海王星
最近、よく夢を見る。
どんな夢だったかは覚えていないけれど、その夢を見た時は体が酷く怠くて頭もぼんやりとする。そんな状態でヴァイオリンを弾いても絵を描いても身に入らないので精神的にも参る。
そんな悪循環に陥った私は気分転換に散歩に出かけることにした。
いつも通らない道を歩いて少し遠出をしてみた。太陽の熱で火照った体に風が心地良い。木陰で瞳を閉じて風を感じていると風たちが何かに誘われるように流れていくように感じる。
「何かしら……」
少し不自然な風の動きに誘われて私は再び歩を進める。するとどこかの学校に辿り着いた。風は校庭の方へ流れていって、ある人の周りに集まった。
私はその人を見て一瞬息を飲んだ。すらりとした四肢に太陽の光を反射する蜂蜜色の髪。中性的なその顔は見る人誰をも魅了するだろう人物だった。
その人はスタートの合図がかかると走り出した。他にも一緒に走っている人がいたけれど、私の視界にはその人しか映っていなかった。
風を纏い、従えるその姿はまるで風の王だ。
走り終えたその人は息を乱すことも汗を流すこともなくただ風を纏って立っていた。
「天王さーん!」
「はるか先輩ー!」
校舎側の人だかりから黄色い歓声が聞こえてハッとする。
はるか、と呼ばれたその人は人だかりに向かって曖昧に笑うとジャージを羽織って校庭から去って行った。
「天王……はるか……」
私は去って行った背中を見ながらその人の名を呟いた。
どんな夢だったかは覚えていないけれど、その夢を見た時は体が酷く怠くて頭もぼんやりとする。そんな状態でヴァイオリンを弾いても絵を描いても身に入らないので精神的にも参る。
そんな悪循環に陥った私は気分転換に散歩に出かけることにした。
いつも通らない道を歩いて少し遠出をしてみた。太陽の熱で火照った体に風が心地良い。木陰で瞳を閉じて風を感じていると風たちが何かに誘われるように流れていくように感じる。
「何かしら……」
少し不自然な風の動きに誘われて私は再び歩を進める。するとどこかの学校に辿り着いた。風は校庭の方へ流れていって、ある人の周りに集まった。
私はその人を見て一瞬息を飲んだ。すらりとした四肢に太陽の光を反射する蜂蜜色の髪。中性的なその顔は見る人誰をも魅了するだろう人物だった。
その人はスタートの合図がかかると走り出した。他にも一緒に走っている人がいたけれど、私の視界にはその人しか映っていなかった。
風を纏い、従えるその姿はまるで風の王だ。
走り終えたその人は息を乱すことも汗を流すこともなくただ風を纏って立っていた。
「天王さーん!」
「はるか先輩ー!」
校舎側の人だかりから黄色い歓声が聞こえてハッとする。
はるか、と呼ばれたその人は人だかりに向かって曖昧に笑うとジャージを羽織って校庭から去って行った。
「天王……はるか……」
私は去って行った背中を見ながらその人の名を呟いた。
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