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 大きなあくびをしながらリビングへ入ってきたのは大きな体をした子ども、もとい寝坊助さん。リビングのソファに腰掛けて楽譜を読んでいた私の膝に遠慮なく頭を乗せて2度寝ならぬ3度寝をしようとする。

「ちょっと、もうダメよ」
「んー、あとちょっとだけだから」
「だぁめ。あなたそう言ってベッドで2度寝してるのよ。それも3時間も」

 はい、起きてちょうだい、と寝癖のついた蜂蜜色の頭を膝から退かす。
 はるかはちぇ、と言いながら渋々体を起こして伸びをした。まるで猫ね、なんて思いながら目覚めのコーヒーの用意をするために立ち上がる。

「ありがと」

 持ってきたコーヒーを受け取って口にしたはるかはふと部屋を見渡してあれ? と声を漏らした。

「ほたるは?」
「早くからちびうさちゃんと遊びに出掛けたわよ」
「せつなは?」
「今日もお仕事」

 ええ? 今日も? もうしばらく休み取ってないだろ? というはるかに私も少し困った顔で頷く。
 せつなが何事にも真剣に取り組む人だということはもう分かっていたけれど流石に最近は度が過ぎているように思う。

「……仕事しながら、家事もやってくれてるんだろ? 君と交代で」
「ええ、私が家の事するから休んでって言ったのだけれど仕事をしているのはあなたも同じでしょうって言って聞いてくれないのよ」

 本当に困った人だわ、と呟けばはるかはコーヒーに口をつけながらうーん、と唸った。
 休んでと言って素直に休むような人じゃないから休ませるためには工夫をしなければならない。けれどなかなかいい案も思い付かなくてこうして今まで引き延ばしになってしまった。

「よし、決めた」
「え?」

 はるかはそう呟くとソファから立ち上がっておもむろにスマホを取り出すとどこかに電話をかけ始めた。

「もしもし、天王です。……はい、お世話になってます。実は少しお願いしたい事がありまして」

 しばらく会話を、といっても向こうの声は聞き取れないからはるかの言葉だけを聞いて推測したのだけれど、どうやらせつなの職場にかけているようだった。
 何か用件を伝え終えたはるかは振り返ってイタズラ小僧のような笑顔を浮かべた。

「みちる、君も協力してくれよ」
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