一途な恋人繫ぎ(フロイド✕女監督生/短編)
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彼は、本当によく飽きる。
気分のムラも激しく、ご機嫌だと思えば途端に不機嫌まっしぐらなことになるのもしょっちゅうだ。
「もー飽きたあ」
というのは、もはや口癖なのではないかとユウは思っている。
今もそう。
先ほどまで楽しそうに魔法理論を解き明かしていたのに、今は空をぼうっとつまらなそうに見上げているのだ。
図書館で復習をしていたユウを引っ張って、中庭に連れてきてまで見せたかったという地面に描かれた理論とやらは半分消えている。
ベンチに座るユウは、地べたに両足を伸ばしているフロイドに声を掛けることにした。
「フロイド先輩。魔法理論はどうしたんですか? 真理を閃いたかもって言ってませんでした?」
「んー……」
フロイドは億劫そうにユウを見る。
そして、口を曲げてしまう。
「飽きたー」
お得意の言葉に、ユウは苦笑するしかない。
「飽きちゃいましたか」
「そー。つまんねぇもん」
むうと、眉を寄せる彼が可愛いと思ってしまうのは、恋人の欲目だろうか。
真剣に地面と向き合う横顔にも、実は魅入ってしまっていた。
だって、あんなにも真面目なフロイドは貴重なのだ。
堪能したいじゃないか。
でもやっぱり、不機嫌になる彼も可愛い。
ユウはニヤニヤしてしまうのを、ぐっと堪えた。
「じゃあ、何かやりたいことありますか?」
「小エビちゃん、してくれんのっ」
途端に目を輝かせるフロイド、可愛いが過ぎる。
ユウは身悶えそうになるのを、耐えた。耐え抜いた。
フロイドはすっと素早く立ち上がる。
そして、ユウに目線を合わせる為にしゃがんだ。
「小エビちゃん、してくれんだあ」
上機嫌ににこにこするフロイド。
つられるように、ユウも頬を緩ませるが。
ちょっと警戒心が湧き起こる。
フロイドは何をさせる気なのだろうか、と。
今は、フロイドが醸し出していた不機嫌オーラにより、周りにひとはいなくなっている状態だ。
可愛い恋人の願いだ。
ある程度は叶えたい。
しかし、ユウも年頃の女の子。
あまり過激なのは、遠慮したい。
笑みが引きつりそうになる頃、フロイドがユウの右隣に座った。
「ねえ、小エビちゃん」
甘えている時のフロイドが出す声。
この声は、恋人の特権だ。
だから、ユウは微笑んだ。
自然と出てしまうのは、恋人に向ける笑み。
「なんですか、フロイド先輩」
「手、握って?」
言われたままに、フロイドの左手を握るユウ。
そうしたら、フロイドは「ちがーう!」と怒った。
むううと子供みたいにむくれる。
ああ、可愛いなあとユウは和んでしまった。
そんなユウに気づいていないのか、フロイドは彼女の手を包み込む。
「こーいうのも、好きだけど!」
と言った後に、指を絡ませてくる。
指と指が合わさり、手のひらが触れ合う。
え、これって……。
理解したユウはフロイドを見上げた。
彼は微笑んでいる。
でも、耳が赤い。
「これ、オレがしたいのは!」
「は、はい……」
恋人繋ぎだ。
フロイドとは身長差もあり、なかなか実現しなかった恋人繋ぎを、今している。
体温の低いフロイドの手なのに、なんだか凄く熱い気がしてしまう。
トクトクと、鼓動が早くなる。
どうしよう、嬉しい。
どうしよう。
「離したくない」
心の声が、フロイドの言葉として聞こえた。
驚いていると、手を握る力が強くなる。
「オレさあ」
と、何気ない様子でフロイドが言う。
「小エビちゃんと、ずっと一緒がいい」
ユウはぽかんとした表情を浮かべたまま、すぐに俯いた。
フロイドの言葉が真剣で、眼差しも熱くて、そして。
本当に自分を好きなんだと分かったから。
「……私も、一緒がいい、です」
「ん」
短い返事。
だけど、じゅうぶんだった。
彼は、直ぐに飽きる。
でも。
私に対しては一途なようです。
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