いちばん
「……なに、それ」
「これ? ほたるがくれたのよ」
せっかくの4人休みの日。今日は少し遠出でもしようかと話していた時に職場から呼び出された。
突然大事な会議をする事になったから来いと言われて不貞腐れる僕を苦笑いで送り出した3人はどうやら出かけていたようだった。
帰ってきた僕を出迎えてくれたみちるの膝の上にはデカくてもふもふの猫のぬいぐるみが乗っていた。
「プライズ?」
「出かけた先にゲームコーナーがあってね。ちょっとだけ寄ってみたの」
3人でそんな所に寄るなんて随分珍しいな、と思いながら僕はみちるの横に腰かけてみちるが抱えてる猫の手をつまみ上げる。
もう、そんな風に扱わないでちょうだい、とみちるは猫を僕から遠ざけた。
「なんだよ、そんなに気に入ったの? それ」
「……悪い?」
ちょっとだけ唇を尖らせて頬を染めたみちるに微笑んでいや、かわいいよ、と伝えながら頬にキスをする。
照れたようにはにかむとみちるは猫のぬいぐるみをさらに抱き寄せて顔を埋めてしまった。
何だか今日のみちるはいつもより子どもっぽくてかわいいな。
「あ! はるかパパおかえりなさい!」
「おかえりなさい。お疲れ様です」
「ただいま、ほたる、せつな」
みちるは一度ぬいぐるみを部屋に置いてくると2階へ上がり、それと入れ替わるようにしてほたるとせつながリビングへ入ってきた。
「珍しいな、3人でゲームコーナー寄るなんて」
「ええ。ちょうど見える位置にあの猫のぬいぐるみがあったので」
「みちるママがね、あの猫さんじーっと見つめてたからじゃあちょっとやってみよーって」
はるかパパがいつもお手本見せてくれるから2回で取れたんだよー! と胸を張るほたるに微笑む。
いつも……? と呟いてこちらを見るせつなは見なかったことにしよう。
「でも、あんなに嬉しそうにしてるみちるも珍しいよなあ」
「だってあの猫さんはるかパパに似てるもん」
「え?」
「色とか、あとちょっとくせっ毛でクルンってなってる頭の毛とか。だからみちるママあの猫さん欲しがってるんだなーってすぐ気付いたよ?」
なんだよ、それ。かわいすぎるだろ。
「あー! はるかパパ顔真っ赤ー!」
「うっ……ほ、ほたる!」
「きゃー! ごめんなさーい!」
ほたるは楽しそうに声を上げながらせつなの後ろに隠れた。せつなも微笑みながらほたるの頭を撫でる。
「まあ、そういうことで寄ったんですよ」
「そっか」
今日の珍しい家族の行動、みちるの言動に納得がいった僕は小さく呟いて笑った。
◇◇◇
「みちる?」
「ん、なあに?」
先に寝る支度を終えたみちるはベッドの中にいた。まだ少し濡れた髪を乱雑にタオルで拭きながらベッドの縁に腰掛けてみちるにキスを送る。
くすくすと笑うみちるに僕も自然と笑みが浮かぶ。そのままみちるを抱きしめようと思ったけどその腕の中には例の猫がいた。
「なあ、これ」
「これ呼ばわりしないでくださる?」
ぎゅっと猫を抱きしめるみちるはすごく可愛い。可愛いんだけど、非常に面白くない。
みちるの腕の中の猫は勝ち誇ったような瞳で僕を見てくる。
この猫が僕に似てるからみちるが嬉しそうにしてるって聞いた時は嬉しかったけどさ、なあ、だったら僕がここにいるんだからそいつより僕の方がいいに決まってるだろ!
「あ! ちょっと、はるか!」
「うるさい」
みちるの腕の中から猫を取り上げて枕元に少しだけ乱暴に置く。投げ捨てたら絶対、本気でみちるに怒られるのは分かってたから。
「ん、はるか。くすぐったい」
「そいつより僕のがいいだろ」
そして取り上げて空いた腕の中に潜り込む。みちるの胸に顔を埋めながらボソリと言えば一瞬の沈黙の後、みちるは笑いだした。
「わ、らうことないだろ!」
「ふふふっ、ごめんなさい。……そうね、確かにこの子の抱き心地はとても良くて可愛いけど」
「ん、」
「はるかの方がもっと抱き心地も良くて可愛いわ」
僕の髪をかき混ぜながら顕になった額に1つキスを落とすとみちるはそう言って綺麗な笑みを浮かべた。
「……ぼくはかわいいんじゃなくてかっこいいんだ」
「ふふ、そういう所が可愛いわよ」
「……かわいいのはみちるだ」
ずーっと楽しそうに笑って僕の髪をかき混ぜるみちるに反論するけど、子どもっぽい言い訳にしかなってないのも自覚してる。
はあ、本当に僕って、情けない……。
みちるの胸に顔を埋めたまま落ち込んでいると頭に回していた腕を背中の方まで滑らせてみちるは僕を抱きしめた。
「好きよ、はるか。あなたが1番」
「……僕も、好きだよみちる。君が1番」
視線を上げると猫を抱きしめていた時よりもっと幸せそうな顔をしたみちるがいた。
「これ? ほたるがくれたのよ」
せっかくの4人休みの日。今日は少し遠出でもしようかと話していた時に職場から呼び出された。
突然大事な会議をする事になったから来いと言われて不貞腐れる僕を苦笑いで送り出した3人はどうやら出かけていたようだった。
帰ってきた僕を出迎えてくれたみちるの膝の上にはデカくてもふもふの猫のぬいぐるみが乗っていた。
「プライズ?」
「出かけた先にゲームコーナーがあってね。ちょっとだけ寄ってみたの」
3人でそんな所に寄るなんて随分珍しいな、と思いながら僕はみちるの横に腰かけてみちるが抱えてる猫の手をつまみ上げる。
もう、そんな風に扱わないでちょうだい、とみちるは猫を僕から遠ざけた。
「なんだよ、そんなに気に入ったの? それ」
「……悪い?」
ちょっとだけ唇を尖らせて頬を染めたみちるに微笑んでいや、かわいいよ、と伝えながら頬にキスをする。
照れたようにはにかむとみちるは猫のぬいぐるみをさらに抱き寄せて顔を埋めてしまった。
何だか今日のみちるはいつもより子どもっぽくてかわいいな。
「あ! はるかパパおかえりなさい!」
「おかえりなさい。お疲れ様です」
「ただいま、ほたる、せつな」
みちるは一度ぬいぐるみを部屋に置いてくると2階へ上がり、それと入れ替わるようにしてほたるとせつながリビングへ入ってきた。
「珍しいな、3人でゲームコーナー寄るなんて」
「ええ。ちょうど見える位置にあの猫のぬいぐるみがあったので」
「みちるママがね、あの猫さんじーっと見つめてたからじゃあちょっとやってみよーって」
はるかパパがいつもお手本見せてくれるから2回で取れたんだよー! と胸を張るほたるに微笑む。
いつも……? と呟いてこちらを見るせつなは見なかったことにしよう。
「でも、あんなに嬉しそうにしてるみちるも珍しいよなあ」
「だってあの猫さんはるかパパに似てるもん」
「え?」
「色とか、あとちょっとくせっ毛でクルンってなってる頭の毛とか。だからみちるママあの猫さん欲しがってるんだなーってすぐ気付いたよ?」
なんだよ、それ。かわいすぎるだろ。
「あー! はるかパパ顔真っ赤ー!」
「うっ……ほ、ほたる!」
「きゃー! ごめんなさーい!」
ほたるは楽しそうに声を上げながらせつなの後ろに隠れた。せつなも微笑みながらほたるの頭を撫でる。
「まあ、そういうことで寄ったんですよ」
「そっか」
今日の珍しい家族の行動、みちるの言動に納得がいった僕は小さく呟いて笑った。
◇◇◇
「みちる?」
「ん、なあに?」
先に寝る支度を終えたみちるはベッドの中にいた。まだ少し濡れた髪を乱雑にタオルで拭きながらベッドの縁に腰掛けてみちるにキスを送る。
くすくすと笑うみちるに僕も自然と笑みが浮かぶ。そのままみちるを抱きしめようと思ったけどその腕の中には例の猫がいた。
「なあ、これ」
「これ呼ばわりしないでくださる?」
ぎゅっと猫を抱きしめるみちるはすごく可愛い。可愛いんだけど、非常に面白くない。
みちるの腕の中の猫は勝ち誇ったような瞳で僕を見てくる。
この猫が僕に似てるからみちるが嬉しそうにしてるって聞いた時は嬉しかったけどさ、なあ、だったら僕がここにいるんだからそいつより僕の方がいいに決まってるだろ!
「あ! ちょっと、はるか!」
「うるさい」
みちるの腕の中から猫を取り上げて枕元に少しだけ乱暴に置く。投げ捨てたら絶対、本気でみちるに怒られるのは分かってたから。
「ん、はるか。くすぐったい」
「そいつより僕のがいいだろ」
そして取り上げて空いた腕の中に潜り込む。みちるの胸に顔を埋めながらボソリと言えば一瞬の沈黙の後、みちるは笑いだした。
「わ、らうことないだろ!」
「ふふふっ、ごめんなさい。……そうね、確かにこの子の抱き心地はとても良くて可愛いけど」
「ん、」
「はるかの方がもっと抱き心地も良くて可愛いわ」
僕の髪をかき混ぜながら顕になった額に1つキスを落とすとみちるはそう言って綺麗な笑みを浮かべた。
「……ぼくはかわいいんじゃなくてかっこいいんだ」
「ふふ、そういう所が可愛いわよ」
「……かわいいのはみちるだ」
ずーっと楽しそうに笑って僕の髪をかき混ぜるみちるに反論するけど、子どもっぽい言い訳にしかなってないのも自覚してる。
はあ、本当に僕って、情けない……。
みちるの胸に顔を埋めたまま落ち込んでいると頭に回していた腕を背中の方まで滑らせてみちるは僕を抱きしめた。
「好きよ、はるか。あなたが1番」
「……僕も、好きだよみちる。君が1番」
視線を上げると猫を抱きしめていた時よりもっと幸せそうな顔をしたみちるがいた。
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