このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

clothes iron

 はるかは話し終えると再びカップに口をつけた。空になったカップをテーブルに置くとソファに身を沈ませて天井を仰ぎみながらその日からなんだよなー、と声を漏らす。

「その後すぐに一緒に暮らした方が色々便利だよなってなって暮らし始めて、アイロンがけはみちるがするようになったんだよ」
「理由はわからず、ですか」
「うん。みちる、手を大事にしなきゃいけないだろ? だから自分でやるって言っても何かしら理由付けてさせてくれなくてさ」

 なんでアイロンがけしたいのか聞いても教えてくれないしお手上げだよ、と呟くはるかにそうですか、と返す。
 やっぱりそろそろ自分でやった方がいいよなー、でもなー、と少し渋った様子を見せるはるかに眉をあげる。

「どうしたんです? ……そういえば、先程の話の中であなた『あ』と呟きましたね。何かあるんです?」

 気になった所を問い詰めてみればどうやら当たりのようではるかは苦笑いをすると訳をを話し始めた。

「いやー、みちるのアイロンがけがさ、クリーニング出したみたいにすごい綺麗で着やすかったっていうか、こう、背筋が伸びるんだよな。それでそのまま毎回やって欲しいって零しそうになって誤魔化した」

 結局毎回やってもらう事になっちゃったんだけどさ、というはるかに私は少しおかしくなって笑ってしまった。

「そうですか。まあ、みちるが好んでやっているのならとやかく言うのは野暮というものですね」
「んー、たまには自分でやるさ。そうだ、せつなもみちるにアイロンがけしてもらったら? 僕の気持ち分かると思うよ」

 はるかの提案に私は考えておきます、と返して時計を見ると針は天辺を指していた。
 そろそろ私は寝ますね、と腰をあげるとちょうどみちるが戻ってきた。

「寝るの?」
「ええ。明日も朝が早いですから。みちるは?」
「私は1杯飲んでから休むわ」
「そうですか。ではおふたり人とも、おやすみなさい」

 はるかとその隣に立ったみちるに声をかけると2人は微笑んでおやすみ、と返してくれた。
 部屋を出る直前に視線だけを2人に戻せばみちるの腰にはるかが手を回していた。せめて私が部屋を出てからにして欲しいわ、と思いながら後ろ手で扉を閉めた。
3/4ページ
スキ