卓上のボールペンでささっと小細工。
「これで……くまさん!」
「おおー!」
「おお、熊だ!」
どうだ!という気持ちが勢いをつけて「くまさん!」と言ってしまった恥ずかしさこれ如何に。
なんとか折れたくま……は、顔だけのもので、低クオリティながら目と鼻と口を書き込むことで完成したそれを女の子に手渡すとにこにこ喜んでくれる。
その手には他にやはり顔だけの犬と猫がいて、鹿やふくろう、狼はさすがに調べないと折り方がわからなかった。メジャーなものなら得意満面で折れたというのに。チョイスのレベルが高かった。負けた。
「すごいな! あっという間に折ってしまった」
「しかも折り方とか見なかったよね。覚えてるの?」
「簡単なものなら……」
「えーすごぉい」
「すごい!」
尻窄みになる私に二人は手放しで褒めてくれる。恥ずかしいのに番台に座っているから逃げ場がなく、どうしようもなくなって俯いた。
身内以外の人前で折り紙を折るなんて、いつぶりだろう──
「こんなの本当に大したこと……まったくすごいことじゃ」
謙虚すぎるのも良くないとはわかりながらも、日本人のサガでああじゃないこうじゃないと否定の言葉ばかり出てくる。
でも。
だって。
こんなの。
少し覚えればこんなの誰にだってすぐ折れる。すごい人は立体に折れるし。顔だけじゃなくて体も作れて、目や鼻を書き込まなくたってそれだとわかるように作れるし。それと比べたらこんなのとても簡単だ。
こんな。
これくらい。
折り紙なんて。
「折り紙なんて、子供っぽい」
口から出た言葉に自分でぎくりとする。
喉の奥がぐうっと苦しくなって、それを悟られたくなくて何か言わなければと顔を上げる、と。
青い瞳が真っ直ぐこちらを見ていた。
まるで射抜かれるような瞳に今度はぞくりとする。
「折り紙が好きなんじゃないのか」
「え……」
「周りが気にならないくらい夢中になれるものが、私にもあるから。でも、どうしてそんなことを言うんだ」
ひたと私を見る青い瞳。
「折り鶴もきれいだけど、私は折り紙をしている横顔もきれいだと思った。 折り紙が大好きだって目が言っていた」
気付かぬうちに握りしめていた手に触れられる。開くと折り鶴があって、くしゃくしゃだった。
「そんな風に言ってしまったら、折り紙を大切にしてきた気持ちに傷がついてしまう。好きなものを大切にするのは周りの人じゃなくて、自分自身だろう」
なんて芯のある子だろう、と思った。
色彩ではなくて、この子の内面の美しさが出ているから、この間近に迫る青い瞳が綺麗なんだって。私はそのことにようやく気付いた。
言葉もなく見返す私を見て、少女の瞳がふ、と笑う。
「俯いてばかりいたら、相手がどう思っているかなんてわからないぞ」
『おばあちゃんなら、こんなに綺麗に折れるんだぞって、自慢しちゃうけどな』
思い出されるのはしわくちゃの笑顔。
彼女の言葉は、私の心にかけられた鎖を確かに解いてくれた。
継承