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二人一緒なら

 ふと、寒さに目が覚める。時計を見ると針はまだ起きるには早すぎる時間を指していた。
 冬が近付いて朝晩の冷え込みが酷くなってきたわね、と布団を少し上に引き上げる。
 寒いのはあまり得意ではないけれど、冬ははるかが生まれた季節だから好き。
 そんな事を思いながらふふ、と笑っていると隣からくしゅん、と小さなくしゃみが聞こえた。
 横を向けばはるかが背中を向けて寝ていた。けれど、その肩は布団から剥き出しになっていて酷く寒そうだった。はるかは寝ているのだろうけれど寒いせいか無意識に肩を自分で摩っている。
 もう、私にはこんなにきっちり布団を掛けておいて自分ははみ出てるなんて、と文句を頭の中で言い連ねる。それでもはるかの優しさや愛情を感じて私は嬉しくなってしまう。
 私は布団をはるかの肩まで引き上げて後ろから暖めるようにして抱きしめた。はるかの肩にあった手を取って指を絡め、そして広いその背中に顔を埋める。
 冷たかった肩は私の熱を受けて徐々に暖まっていく。
 はるかの香りと体温に包み込んでいるはずの私が包み込まれているように感じながら私は微笑んでゆっくりと重たくなってきた瞼を閉じる。

『1人で暖まるより、私は……』

 意識が遠くなっていく中、私は心の中で言葉を呟いたけれど全て言い終わる前に夢の中へ旅立った。

    ◇◇◇

 小鳥のさえずりに意識を浮上させる。まだまだ朝も寒いけれど、夜中に目を覚ました時よりは暖かい。
 なんでかしら……? と閉じていた瞼をゆっくりと開いていく。そして私はその理由を知って嬉しくて、幸せで、自然と口角が上がった。
 くーくーと気持ちの良さそうな寝息を立てて心底安心しきった顔で寝ているはるかが眼前にいる。
 夜中、はるかを暖めるように抱きしめていたはずなのに、今は私がはるかに正面から抱きしめられていた。はるかの腕の中はとても暖かくて独りじゃないと感じることが出来る。
 それが本当に、嬉しくて、幸せで、思わず涙が溢れた。
 はるかは寝ているのにそんな私に気付いたようにさらにぎゅっと抱きしめる。まるで泣くなよ、ずっと一緒だ、と言われているようで私ははるかの胸に頬を擦り寄せてその腕の中に収まった。

「ん、……みち、る」

 名前を呼ばれて見上げるとはるかはまだ気持ち良さそうに眠っていた。夢の中でも、私はあなたと一緒にいるのね。

「ねぇ、はるか。私、もう寒くても平気よ。1人で暖まっていても、私はなんだか寒かったわ」

 寝ているはるかを起こさないように小さな声で囁く。
 時々すれ違うこともあるけれど、この思いははるかに直接言わなくてもきっと伝わるだろう。だってきっと、はるかも同じことを思っているはずだから。

『やっぱり1人で暖まるより、私は……』

 眠りに落ちる直前に心の中で呟いた言葉を、私はもう1度、今度ははるかに伝わるように心の中で呟いた。
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