鬼は外、パパも外?
2月3日は節分の日。うちも例に漏れず3日には豆まきをして恵方巻きを食べようと随分前から約束していた。
だから今日ははるかパパもみちるママもお仕事はおやすみでお家にいる。せつなママはお仕事があるけれど夕方には帰ってくることになっていた。
学校を終えた私は真っ直ぐにお家へ帰り、はるかパパとみちるママと夜の節分に向けて準備をする予定、だったのだけれど。
「あら、おかえりなさいほたる」
「た、ただいま……」
なんだかいつもより3割増くらいでにこにことしているみちるママだけが家にいた。私はそんなママを見てわぁ……と一瞬気が遠くなる。
4人で家族として暮らすようになって知ったことの1つ。それはみちるママは本気で怒ると青い炎のように静かに激しく怒るということ。
怒りのレベルが低いと少し拗ねたように見せたり不機嫌を顕にしたりするけれど本当の本当に、本気で怒った時はにこにこと笑って笑顔の仮面の下にその怒りを隠すのだ。
けれどみちるママは親しくない人に怒りを抱くことは滅多になくてどちらかと言えばこう、不快? に思ったりすることはあるらしい。
そうなった時は困ったような顔をするだけで笑顔を見せたりはあんまりしない。そもそもすぐはるかパパが割って入るからその感情もどっかにいっちゃうみたい。
だからこういう怒り方をするってことは親しい人と喧嘩をしたってことで、今日は私もせつなママもみちるママと喧嘩をするような事なんて出来るわけなくて(そもそも私たちがみちるママと喧嘩をするなんてなくて)、何よりはるかパパの姿が見えないことがパパと喧嘩をしたという証拠だった。
どうしよう、思い切って聞いてみようか、と思っていると予定より随分早く帰ってきたせつなママがリビングに入ってきた。
「おかえりなさい、せつな」
「おかえりなさいせつなママ……」
「……ただいま、帰りました」
みちるママは私が帰ってきた時と同じように笑顔でせつなママを迎える。そんなみちるママと、ちょっと引き攣った顔をしているだろう私を見てせつなママも色々悟ったようだった。
夜の準備してくるわね、とキッチンへ引っこもうとするみちるママの背中にせつなママがみちる、と投げかける。私たちに背中を向けたままピタリと止まったみちるママに小さく問いかけた。
「あの、はるかは、どこに……?」
せつなママの小さな声はけれどシンと静まり返ったリビングによく響いた。少しも動かないみちるママを私とせつなママは固唾を飲んで見守る。
「あら、はるかってどちら様?」
振り返って清々しいとても綺麗な笑顔で言い放つ。
そんなみちるママの笑顔は見惚れるほど美しかった。けれど同時に、どうしようもなく恐ろしく私たちは固まったまま再び踵を返してキッチンへ去っていくその背中を見送った。
「はぁー……」
「……はるかパパに、電話してみよう?」
私の提案に頷いたせつなママと共に2階のせつなママの部屋へと向かう。机の横にカバンを置いて上着のポケットからスマホを取り出すとせつなママは慣れたようにはるかパパの番号を呼び出した。
スピーカーにしてスマホを机の上に置いたせつなママと一緒に電話が繋がるのを待つ。数回コールのあと、もしもし? というはるかパパの声が聞こえた。
「もしもし、せつなです」
『はは、分かってるよ。君のスマホから電話が来てるんだから』
「すみません、こればかりは癖で」
何だか呑気な声音で話すはるかパパにこっちは大変なのに! と思いながら早速本題に入ろうと口を開いた。
「もー! はるかパパ!」
『いや、ごめんごめん。分かってるよ、みちるのことだろ?』
せつなママをからかっていた時とは打って変わって真剣な声で話すはるかパパに私はポカンとする。せつなママはくすりと苦笑いをして話を続けた。
「はい、何があったんです? 相当怒っていますよ。それよりもあなた、今どこにいるんですか?」
『はぁー、参ったなぁ……。あーっと、今は街にいるよ。みちると仲直りする方法考えてた』
「ということは自分に非があると?」
『んー、僕が悪かったっていうか、まあ色々間が悪かったっていうか……』
もごもごとしながらはるかパパはお昼に何があったのか話し出した。
だから今日ははるかパパもみちるママもお仕事はおやすみでお家にいる。せつなママはお仕事があるけれど夕方には帰ってくることになっていた。
学校を終えた私は真っ直ぐにお家へ帰り、はるかパパとみちるママと夜の節分に向けて準備をする予定、だったのだけれど。
「あら、おかえりなさいほたる」
「た、ただいま……」
なんだかいつもより3割増くらいでにこにことしているみちるママだけが家にいた。私はそんなママを見てわぁ……と一瞬気が遠くなる。
4人で家族として暮らすようになって知ったことの1つ。それはみちるママは本気で怒ると青い炎のように静かに激しく怒るということ。
怒りのレベルが低いと少し拗ねたように見せたり不機嫌を顕にしたりするけれど本当の本当に、本気で怒った時はにこにこと笑って笑顔の仮面の下にその怒りを隠すのだ。
けれどみちるママは親しくない人に怒りを抱くことは滅多になくてどちらかと言えばこう、不快? に思ったりすることはあるらしい。
そうなった時は困ったような顔をするだけで笑顔を見せたりはあんまりしない。そもそもすぐはるかパパが割って入るからその感情もどっかにいっちゃうみたい。
だからこういう怒り方をするってことは親しい人と喧嘩をしたってことで、今日は私もせつなママもみちるママと喧嘩をするような事なんて出来るわけなくて(そもそも私たちがみちるママと喧嘩をするなんてなくて)、何よりはるかパパの姿が見えないことがパパと喧嘩をしたという証拠だった。
どうしよう、思い切って聞いてみようか、と思っていると予定より随分早く帰ってきたせつなママがリビングに入ってきた。
「おかえりなさい、せつな」
「おかえりなさいせつなママ……」
「……ただいま、帰りました」
みちるママは私が帰ってきた時と同じように笑顔でせつなママを迎える。そんなみちるママと、ちょっと引き攣った顔をしているだろう私を見てせつなママも色々悟ったようだった。
夜の準備してくるわね、とキッチンへ引っこもうとするみちるママの背中にせつなママがみちる、と投げかける。私たちに背中を向けたままピタリと止まったみちるママに小さく問いかけた。
「あの、はるかは、どこに……?」
せつなママの小さな声はけれどシンと静まり返ったリビングによく響いた。少しも動かないみちるママを私とせつなママは固唾を飲んで見守る。
「あら、はるかってどちら様?」
振り返って清々しいとても綺麗な笑顔で言い放つ。
そんなみちるママの笑顔は見惚れるほど美しかった。けれど同時に、どうしようもなく恐ろしく私たちは固まったまま再び踵を返してキッチンへ去っていくその背中を見送った。
「はぁー……」
「……はるかパパに、電話してみよう?」
私の提案に頷いたせつなママと共に2階のせつなママの部屋へと向かう。机の横にカバンを置いて上着のポケットからスマホを取り出すとせつなママは慣れたようにはるかパパの番号を呼び出した。
スピーカーにしてスマホを机の上に置いたせつなママと一緒に電話が繋がるのを待つ。数回コールのあと、もしもし? というはるかパパの声が聞こえた。
「もしもし、せつなです」
『はは、分かってるよ。君のスマホから電話が来てるんだから』
「すみません、こればかりは癖で」
何だか呑気な声音で話すはるかパパにこっちは大変なのに! と思いながら早速本題に入ろうと口を開いた。
「もー! はるかパパ!」
『いや、ごめんごめん。分かってるよ、みちるのことだろ?』
せつなママをからかっていた時とは打って変わって真剣な声で話すはるかパパに私はポカンとする。せつなママはくすりと苦笑いをして話を続けた。
「はい、何があったんです? 相当怒っていますよ。それよりもあなた、今どこにいるんですか?」
『はぁー、参ったなぁ……。あーっと、今は街にいるよ。みちると仲直りする方法考えてた』
「ということは自分に非があると?」
『んー、僕が悪かったっていうか、まあ色々間が悪かったっていうか……』
もごもごとしながらはるかパパはお昼に何があったのか話し出した。
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