enst-紅茶部
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「ヒーローは好きか?」
衣更先輩に紹介されて、開口一番に守沢千秋先輩に言われた。まだ自分では名前すら名乗っていなかった僕としては、なんか熱い人だなぁとたじろぐしかなかった。
『ちいさい…ころ、は、みてました』
それこそヒーローショーが見たくて、遊園地に行きたいとせがんだことも。
「そうか、そうか!ヒーローはあらゆる悪意を吹き飛ばしてくれる!そして俺も君のヒーローになりたい!力になりたいんだ!」
「部長、ちょっと花守が驚いてますよ。まだ自己紹介すらしてないんですから」
「そうだ、忘れていた!俺は、守沢千秋。バスケ部部長を務めている。宜しくな」
『あ……、えっと……こ、ちらこそ…。僕は、花守…瑠衣です。はじめ、まして…』
「花守は、何を見ていたんだ?小さい頃というと、少し昔の作品になるのか?しかし二年しか離れてはいないから、きっとハマった年代は近いはずだ!!」
『は、はぁ……』
「そうだ!せっかくだから俺の憧れるヒーローについて、教えてやろう!きっと良さが分かるはずだ!まずは…」
ちらりと横目で衣更先輩をみると、僕の視線に気づいた先輩が、片手をたててごめんなと笑った。そのまま近づいてきて、耳に手を当てられて小声で話しかけてきた。
「驚いただろ?けど、根は後輩思いの立派な先輩だからさ。そんなに、怯えずに接してほしい」
僕らがいるのを忘れてすらいるんじゃないかという勢いでヒーローについて深く語っている先輩を一度見た。悪い人じゃない。それはすごく伝わってくる。
『……分かってます』
頭では分かっていても、受け入れられると言われれば、素直に「はい」とは頷けない。自分でも自覚してる。その証拠にきっと顔が引きつっているんじゃないかと思う。
その後守沢先輩は自分の憧れるヒーローから初めて魅力に取り憑かれた瞬間の話など、部活の始まる数秒前まで話し続けていた。
その後は声もかけずに抜けるのが憚られて、流れでバスケ部の練習を見学した。時折気にかけるような衣更先輩の視線を感じながら、申し訳無さも生まれる。だからといって、居心地の悪さはそれほど感じていなかった。
すこし矛盾しているけれど、理由は目が勝手に先輩たちを追っていたからかもしれない。
紫之くんの尊敬する明星先輩の熱中する姿やさっきまでここでヒーローを語っていた守沢先輩の部長っぷりを目の当たりにしたからなのか。はたまた教室でみる高峯くんとは別人のような真剣さを感じたからか。
きっと全部だ。
クラスや少し関わっただけでは見れなかった一面を知ることのできたこの機会に、僕はわくわくしていた。
何より、衣更先輩がかっこいい!
ボールを追いかける時のスキール音、視線を使ったフェイクにジャンプシュートを打つ時の真剣な顔つき。目を奪われるほどの無駄の少ない動きに、正確に位置を見てパスをする。端々に誰からも頼られる先輩らしさがうかがえた。
休憩に入ると、一気に空気がやわらかくなる。部員にも笑顔が広がり、和やかムードだ。さっきまでの練習していた人たちとは思えないほどにだ。
僕の近くにも衣更先輩が来てくれて、どうだったかと感想を聞いてくる。
『運動部の練習って…初めてで新鮮です』
「あー、見に来るのも躊躇っていたな、花守は」
『…はい』
「好きなことをやればいいんだ」
ドリンクを飲みながら、衣更先輩は他の部員に囲まれて話す守沢先輩の方へ視線を送っていた。さっきのヒーローの話をする時とはまた違った表情の先輩が見える。
「あの人に会って貰いたいって、紹介したいってずっと思ってたんだよ」
『僕も………会えてよかったって、部活見に来てよかったなって、感じてます』
きっとこの部活に入ることはないだろうと思う。けれど、いろんな人の違う一面に出会えて、1エピソードだけでその人の全てだなんて思うのは愚かだと、氷山の一角に過ぎないのだと、そのことを感じられただけで、ここに来た意味は十分にあった。
「ほんとか?」
『……はい。あ、あの…また、遊びにきてもいいですか?』
「勿論、大歓迎だ」
『ありがとうございます』
衣更先輩に一礼して、守沢先輩にもお礼をしようとその場を離れた。僕が近づくと、先輩が先に気づいてくれて、すぐに荷物を持った右手を見た。
「おぉ、もう帰るのか!またいつでも待っているぞ!」
ニカッと気持ちのいい笑顔にこちらまでつられて笑ってしまう。
『はい、また…来ますね』
失礼しますと、お辞儀する。体育館を後にする時まで、先輩たちは手を振り見送ってくれていた。
衣更先輩に紹介されて、開口一番に守沢千秋先輩に言われた。まだ自分では名前すら名乗っていなかった僕としては、なんか熱い人だなぁとたじろぐしかなかった。
『ちいさい…ころ、は、みてました』
それこそヒーローショーが見たくて、遊園地に行きたいとせがんだことも。
「そうか、そうか!ヒーローはあらゆる悪意を吹き飛ばしてくれる!そして俺も君のヒーローになりたい!力になりたいんだ!」
「部長、ちょっと花守が驚いてますよ。まだ自己紹介すらしてないんですから」
「そうだ、忘れていた!俺は、守沢千秋。バスケ部部長を務めている。宜しくな」
『あ……、えっと……こ、ちらこそ…。僕は、花守…瑠衣です。はじめ、まして…』
「花守は、何を見ていたんだ?小さい頃というと、少し昔の作品になるのか?しかし二年しか離れてはいないから、きっとハマった年代は近いはずだ!!」
『は、はぁ……』
「そうだ!せっかくだから俺の憧れるヒーローについて、教えてやろう!きっと良さが分かるはずだ!まずは…」
ちらりと横目で衣更先輩をみると、僕の視線に気づいた先輩が、片手をたててごめんなと笑った。そのまま近づいてきて、耳に手を当てられて小声で話しかけてきた。
「驚いただろ?けど、根は後輩思いの立派な先輩だからさ。そんなに、怯えずに接してほしい」
僕らがいるのを忘れてすらいるんじゃないかという勢いでヒーローについて深く語っている先輩を一度見た。悪い人じゃない。それはすごく伝わってくる。
『……分かってます』
頭では分かっていても、受け入れられると言われれば、素直に「はい」とは頷けない。自分でも自覚してる。その証拠にきっと顔が引きつっているんじゃないかと思う。
その後守沢先輩は自分の憧れるヒーローから初めて魅力に取り憑かれた瞬間の話など、部活の始まる数秒前まで話し続けていた。
その後は声もかけずに抜けるのが憚られて、流れでバスケ部の練習を見学した。時折気にかけるような衣更先輩の視線を感じながら、申し訳無さも生まれる。だからといって、居心地の悪さはそれほど感じていなかった。
すこし矛盾しているけれど、理由は目が勝手に先輩たちを追っていたからかもしれない。
紫之くんの尊敬する明星先輩の熱中する姿やさっきまでここでヒーローを語っていた守沢先輩の部長っぷりを目の当たりにしたからなのか。はたまた教室でみる高峯くんとは別人のような真剣さを感じたからか。
きっと全部だ。
クラスや少し関わっただけでは見れなかった一面を知ることのできたこの機会に、僕はわくわくしていた。
何より、衣更先輩がかっこいい!
ボールを追いかける時のスキール音、視線を使ったフェイクにジャンプシュートを打つ時の真剣な顔つき。目を奪われるほどの無駄の少ない動きに、正確に位置を見てパスをする。端々に誰からも頼られる先輩らしさがうかがえた。
休憩に入ると、一気に空気がやわらかくなる。部員にも笑顔が広がり、和やかムードだ。さっきまでの練習していた人たちとは思えないほどにだ。
僕の近くにも衣更先輩が来てくれて、どうだったかと感想を聞いてくる。
『運動部の練習って…初めてで新鮮です』
「あー、見に来るのも躊躇っていたな、花守は」
『…はい』
「好きなことをやればいいんだ」
ドリンクを飲みながら、衣更先輩は他の部員に囲まれて話す守沢先輩の方へ視線を送っていた。さっきのヒーローの話をする時とはまた違った表情の先輩が見える。
「あの人に会って貰いたいって、紹介したいってずっと思ってたんだよ」
『僕も………会えてよかったって、部活見に来てよかったなって、感じてます』
きっとこの部活に入ることはないだろうと思う。けれど、いろんな人の違う一面に出会えて、1エピソードだけでその人の全てだなんて思うのは愚かだと、氷山の一角に過ぎないのだと、そのことを感じられただけで、ここに来た意味は十分にあった。
「ほんとか?」
『……はい。あ、あの…また、遊びにきてもいいですか?』
「勿論、大歓迎だ」
『ありがとうございます』
衣更先輩に一礼して、守沢先輩にもお礼をしようとその場を離れた。僕が近づくと、先輩が先に気づいてくれて、すぐに荷物を持った右手を見た。
「おぉ、もう帰るのか!またいつでも待っているぞ!」
ニカッと気持ちのいい笑顔にこちらまでつられて笑ってしまう。
『はい、また…来ますね』
失礼しますと、お辞儀する。体育館を後にする時まで、先輩たちは手を振り見送ってくれていた。