最愛の消失(ラギー✕女監督生/連載/完結)
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朝日がカーテンから差し、ユウは目を覚ました。
今日も一日が始まる。
ぐずるグリムを起こし、朝食を済ませ。
制服に身を包んだ。
「子分! オレ様眠いんだゾ!」
「はいはい。グリムちゃま頑張れー」
「ぶなあー!」
暴れるグリムを宥め、鞄を手にオンボロ寮を出る。
いつも通りの日常が、そこにはあった。
ラギーは目を開け、タブレットに手を伸ばす。
更新されないメッセージ欄を見て、ため息をついた。
ごろんと仰向けになり、タブレットに文字を打つ。
『おはよう。いつもの場所で待ってーー』
そこまで入力してから、全部消去した。
タブレットを放り投げ、目を閉じる。
「女々しいったらないよな……」
届いても通じないメッセージ。
何故なら、今の彼女には理解できないからだ。
眉間にシワを寄せ、ラギーは髪をくしゃくしゃとかいた。
そして身を起こすと、ベッドから降りる。
「さーて。気持ち切り替えて、レオナさんを起こしに行きますかねえ」
日常は等しく降り注ぐのだ。
いつも、いつだって、容赦なく。
通学路、ユウは一人だ。グリムは購買に行くと言い別行動となった。
「うーん……」
歩きながら唸るユウに、声がかかる。
「あら、朝から辛気くさいわね」
「あ、ヴィル先輩! おはようございます!」
「おはよう」
優雅な足取りのヴィルが、隣に並ぶ。
今日も輝く美貌だ。
ユウの顔を見てから、眉をひそめる。
「顔色が冴えないわ。何か悩み事かしら?」
「あー……」
ユウは歯切れ悪く、苦笑した。
少し考える。
「なに? 深刻な話?」
「いえ、そういうわけではなく」
「なあに、煮え切れないわね」
ヴィルが心配してくれているのはわかったので、ユウは困りきった顔をした。
「あの、ラギー先輩なんですけど」
「ラギーって、ラギー・ブッチ?」
意外な名前を聞いたというヴィルの表情に、ユウも曖昧に笑うしかない。
そう、ユウは先日のラギーが見せた態度に引っかかりを覚えていたのだ。
「アンタたち、そんなに親しかったかしら」
「そう、なんですよね」
割と関わることはあっても、親しいかと言われたら悩んでしまう。
ラギーは飄々としていて、それでいていつもレオナに振り回されている。そんなイメージなのだ。
個人的に話したことは数えるほど、だったはず。
しかし、自信もない。
何故ならば、ユウには空白の時間があるのだから。
「ヴィル先輩。私、忘れちゃったひと月に、ラギー先輩に何かしちゃってました?」
ユウの記憶消失は繊細な話題なので、誰も触れない。
現にヴィルは少し動揺を見せた。
「……そうねえ。アタシが知る限り、アンタたちが仲良くしてた覚えはないわね。アンタのオトモダチはなんて言ってるの?」
「エースたちは、別段揉めたりはしていないって」
「アタシより近い二人が言ってるのなら、大丈夫じゃないかしら」
「はい……」
だが、気になる。
皆が隠し事している様子はないし、ジャックにも聞いた。
ラギーとユウには、何もなかったと皆が言う。
ユウも心当たりはない。
なのに、心がざわめく。
それは何に対して?
「まあ、悩み過ぎるのはストレスになるわ。程々になさい」
「そう、ですね」
ユウはため息をついた。
今日の補習も終わり、ユウは購買に向かった。
ペンのインクが切れたのだ。
購買に寄ると知ったグリムは、珍しく付き合ってくれた。ずっと寝てたけど。
「なあなあ、駄菓子食べたいんだゾ!」
「どんなのがいい?」
「みょーんって、伸びるヤツ!」
「ああ、水飴ね」
話しながら購買に来たら、ジャックがいた。
真剣な顔でノートを見ている。
「ジャックも来てたんだ」
「ん、ああ。お前か。ノートが必要になってな」
「そっか、私はインク」
「オレ様は、水飴なんだゾ!」
胸を張るグリムに呆れた顔を見せたジャックだが、サムに代金を支払った後にこう言った。
「お前、もう森には行ってないのか?」
「え?」
「何だソレ! 初耳なんだゾ!」
ジャックの言葉の意味がわからず、首を傾げる。
森? 私、森に入ったことないけれど。と。
きょとんとしたユウに、ジャックは何かに気がついたようで。バツの悪そうな顔をした。
「あー、いや。俺の勘違いだ。気にするな」
「え、うん……」
「まあ、大変だろうが。頑張れよ」
今度は補習の事を言っているのだとわかった。
「うん。ジャックも部活頑張ってね」
「おう!」
不可解な点はあったが、ユウはジャックと別れた。
オンボロ寮に帰るべく購買から出ると、水飴を持ったグリムが声を上げた。
「あ!」
「グリム、どうかした?」
「なあ、オレ様も気になることがあったんだゾ!」
「なに?」
聞き返すユウに、グリムは水飴を伸ばしながら言う。
「お前、もういい匂い付けないのか?」
「え?」
なんのことかわからず、ユウは目を瞬かせた。
水飴に夢中になりながら、グリムは話す。
「お前、香水っての付けてたじゃねーか。最近はつけてないけど」
「は? 香水?」
香水って、あのオシャレアイテム?
ユウは、香水を持ったことはない。
「私、知らないけど……」
「なに、言ってんだ。鏡の下に仕舞ってあるんだゾ」
不思議そうにするグリムに、ユウは混乱した。
だが、落ち着いて考えてみた。
消えたひと月に、買ったのかもしれないと。
ユウだって女の子だ。お小遣いを貯めて買ったのだ。たぶん。
「あれ付けると、オレ様は留守番だからつまんないけどな!」
「え、それはどういう……?」
詳しく聞こうとしたが、グリムは水飴に集中していて答えてくれなかった。
買ったの失敗したなあと思い校舎の窓を見る。
すると、ラギーが歩いているのが見えた。
『お前、もう森には行ってないのか?』
ふと、先ほどのジャックの言葉が思い出される。
ラギーが入って行ったのは、森だったからだ。
心がざわつく。
波紋が広がるように、ユウの感情も揺らめいた。
今日も一日が始まる。
ぐずるグリムを起こし、朝食を済ませ。
制服に身を包んだ。
「子分! オレ様眠いんだゾ!」
「はいはい。グリムちゃま頑張れー」
「ぶなあー!」
暴れるグリムを宥め、鞄を手にオンボロ寮を出る。
いつも通りの日常が、そこにはあった。
ラギーは目を開け、タブレットに手を伸ばす。
更新されないメッセージ欄を見て、ため息をついた。
ごろんと仰向けになり、タブレットに文字を打つ。
『おはよう。いつもの場所で待ってーー』
そこまで入力してから、全部消去した。
タブレットを放り投げ、目を閉じる。
「女々しいったらないよな……」
届いても通じないメッセージ。
何故なら、今の彼女には理解できないからだ。
眉間にシワを寄せ、ラギーは髪をくしゃくしゃとかいた。
そして身を起こすと、ベッドから降りる。
「さーて。気持ち切り替えて、レオナさんを起こしに行きますかねえ」
日常は等しく降り注ぐのだ。
いつも、いつだって、容赦なく。
通学路、ユウは一人だ。グリムは購買に行くと言い別行動となった。
「うーん……」
歩きながら唸るユウに、声がかかる。
「あら、朝から辛気くさいわね」
「あ、ヴィル先輩! おはようございます!」
「おはよう」
優雅な足取りのヴィルが、隣に並ぶ。
今日も輝く美貌だ。
ユウの顔を見てから、眉をひそめる。
「顔色が冴えないわ。何か悩み事かしら?」
「あー……」
ユウは歯切れ悪く、苦笑した。
少し考える。
「なに? 深刻な話?」
「いえ、そういうわけではなく」
「なあに、煮え切れないわね」
ヴィルが心配してくれているのはわかったので、ユウは困りきった顔をした。
「あの、ラギー先輩なんですけど」
「ラギーって、ラギー・ブッチ?」
意外な名前を聞いたというヴィルの表情に、ユウも曖昧に笑うしかない。
そう、ユウは先日のラギーが見せた態度に引っかかりを覚えていたのだ。
「アンタたち、そんなに親しかったかしら」
「そう、なんですよね」
割と関わることはあっても、親しいかと言われたら悩んでしまう。
ラギーは飄々としていて、それでいていつもレオナに振り回されている。そんなイメージなのだ。
個人的に話したことは数えるほど、だったはず。
しかし、自信もない。
何故ならば、ユウには空白の時間があるのだから。
「ヴィル先輩。私、忘れちゃったひと月に、ラギー先輩に何かしちゃってました?」
ユウの記憶消失は繊細な話題なので、誰も触れない。
現にヴィルは少し動揺を見せた。
「……そうねえ。アタシが知る限り、アンタたちが仲良くしてた覚えはないわね。アンタのオトモダチはなんて言ってるの?」
「エースたちは、別段揉めたりはしていないって」
「アタシより近い二人が言ってるのなら、大丈夫じゃないかしら」
「はい……」
だが、気になる。
皆が隠し事している様子はないし、ジャックにも聞いた。
ラギーとユウには、何もなかったと皆が言う。
ユウも心当たりはない。
なのに、心がざわめく。
それは何に対して?
「まあ、悩み過ぎるのはストレスになるわ。程々になさい」
「そう、ですね」
ユウはため息をついた。
今日の補習も終わり、ユウは購買に向かった。
ペンのインクが切れたのだ。
購買に寄ると知ったグリムは、珍しく付き合ってくれた。ずっと寝てたけど。
「なあなあ、駄菓子食べたいんだゾ!」
「どんなのがいい?」
「みょーんって、伸びるヤツ!」
「ああ、水飴ね」
話しながら購買に来たら、ジャックがいた。
真剣な顔でノートを見ている。
「ジャックも来てたんだ」
「ん、ああ。お前か。ノートが必要になってな」
「そっか、私はインク」
「オレ様は、水飴なんだゾ!」
胸を張るグリムに呆れた顔を見せたジャックだが、サムに代金を支払った後にこう言った。
「お前、もう森には行ってないのか?」
「え?」
「何だソレ! 初耳なんだゾ!」
ジャックの言葉の意味がわからず、首を傾げる。
森? 私、森に入ったことないけれど。と。
きょとんとしたユウに、ジャックは何かに気がついたようで。バツの悪そうな顔をした。
「あー、いや。俺の勘違いだ。気にするな」
「え、うん……」
「まあ、大変だろうが。頑張れよ」
今度は補習の事を言っているのだとわかった。
「うん。ジャックも部活頑張ってね」
「おう!」
不可解な点はあったが、ユウはジャックと別れた。
オンボロ寮に帰るべく購買から出ると、水飴を持ったグリムが声を上げた。
「あ!」
「グリム、どうかした?」
「なあ、オレ様も気になることがあったんだゾ!」
「なに?」
聞き返すユウに、グリムは水飴を伸ばしながら言う。
「お前、もういい匂い付けないのか?」
「え?」
なんのことかわからず、ユウは目を瞬かせた。
水飴に夢中になりながら、グリムは話す。
「お前、香水っての付けてたじゃねーか。最近はつけてないけど」
「は? 香水?」
香水って、あのオシャレアイテム?
ユウは、香水を持ったことはない。
「私、知らないけど……」
「なに、言ってんだ。鏡の下に仕舞ってあるんだゾ」
不思議そうにするグリムに、ユウは混乱した。
だが、落ち着いて考えてみた。
消えたひと月に、買ったのかもしれないと。
ユウだって女の子だ。お小遣いを貯めて買ったのだ。たぶん。
「あれ付けると、オレ様は留守番だからつまんないけどな!」
「え、それはどういう……?」
詳しく聞こうとしたが、グリムは水飴に集中していて答えてくれなかった。
買ったの失敗したなあと思い校舎の窓を見る。
すると、ラギーが歩いているのが見えた。
『お前、もう森には行ってないのか?』
ふと、先ほどのジャックの言葉が思い出される。
ラギーが入って行ったのは、森だったからだ。
心がざわつく。
波紋が広がるように、ユウの感情も揺らめいた。