夢にまで見た
はーるかさん! みっちるさーん! という元気で愛らしい声で名前を呼ばれる。2人同時に声のした方へ顔を向ければ金色の髪を揺らしたまるで双子のような子たちが教室の外に立っていた。
「おだんご頭、美奈子ちゃん」
はるかが2人を呼ぶと失礼しまーす! と言って入ってくる。ここが上級生の教室でも物怖じせずに入ってくるのはこの2人とあと亜美にまこちゃんの4人。
更には私とはるかと知り合いという珍しい下級生は愛嬌もたっぷりで私たちのクラスメイトはいつもにこにことして私たちを見ている。
「今日は亜美とまこちゃんはいないのね」
「あー、あの2人は、ちょっと……」
「どうかしたのかい?」
私がここにいない2人の名をあげるとうさぎが苦笑いを浮かべながら頬をかく。その様子にはるかが首を傾げると横にいる美奈子ちゃんがうふふ、と笑った。
「ちょーっとね、からかいすぎちゃった。今頃顔真っ赤にして屋上にいるんじゃないかしら」
反省、反省、と全く反省していなさそうな顔をしながら笑う美奈子ちゃんに2人に大事がないなら良かったと私もはるかもほっとする。
「で? 何か用でもあったのかい?」
はるかが2人にここに来た理由を問う。大体は遊びに来るだけなので理由はないのだけれど今日の2人からは何か話したい、というような雰囲気があった。
そして待ってましたと言わんばかりに2人は似たような笑みを浮かべて身を乗り出す。
「お2人は今日が何の日か知ってますか!?」
「今日?」
2人の発言に私たちは考え込む。何か特別な日だったかしら、と思っていると教室の空気が変わったように感じた。
どうしたのかしら、と思っているとはるかがあぁ、そういうこと、と呟いた。
「はるかは分かったの?」
「ん? ああ、まあね。でも多分みちるは知らないよ」
はるかにそう断言された私はなんだか少し悔しかったけれどよくよく考えてみればうさぎと美奈子ちゃんが持ってきた話題だもの、きっと私が聞いたことのないような話題なんだろうと当たりをつける。
私は2人に向かってお手上げのポーズをとると美奈子ちゃんが興奮気味に今日はポッキーの日なんです! と言った。
「みちるさん、ポッキーってお菓子は知ってます?」
「さすがにね。でも食べたことはないわ」
ふぇぇ、さすがお嬢様……と驚くうさぎに曖昧に微笑む。そんな私たちを見てはるかは面白そうに横で笑っていた。
もう、と横目ではるかを睨み付けるとはるかは肩を竦めてごめん、と呟く。
「でもどうして今日がその、ポッキーの日? なのかしら」
「ポッキーの形状って分かる?」
「ええ」
「今日の日付、ポッキーが4本並んでるように見えるだろ?」
はるかの言葉にポッキーと今日の日付を思い浮かべてなるほど、と納得する。いわゆるバレンタインデーと同じような会社の宣伝ってわけね。
「てなわけで! ここにポッキーがあります!」
「そしてポッキーの日にやることと言ったら1つ!」
美奈子ちゃんがどこに持っていたのかポッキーの箱を机の上に出し、うさぎが言葉を続ける。
「ポッキーゲームでしょ!」
美奈子ちゃんの言葉にまた何だか教室の空気が変わった、というより固まったような気がするけれど気のせいかしら。
はるかの方を見ればどうやらはるかはそのポッキーゲームというものを知っているようでにこにこと笑っていた。
視線だけではるかにどういうゲームなのか問いかけるとはるかはおもむろに美奈子ちゃんが出したポッキーの箱を開けてその中から1本取り出す。
そして私にチョコでコーティングされた方を差し出すと咥えて? と言ってきた。お行儀が悪いと思いながらもなんだか少し楽しくなってきた私は素直にはるかの手にあるポッキーを咥える。
「じゃ、そのまま食べ進めて」
「ん」
はるかに言われた通り少しずつ食べ進め始めるとはるかが反対側を咥えて同じように食べ進め始めた。一瞬、動揺したけれどポッキーゲームの趣旨を理解した私はそのまま食べ進めていく。
視界の端でうさぎと美奈子ちゃんがわっ、わっ! と動揺しているのが分かった。
「ん、」
お互いに端から食べ進めていき唇が触れ合いそうになった瞬間、はるかは器用にポッキーを折ってゆっくりと顔を離した。
そしてこれがポッキーゲームと言いながらにやりと笑う。
「ふふ、楽しかったわ」
私が感想を述べると楽しかったって……と顔を真っ赤にしながらうさぎと美奈子ちゃんが声を揃えて呟いた。周囲を見回すとクラスメイトたちも少し顔を赤らめていてなるほど教室の空気が硬かったのはそういうこと、と理解する。
「もう1回、する?」
はるかは机に頬杖をつきながらポッキーを差し出していた。
いや、あの、はるかさん! と慌てて止めようとするうさぎにはるかはにこりと笑ってじゃあおだんご頭がするかい? と問いかける。
うさぎは顔を真っ赤にしてええっとぉ、と呟くと横から美奈子ちゃんが元気よくはい! 私も私も! と声を上げる。
はるかは持っていたポッキーをうさぎの口に咥えさせる。そして反対側を咥えようと動き始めたはるかの襟元を引っ張って私の方に寄せる。
そのまま先程は触れ合わなかった唇同士を触れ合わせてゆっくりと顔を離すとはるかはイタズラな笑みを浮かべていた。
「オイタはだめよ」
「じゃあ君が構ってよ」
「いいわ、家に帰って2人きりになったらね」
そう言ったタイミングでお昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。うさぎと美奈子ちゃんは顔を真っ赤にしたまま失礼しました〜……と言って教室を出て行った。
私とはるかも1番後ろの自分たちの机に座り直し前を向くと他のクラスメイトたちは私たちと目を合わせないように前を向く。
少しはしゃぎすぎたかしらと思ったけれど横に座るはるかが上機嫌に窓の外を眺めていてその顔がいつもの精悍な顔と違い少年のように可愛らしかったから私は1人微笑む。
ずっと憧れていた普通の学生生活。それをはるかが叶えてくれた。きっとこれからも、叶えてくれるのだろうと思っているとふとこちらを向いたはるかが微笑みながら口パクで好きだよ、と言ってくれた。
「おだんご頭、美奈子ちゃん」
はるかが2人を呼ぶと失礼しまーす! と言って入ってくる。ここが上級生の教室でも物怖じせずに入ってくるのはこの2人とあと亜美にまこちゃんの4人。
更には私とはるかと知り合いという珍しい下級生は愛嬌もたっぷりで私たちのクラスメイトはいつもにこにことして私たちを見ている。
「今日は亜美とまこちゃんはいないのね」
「あー、あの2人は、ちょっと……」
「どうかしたのかい?」
私がここにいない2人の名をあげるとうさぎが苦笑いを浮かべながら頬をかく。その様子にはるかが首を傾げると横にいる美奈子ちゃんがうふふ、と笑った。
「ちょーっとね、からかいすぎちゃった。今頃顔真っ赤にして屋上にいるんじゃないかしら」
反省、反省、と全く反省していなさそうな顔をしながら笑う美奈子ちゃんに2人に大事がないなら良かったと私もはるかもほっとする。
「で? 何か用でもあったのかい?」
はるかが2人にここに来た理由を問う。大体は遊びに来るだけなので理由はないのだけれど今日の2人からは何か話したい、というような雰囲気があった。
そして待ってましたと言わんばかりに2人は似たような笑みを浮かべて身を乗り出す。
「お2人は今日が何の日か知ってますか!?」
「今日?」
2人の発言に私たちは考え込む。何か特別な日だったかしら、と思っていると教室の空気が変わったように感じた。
どうしたのかしら、と思っているとはるかがあぁ、そういうこと、と呟いた。
「はるかは分かったの?」
「ん? ああ、まあね。でも多分みちるは知らないよ」
はるかにそう断言された私はなんだか少し悔しかったけれどよくよく考えてみればうさぎと美奈子ちゃんが持ってきた話題だもの、きっと私が聞いたことのないような話題なんだろうと当たりをつける。
私は2人に向かってお手上げのポーズをとると美奈子ちゃんが興奮気味に今日はポッキーの日なんです! と言った。
「みちるさん、ポッキーってお菓子は知ってます?」
「さすがにね。でも食べたことはないわ」
ふぇぇ、さすがお嬢様……と驚くうさぎに曖昧に微笑む。そんな私たちを見てはるかは面白そうに横で笑っていた。
もう、と横目ではるかを睨み付けるとはるかは肩を竦めてごめん、と呟く。
「でもどうして今日がその、ポッキーの日? なのかしら」
「ポッキーの形状って分かる?」
「ええ」
「今日の日付、ポッキーが4本並んでるように見えるだろ?」
はるかの言葉にポッキーと今日の日付を思い浮かべてなるほど、と納得する。いわゆるバレンタインデーと同じような会社の宣伝ってわけね。
「てなわけで! ここにポッキーがあります!」
「そしてポッキーの日にやることと言ったら1つ!」
美奈子ちゃんがどこに持っていたのかポッキーの箱を机の上に出し、うさぎが言葉を続ける。
「ポッキーゲームでしょ!」
美奈子ちゃんの言葉にまた何だか教室の空気が変わった、というより固まったような気がするけれど気のせいかしら。
はるかの方を見ればどうやらはるかはそのポッキーゲームというものを知っているようでにこにこと笑っていた。
視線だけではるかにどういうゲームなのか問いかけるとはるかはおもむろに美奈子ちゃんが出したポッキーの箱を開けてその中から1本取り出す。
そして私にチョコでコーティングされた方を差し出すと咥えて? と言ってきた。お行儀が悪いと思いながらもなんだか少し楽しくなってきた私は素直にはるかの手にあるポッキーを咥える。
「じゃ、そのまま食べ進めて」
「ん」
はるかに言われた通り少しずつ食べ進め始めるとはるかが反対側を咥えて同じように食べ進め始めた。一瞬、動揺したけれどポッキーゲームの趣旨を理解した私はそのまま食べ進めていく。
視界の端でうさぎと美奈子ちゃんがわっ、わっ! と動揺しているのが分かった。
「ん、」
お互いに端から食べ進めていき唇が触れ合いそうになった瞬間、はるかは器用にポッキーを折ってゆっくりと顔を離した。
そしてこれがポッキーゲームと言いながらにやりと笑う。
「ふふ、楽しかったわ」
私が感想を述べると楽しかったって……と顔を真っ赤にしながらうさぎと美奈子ちゃんが声を揃えて呟いた。周囲を見回すとクラスメイトたちも少し顔を赤らめていてなるほど教室の空気が硬かったのはそういうこと、と理解する。
「もう1回、する?」
はるかは机に頬杖をつきながらポッキーを差し出していた。
いや、あの、はるかさん! と慌てて止めようとするうさぎにはるかはにこりと笑ってじゃあおだんご頭がするかい? と問いかける。
うさぎは顔を真っ赤にしてええっとぉ、と呟くと横から美奈子ちゃんが元気よくはい! 私も私も! と声を上げる。
はるかは持っていたポッキーをうさぎの口に咥えさせる。そして反対側を咥えようと動き始めたはるかの襟元を引っ張って私の方に寄せる。
そのまま先程は触れ合わなかった唇同士を触れ合わせてゆっくりと顔を離すとはるかはイタズラな笑みを浮かべていた。
「オイタはだめよ」
「じゃあ君が構ってよ」
「いいわ、家に帰って2人きりになったらね」
そう言ったタイミングでお昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響く。うさぎと美奈子ちゃんは顔を真っ赤にしたまま失礼しました〜……と言って教室を出て行った。
私とはるかも1番後ろの自分たちの机に座り直し前を向くと他のクラスメイトたちは私たちと目を合わせないように前を向く。
少しはしゃぎすぎたかしらと思ったけれど横に座るはるかが上機嫌に窓の外を眺めていてその顔がいつもの精悍な顔と違い少年のように可愛らしかったから私は1人微笑む。
ずっと憧れていた普通の学生生活。それをはるかが叶えてくれた。きっとこれからも、叶えてくれるのだろうと思っているとふとこちらを向いたはるかが微笑みながら口パクで好きだよ、と言ってくれた。
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