お題短編小説

【今回のお題】

・百合・ハワイ
・ミラーボール・シャウエッセン


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はぁ…。
深くため息をつく私は、今日ハワイにやって来た。
ハワイに来たならもっとテンション上がるだろって?
上がるかボケ。

私は昨日まで付き合ってた彼氏と大喧嘩をして、その際別れてしまった。
でも旅行に行く約束をしていてチケットがもったいないからと私は1人でもハワイにやって来たというわけだ。

元カレの事は知らん。
アイツはアイツで今頃日本かハワイのどこかで好きに過ごしてるだろうよ。

重たい足とキャリーケースを引きずりながら新しく予約したホテルにチェックインする。

そして私はすぐさまベッドにINした。

何時間寝ていただろうか、気づくと外は暗くなり始めていた。

ガバッと起き上がって時計を見る。
しまった、昨日別れた事に腹が立ったのと悔しいのとであまり眠れなかったから…!

3泊4日しかないのに、1日を無駄にしてしまった!

私は急いでシャワーだけ済ませ、ハワイの夜の世界へと足を運んだ。

確かここら辺に噂のBARがあるんだよな…。
スマホの地図を見ながら目的地に向かう。
あぁ、ここだわ。

お店の前に立って看板を見る。
【シャウエッセン】
日本語でそう書いてあった。
意外とハワイって日本語のお店多いんだよね、ハワイにいる人も意外と日本語喋れる人多いし…。

でも何で店名シャウエッセンなんだろ。
ソーセージでも出してくれるのか?
ははは、と1人考えては苦笑いしながらお店の中へ足を踏み入れた。

ここが一部ハワイで人気になってる理由は…。
「無駄に眩しい…」
みんなが想像してるBARとは少し違い、ここは何とミラーボールが回ってるBARなのだ。

もう店名【ミラーボール】に変えればいいんじゃないかってくらい、独特というか個性的というか…。
私は適当に空いてる席に座った。

「お客さん見ない顔だね」
カウンター席に座ると、40代くらいのバーテンダーに声をかけられた。
「初めてなんです、ここ」
「なるほどね…。
まぁ楽しんでいってもらえると嬉しいよ」

おじさんはにっこりと笑ってくれた。
少し緊張していた心もほぐれる。

「えっと、じゃあとりあえずカシスオレンジで…」
カクテルを注文して、こっそりと周りを見渡す。

特に特別なこともなく、みんな普通に楽しそうにお酒を飲んでいた。
ミラーボールの存在以外は。

「どうぞ。
サービスで皆さんに出してるんです」
バーテンダーさんにそっとお皿を目の前に出される。

「…ソーセージ…?
え、これって…」
まさか本当にシャウエッセン!?
お皿の上にはソーセージが3本、乗っていた。

「このBARの名物、シャウエッセンです」
うん、そうですよね!
まさか本当に出して来るなんて…。

私は苦笑いしながら提供されたカクテルとソーセージをお供に交互に美味しく頂いた。

数十分たった頃だろうか。
酔いもいい感じになって来た頃、バーテンダーさんが頼んでいないカクテルを出してきた。
首を傾げていると、
「あちらのお客様からです…」

教えてもらった人を見てみる。
まさかナンパか?
と思っていたけど、まさか私にカクテルを奢ってくれたのは綺麗な黒髪のお姉さんだった。

私の方を見てにっこりと少し不敵に微笑む。
美人に微笑まれたからか、そんな彼女に少しドキッとした。
「このカクテルはブルームーンといいます。
カクテル言葉は"叶わぬ恋"や"奇跡の予感"です」

貰ったカクテル言葉を聞いて更にドキドキする。
え、どういう事…?
このドキドキは何?
酔ってるせい…?

私は再び彼女の方を見ると、私の方にゆっくりと近づいて来た。

「この後、予定は空いてるかしら?」
「…へ?」
目を細めて頬を少し赤らめて微笑む彼女に、私は目が離せなかった…。


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