい気持ちが、いつもはゆっくりの足をさらに急がせる。走ったことのない早さで、音楽室についた時には、苦しさで涙が出てきてしまった。