可愛い貴方(ラギー✕女監督生/短編)
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「アンタ、オレは高いッスよー」
そう言って彼は笑った。
夕日に照らされたその笑顔は皮肉げで、そして寂しそうに見えた。
それが始まり。
彼を知りたいと思った、小さな一歩だ。
嫌がるグリムを連れて、学園外れの洗濯場に来た。
ここは魔法のある世界。
でも、ブロットが溜まるという点から、何から何まで魔法を使うわけではない。
ナイトレイブンカレッジの生徒も、洗濯ぐらい自力でするのである。
そして、この時間に彼が洗濯場にいるのは調査済みだった。
「いたいた。ラギー先輩!」
「うー、嫌なんだゾ! 洗われるのは!」
騒ぎに騒ぐグリムを抱きかかえ、背中を向けてしゃがむラギーに声を掛けた。
「……相変わらず、賑やかなことで」
振り向きもせずに、ラギーは言う。多分に呆れを含んだ声で。
ユウはあははとラギーの態度に気にした風もなく、楽しそうに笑う。
「うちの子可愛いでしょう?」
「そんな可愛い子を、洗濯場で洗うんスか?」
「まさか! リボンが汚れたから、洗いに来たんですって」
グリムはぶすうと、不満げだ。
「オレ様の匂いがいい感じに馴染んでんだ! 洗うなんて嫌なんだゾ!」
「はいはい」
ユウはグリムの文句を聞き流し、するするとリボンを外す。
「ぶなぁ!」
「はい、グリムは終わるまで遊んでて良いよー」
「覚えてろよー!」
リボンを取られ半泣きのグリムは、てててと走って行った。
きっとエースかデュースのもとに向かったのだろう。
そしてユウは、空いている桶の前にしゃがんだ。
もちろん、ラギーの隣である。
というか、この時間帯はラギー以外来ないのも調査済みである。
「お隣お邪魔しまーす」
「……」
返ってきたのは無言だが、気にしない気にしない。
なんたって毎日付きまとっているのだ。
扱いがぞんざいになったくらいでは、へこたれない。
桶に水を溜め、常備されている洗剤を手に取る。鼻歌だって出ちゃう。
「ふんふんふーん」
汚れたグリムのリボンはあっという間に泡だらけ。
手洗いなんてしたことなかったけど、何度か経験する内に慣れてきた。
「……楽しそうッスね」
「楽しいですよー。ラギー先輩と一緒に居られますから」
「……」
渾身の決め顔で言ったが、ラギーは顔色変えることなく無言だ。たぶん、顔色変わってない。何故か背中しか見えない。移動したの? わざわざ、桶ごと。
だが、ユウは気にしない。塩対応は慣れている。
「ラギー先輩、こっち見てくださいよー」
「嫌ッス」
「うわあ、ひどーい!」
ユウの批難も、ラギーはスルーしている。
日に日に態度が冷たくなっている気がするが、めげないめげない。
ユウは泡だらけのリボンを丁寧に濯ぎ、水気を取る為に絞った。
そして、何とはなく口を開く。
「ラギー先輩の時間、今はいくらで買えますかね」
あれは、ひと月前。
たまたまラギーと中庭で会った時のこと。
ユウは騒ぎを起こし逃げたグリムを探していた。
ラギーは、たぶんレオナの言いつけか何かで購買辺りに行く途中だったのだろう。
時間は夕やけが鮮やかな頃。
ユウは、ラギーにグリム探索の手伝いを頼んだ。必死だった。探し回ったので、へとへとで思考も鈍っていた。
そんなユウに、ラギーは笑ってみせた。
「大変ッスね。でもね……覚えておきな」
耳元で囁かれ、背中がぞくりとした。
すぐに離れて、笑顔のまま。
「アンタ、オレは高いッスよー」
シシシと笑う彼に吸い込まれていくのがわかった。
気持ちが、感情の全てがラギーだけを感じているのが。
あの日から、ユウは毎日のようにラギーに会いに行くようになった。
訪れたのは、長い沈黙。
ユウとしては、軽い気持ちでの発言だったので気にすることなくリボンを広げて水気を払う。
しかし。
気がつけば、桶がひっくり返り、洗濯場の天井が見えていた。
「は……?」
間抜けな声がもれる。
そして、天井よりも視界いっぱいのラギーが意味がわからない。
もしや、今押し倒されている?
理解が追いついた瞬間、呼吸が苦しくなった。
乱暴に口づけられたのだ。誰に?
それは、
「らぎ、せん、ぱ」
「黙って」
何とか言葉を発してみたが、すぐさま吸い込まれる。
深い深い口づけが、繰り返し繰り返し息を奪っていく。
「はっ、んっ」
息継ぎをしたいのに、ラギーは執拗でそんな暇はない。
なのに、怖さはない。嫌悪も。
あるのは、痺れるような甘さと石鹸の匂い。
いったいどれほどの時間が過ぎたのか。一瞬なのか、永遠なのか。
ようやく呼吸が楽になった時、切れ切れの息のなか見えたラギーの顔は、ひどく歪んでいた。
「嫌いになったスか?」
何とか呼吸しながら、ユウは首を横に振った。
「オレは」
ラギーは顔を歪ませて、またユウに口づけた。軽いキスを。
「アンタになら、時間をやってもいい」
「え……?」
「ユウくんになら、全部あげるッス」
突然の言葉に、ユウは混乱した。
何せ今まで塩対応だったのだ。
いつの間に、そこまで好きになってもらえていたのか。
そして気づく。
ラギーの顔は真っ赤だ。
あの日の夕やけのように。
「ラギー、せんぱいは、私が好き……」
「そうッスよ!」
顔を反らして、赤い頬のままやけくそ気味に言うラギー。
「毎日毎日、何が良いのか。オレのそばにいて! でも、楽しそうにしてるアンタ見てたら!」
そこで、ユウを見る。
「いつの間にか好きになってたッスよ!」
気がつけばユウは、ラギーに抱きついていた。
押し倒された状態からの抱擁なので、二人して倒れ込む。
「いでっ!」
「あははは!」
額を床にぶつけたラギーと、笑ってしまうユウ。
恨めしそうに見てくる彼に、ユウは上体を起こし、ラギーの頬に口づけた。
目を見開くラギー。
「私も好きですよ。ラギー先輩」
「……知ってるッス」
照れたのか眉間に眉を寄せたラギーの表情には、もう寂しさなど微塵も感じなくて。
ユウは、愛しさが溢れてくるのを感じた。
「片付けしたら」
そっとラギーの耳に口を寄せる。
「また、いちゃつきましょう?」
火がついたように赤くなるラギー。
なぜいつも塩対応だったのかがわかった。
こんなにもわかりやすい反応をしてしまうのだ。
見られたくなかったのだろう。
男のプライドだなあ。
しかも、この様子を見る限りユウ限定のようだし。
ユウは幸福に包まれて、可愛らしいラギーを見るのだった。
そう言って彼は笑った。
夕日に照らされたその笑顔は皮肉げで、そして寂しそうに見えた。
それが始まり。
彼を知りたいと思った、小さな一歩だ。
嫌がるグリムを連れて、学園外れの洗濯場に来た。
ここは魔法のある世界。
でも、ブロットが溜まるという点から、何から何まで魔法を使うわけではない。
ナイトレイブンカレッジの生徒も、洗濯ぐらい自力でするのである。
そして、この時間に彼が洗濯場にいるのは調査済みだった。
「いたいた。ラギー先輩!」
「うー、嫌なんだゾ! 洗われるのは!」
騒ぎに騒ぐグリムを抱きかかえ、背中を向けてしゃがむラギーに声を掛けた。
「……相変わらず、賑やかなことで」
振り向きもせずに、ラギーは言う。多分に呆れを含んだ声で。
ユウはあははとラギーの態度に気にした風もなく、楽しそうに笑う。
「うちの子可愛いでしょう?」
「そんな可愛い子を、洗濯場で洗うんスか?」
「まさか! リボンが汚れたから、洗いに来たんですって」
グリムはぶすうと、不満げだ。
「オレ様の匂いがいい感じに馴染んでんだ! 洗うなんて嫌なんだゾ!」
「はいはい」
ユウはグリムの文句を聞き流し、するするとリボンを外す。
「ぶなぁ!」
「はい、グリムは終わるまで遊んでて良いよー」
「覚えてろよー!」
リボンを取られ半泣きのグリムは、てててと走って行った。
きっとエースかデュースのもとに向かったのだろう。
そしてユウは、空いている桶の前にしゃがんだ。
もちろん、ラギーの隣である。
というか、この時間帯はラギー以外来ないのも調査済みである。
「お隣お邪魔しまーす」
「……」
返ってきたのは無言だが、気にしない気にしない。
なんたって毎日付きまとっているのだ。
扱いがぞんざいになったくらいでは、へこたれない。
桶に水を溜め、常備されている洗剤を手に取る。鼻歌だって出ちゃう。
「ふんふんふーん」
汚れたグリムのリボンはあっという間に泡だらけ。
手洗いなんてしたことなかったけど、何度か経験する内に慣れてきた。
「……楽しそうッスね」
「楽しいですよー。ラギー先輩と一緒に居られますから」
「……」
渾身の決め顔で言ったが、ラギーは顔色変えることなく無言だ。たぶん、顔色変わってない。何故か背中しか見えない。移動したの? わざわざ、桶ごと。
だが、ユウは気にしない。塩対応は慣れている。
「ラギー先輩、こっち見てくださいよー」
「嫌ッス」
「うわあ、ひどーい!」
ユウの批難も、ラギーはスルーしている。
日に日に態度が冷たくなっている気がするが、めげないめげない。
ユウは泡だらけのリボンを丁寧に濯ぎ、水気を取る為に絞った。
そして、何とはなく口を開く。
「ラギー先輩の時間、今はいくらで買えますかね」
あれは、ひと月前。
たまたまラギーと中庭で会った時のこと。
ユウは騒ぎを起こし逃げたグリムを探していた。
ラギーは、たぶんレオナの言いつけか何かで購買辺りに行く途中だったのだろう。
時間は夕やけが鮮やかな頃。
ユウは、ラギーにグリム探索の手伝いを頼んだ。必死だった。探し回ったので、へとへとで思考も鈍っていた。
そんなユウに、ラギーは笑ってみせた。
「大変ッスね。でもね……覚えておきな」
耳元で囁かれ、背中がぞくりとした。
すぐに離れて、笑顔のまま。
「アンタ、オレは高いッスよー」
シシシと笑う彼に吸い込まれていくのがわかった。
気持ちが、感情の全てがラギーだけを感じているのが。
あの日から、ユウは毎日のようにラギーに会いに行くようになった。
訪れたのは、長い沈黙。
ユウとしては、軽い気持ちでの発言だったので気にすることなくリボンを広げて水気を払う。
しかし。
気がつけば、桶がひっくり返り、洗濯場の天井が見えていた。
「は……?」
間抜けな声がもれる。
そして、天井よりも視界いっぱいのラギーが意味がわからない。
もしや、今押し倒されている?
理解が追いついた瞬間、呼吸が苦しくなった。
乱暴に口づけられたのだ。誰に?
それは、
「らぎ、せん、ぱ」
「黙って」
何とか言葉を発してみたが、すぐさま吸い込まれる。
深い深い口づけが、繰り返し繰り返し息を奪っていく。
「はっ、んっ」
息継ぎをしたいのに、ラギーは執拗でそんな暇はない。
なのに、怖さはない。嫌悪も。
あるのは、痺れるような甘さと石鹸の匂い。
いったいどれほどの時間が過ぎたのか。一瞬なのか、永遠なのか。
ようやく呼吸が楽になった時、切れ切れの息のなか見えたラギーの顔は、ひどく歪んでいた。
「嫌いになったスか?」
何とか呼吸しながら、ユウは首を横に振った。
「オレは」
ラギーは顔を歪ませて、またユウに口づけた。軽いキスを。
「アンタになら、時間をやってもいい」
「え……?」
「ユウくんになら、全部あげるッス」
突然の言葉に、ユウは混乱した。
何せ今まで塩対応だったのだ。
いつの間に、そこまで好きになってもらえていたのか。
そして気づく。
ラギーの顔は真っ赤だ。
あの日の夕やけのように。
「ラギー、せんぱいは、私が好き……」
「そうッスよ!」
顔を反らして、赤い頬のままやけくそ気味に言うラギー。
「毎日毎日、何が良いのか。オレのそばにいて! でも、楽しそうにしてるアンタ見てたら!」
そこで、ユウを見る。
「いつの間にか好きになってたッスよ!」
気がつけばユウは、ラギーに抱きついていた。
押し倒された状態からの抱擁なので、二人して倒れ込む。
「いでっ!」
「あははは!」
額を床にぶつけたラギーと、笑ってしまうユウ。
恨めしそうに見てくる彼に、ユウは上体を起こし、ラギーの頬に口づけた。
目を見開くラギー。
「私も好きですよ。ラギー先輩」
「……知ってるッス」
照れたのか眉間に眉を寄せたラギーの表情には、もう寂しさなど微塵も感じなくて。
ユウは、愛しさが溢れてくるのを感じた。
「片付けしたら」
そっとラギーの耳に口を寄せる。
「また、いちゃつきましょう?」
火がついたように赤くなるラギー。
なぜいつも塩対応だったのかがわかった。
こんなにもわかりやすい反応をしてしまうのだ。
見られたくなかったのだろう。
男のプライドだなあ。
しかも、この様子を見る限りユウ限定のようだし。
ユウは幸福に包まれて、可愛らしいラギーを見るのだった。
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