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海王星

 サーキットは天王さんの初陣を目に焼き付けようとする根っからのレースファン、天王さんが目当てのフリークの子たち、そして女性レーサーとして注目を集める天王さんをやっかむ人たちで賑わっていた。
 私は少し人だかりが少ない、少し離れた位置に立ってレースを観戦する。
 スタートしたマシンたちは瞬く間に目で追うことも困難なスピードを出してサーキットを駆ける。天王さんのマシンはトップに躍り出ていた。
 いつものように風のように走る彼女を見て私は目を細める。天王さんの走りを見ている時だけは、何も考えられない。ただただ、あの人の走りに魅了される。
 自由に、何にも縛られずに走る天王さんをずっと羨ましく思っていた。自分を貫いて生きている天王さんに憧れていた。
 けれど、私は何故か今日は彼女の走りからそれらのものとは別に他の感情を感じた。
 焦燥、不安、空虚感、孤独感……そういった負の感情から抜け出そうと、逃げ出そうと必死になっているように見えた。
 それに困惑しているうちに天王さんのマシンはトップをキープしたままチェッカーフラッグを受けた。
 マシンから降りてヘルメットを取った彼女の瞳は、まるで……。
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