enst-紅茶部
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「よろしくお願いします」と手を差し伸べてくれた彼は、無垢な笑顔で受け入れてくれた。昔の彼を知っている僕の立場からしてみれば、ちょっぴり複雑な心境だ。
それに親切にしてくれる彼を、誰にでも優しく接してくれる彼の好意を、無下になど出来るはずもなくて、僕はそっと握手を交わした。
はじめ君の笑顔を見ながら、心の中ではじめ君と呼んでいたことを思い出した。うっかり本人を前にして口に出してしまうのは避けなくちゃ。そうだ、この握手を機会に紫之くんと呼ぶことにしよう。
「そういえば、部活に入る予定はありますか?」
数日が過ぎた時だ。
放課後になり、僕と同じく教科書を鞄にしまっていた紫之くんがふと思い出したように聞いてきた。
『……ぶ、かつ?』
「転入手続きの時に聞きませんでしたか?この学校には、アイドルのグループ活動以外にもいくつかの部活動と委員会があるんです」
「って、転校前の高校にもありましたよね?」と笑いながら言った彼に、どう答えていいかわからなくて曖昧に濁した。
『夢ノ咲学院の部活動ってどんなものがあるんですか?』
「そうですね。例えば、運動部には高峯くんの所属するバスケ部や鉄虎くんの所属する空手部などがあります。文化部には、友也くんが所属している演劇部や、ぼくの入部した紅茶部があるんですが……」
何か考えるように、うーんと顎の下に手を当てた紫之くんが、閃いたように笑顔を弾けさせた。
「そうだ…実際、体験してみましょうか?花守くん、この後、空いていますか?」
「で、連れて来ちゃったんだ。は〜くん?」
ガーデンスペースの白いテーブルには、2つのティーカップと青と緑のネクタイをした黒髪と白に近い黄土色の髪をした先輩が座っていた。その中の黒髪の先輩が紫之くんにダルそうな声で話しかけてきた。
「何だか…、ご機嫌ななめですね、凛月先輩」
「安眠妨害されたからねぇ…ねぇ?エッちゃん」
気圧されながら答えた紫之くんの言葉には答えず、黒髪の先輩は隣の黄土色の髪の先輩を睨む。赤い瞳だからか、僕は少し恐くて、思わず紫之くんの背中に隠れた。紫之くんとはあまり身長が変わらないけれど、動じていない彼が頼もしかったのだ。
「はは。いつまで眉間にシワを寄せているつもりだい?それでは二人がテーブルまで来てくれないじゃないか」
エッちゃんと呼ばれた先輩は、この場に似つかわしくないほどの柔らかく朗らかな声で答えた。
「エッちゃん?」
「先程謝罪はしただろう?また作ればいい。なんなら僕も手伝うよ?」
「それはいい。エッちゃん、見るからにお菓子づくり苦手そうだから。何か初歩的なミスとかしそう」
「塩と砂糖を間違えたり、ね」
二人のやりとりには慣れているのか、紫之くんは僕を隣の席に案内してくれた。
「花守くんは、空いている席に座っていてください。とっておきの紅茶を用意してきますね」
そう言って席を離れていく。僕は、隣のテーブルのやりとりが気になって、どちらか一方が声を出すたびにびくりと肩を揺らしていた。
「本当にやりそうだよねぇ…、それ。ま、また作ればいーし。それよりは〜くん、紅茶まだ〜?」
「丁度準備出来ました!今日はティーカップに合わせて、キームン紅茶です」
運ばれてきた甘い香りに、思わず『…いい匂い』と呟いた。
「緊張ほぐれてきましたか?」
『えっ、と…、……紫之くん』
「んん?」
『あの、お二人は……?』
「あっ、ごめんなさい。紹介がまだでしたね。黒髪が朔間凛月先輩、もうひと方が生徒会長の天祥院英智先輩。二人ともぼくの好きな紅茶部の先輩方です」
優しく微笑んだ紫之くんは、そっと僕の前にティーカップを置き、振り返って彼らを見た。
「時々今日みたいな会話もありますが、とっても頼りになる格好いい先輩方なんですよ」
彼の慈しむような眼差しにつられ、僕も視線を彼らに向けた。
『大切な人たち…なんですね』
僕の言葉に、紫之くんはそれは嬉しそうな声で「はいっ!」と答えてくれた。
それに親切にしてくれる彼を、誰にでも優しく接してくれる彼の好意を、無下になど出来るはずもなくて、僕はそっと握手を交わした。
はじめ君の笑顔を見ながら、心の中ではじめ君と呼んでいたことを思い出した。うっかり本人を前にして口に出してしまうのは避けなくちゃ。そうだ、この握手を機会に紫之くんと呼ぶことにしよう。
「そういえば、部活に入る予定はありますか?」
数日が過ぎた時だ。
放課後になり、僕と同じく教科書を鞄にしまっていた紫之くんがふと思い出したように聞いてきた。
『……ぶ、かつ?』
「転入手続きの時に聞きませんでしたか?この学校には、アイドルのグループ活動以外にもいくつかの部活動と委員会があるんです」
「って、転校前の高校にもありましたよね?」と笑いながら言った彼に、どう答えていいかわからなくて曖昧に濁した。
『夢ノ咲学院の部活動ってどんなものがあるんですか?』
「そうですね。例えば、運動部には高峯くんの所属するバスケ部や鉄虎くんの所属する空手部などがあります。文化部には、友也くんが所属している演劇部や、ぼくの入部した紅茶部があるんですが……」
何か考えるように、うーんと顎の下に手を当てた紫之くんが、閃いたように笑顔を弾けさせた。
「そうだ…実際、体験してみましょうか?花守くん、この後、空いていますか?」
「で、連れて来ちゃったんだ。は〜くん?」
ガーデンスペースの白いテーブルには、2つのティーカップと青と緑のネクタイをした黒髪と白に近い黄土色の髪をした先輩が座っていた。その中の黒髪の先輩が紫之くんにダルそうな声で話しかけてきた。
「何だか…、ご機嫌ななめですね、凛月先輩」
「安眠妨害されたからねぇ…ねぇ?エッちゃん」
気圧されながら答えた紫之くんの言葉には答えず、黒髪の先輩は隣の黄土色の髪の先輩を睨む。赤い瞳だからか、僕は少し恐くて、思わず紫之くんの背中に隠れた。紫之くんとはあまり身長が変わらないけれど、動じていない彼が頼もしかったのだ。
「はは。いつまで眉間にシワを寄せているつもりだい?それでは二人がテーブルまで来てくれないじゃないか」
エッちゃんと呼ばれた先輩は、この場に似つかわしくないほどの柔らかく朗らかな声で答えた。
「エッちゃん?」
「先程謝罪はしただろう?また作ればいい。なんなら僕も手伝うよ?」
「それはいい。エッちゃん、見るからにお菓子づくり苦手そうだから。何か初歩的なミスとかしそう」
「塩と砂糖を間違えたり、ね」
二人のやりとりには慣れているのか、紫之くんは僕を隣の席に案内してくれた。
「花守くんは、空いている席に座っていてください。とっておきの紅茶を用意してきますね」
そう言って席を離れていく。僕は、隣のテーブルのやりとりが気になって、どちらか一方が声を出すたびにびくりと肩を揺らしていた。
「本当にやりそうだよねぇ…、それ。ま、また作ればいーし。それよりは〜くん、紅茶まだ〜?」
「丁度準備出来ました!今日はティーカップに合わせて、キームン紅茶です」
運ばれてきた甘い香りに、思わず『…いい匂い』と呟いた。
「緊張ほぐれてきましたか?」
『えっ、と…、……紫之くん』
「んん?」
『あの、お二人は……?』
「あっ、ごめんなさい。紹介がまだでしたね。黒髪が朔間凛月先輩、もうひと方が生徒会長の天祥院英智先輩。二人ともぼくの好きな紅茶部の先輩方です」
優しく微笑んだ紫之くんは、そっと僕の前にティーカップを置き、振り返って彼らを見た。
「時々今日みたいな会話もありますが、とっても頼りになる格好いい先輩方なんですよ」
彼の慈しむような眼差しにつられ、僕も視線を彼らに向けた。
『大切な人たち…なんですね』
僕の言葉に、紫之くんはそれは嬉しそうな声で「はいっ!」と答えてくれた。