転がって魔術学園
次の日、午前九時に斎賀は目を覚ました。
普通ならまず遅刻の連絡を入れてるところだが、
日本と暦がずれているのか、
トゥリエーナの入学式は明後日とのことなので、
実際春休みの様な気分である。
「何だろう、やることがねぇ・・・」
金も少々アリステレータから貰ったが、
物価もわからないし何より土地勘もない。
それに治安もわからないので
無暗に金を持って歩くわけにもいかない。
「知り合いも居ないしな~・・・困った困った」
そんなことを考えていたらお腹がなった。
「昨日の夕飯旨かったよなぁ・・・」
お腹が空いたことによりおいしかった
昨日の夕飯がフラッシュバック。
夕飯は寮の下の簡易食堂で作られたものだったが、
素材がよかったのか腕がよかったのか、斎賀の舌に合ったようだ。
「何はともあれ自分の国に帰る方法も模索しないとな~・・・」
しかし何も思いつかないばかりか、
もう此処に骨を埋めようかと考え始めた。
「何より腹減った・・・
下の食堂やってるかな?」
といい、寝癖も直さないまま
適当に身支度をし、下の食堂に足を運んだ。
「・・・・・・・・・・・なんでやねん」
下の食堂に来ると鍵が掛かっており、人の気配もなかった。
「休みってことか?なんにせよついてないなぁおい」
斎賀はガックリとうなだれ、
朝飯を確保するために金の入ったきんちゃく袋を腰に固く結び、
トボトボと外に向かって歩き出した。
トゥリエーナの道は広く色々な露店が立っていた。
野菜を売る店、肉を売る店、
手の甲に良く分からない絵を掘る店・・・と
多種多様な感じである。
「あー・・・料理道具って部屋に・・・無かったなぁ・・・
店入って食うにもなんか抵抗あるし・・・
リンゴとかそこら辺ので誤魔化すか」
果物類を売っている露店に足をすすめていた時、
路地から出てきた黒髪の女の子と衝突した。
「うわっと」
「ひゃっ!」
両者突然のことにびっくりしたが、
幸いなことに斎賀はよろけただけだった。
しかし、ぶつかってきた少女はそこに尻餅をついた。
「おう、すまん・・・大丈夫か?」
「・・・・・あっ・・・・・はい・・・・・」
斎賀とぶつかった少女は
何故かほほを赤く染めながら
斎賀の手を取った。
「すまないな、今腹減っててボーっとしててな・・・
怪我とかあったらすまん」
「大丈夫です!それよりお腹が空いているんですよね?
なら実家に来てください!」
斎賀の両肩をガシッと掴み、ものすごい形相で家に誘ってきた。
流石にあったばかりの人の実家に行くのはハードルが高いので。
「いや、いいよ「来てくれるんですね!ありがとうございます!」
えあちょ」
有無を言わさず斎賀は少女に押され、
見知らぬ家に連れていかれた。
「トゥリエーナ怖えよ・・・
あっ、引っ張んな!」
そんなやり取りをしつつ歩いていたら、日本建築の大きな屋敷についた。
「・・・・・え?この町、和風建築あったんか・・・
ここってもしかして日本人がいるのか?」
祖国の建物を昨日ぶりに見て少し懐かしく思った。
もしかしたら帰れる方法が・・・
あわよくば行き来できる方法が
あるかもしれないと疑問に思い、少女に聞いたが・・・
「占いは本当だった・・・将来の婿様が・・・
友達もいない私に・・・これは又とないチャンス・・・
既成事実・・・既成事実・・既成事実・・・既成事実・・・」
目のハイライトを消しながら何かをつぶやいているのだが
ここからではよく聞き取ることができない・・・
嫌・・・聞き取らない方がいいのだろう・・・
「だーめだこりゃ・・・おーい、何もないなら帰るぞ~」
「だめです」
「え~・・・」
何故かディーフェンスされたので、諦めて入ることにした。
「あ、大事なこと言い忘れた・・・俺、津田斎賀だから、よろしく」
「私は津d・・・日ノ丸華名です」
「あ、おう」
なんかさっきから目元の光がないのが不気味だが、
すぐに何かやらかす感じではなかったので、聞かなかった。
日ノ丸家に入ったが、中は広くそして古い。
所々シミや傷など年期が感じられるがそれがいい味を出している。
使用人のような人も割烹着という昔懐かしな服装をしている。
「何だろう、すごい落ち着く」
やっぱり斎賀も日本人なのだ、こういうわびさびのある空間が落ち着く。
「こういう建築がいいのですね、わかりました・・・
同居する家は木造建築で立てるように伝えます」
同居とかいう単語が聞こえたが無視。
聞くと後が怖い・・・気がした。
そうこうしてる間に向こう側が遥か先にある大広間についた。
「それでは料理を持ってくるよう小間使いたちに行ってきます」
大広間に置き去りにされた俺はやることもなくボーっとしてたら
隣の廊下から話し声が聞こえた。
「華名・・・楓(ふう)と蕾(らい)が呼んでたぞ?」
爽やかな感じの男の声が聞こえる。
現代日本なら是非とも男キャラの声優をやって頂きたいぐらいのイケボだ。
「強羅にぃ邪魔です、どけてください」
「おいおい、そんなに焦った表情してどうした?」
「将来の婿様のために小間使いに料理を作るように言わないといけないんですよ、
楓と蕾には貴方が遊び相手になってあげてください」
楓と蕾という言葉が聞こえたが、きっとこの家の人だろう。
「・・・言っておくが料理に薬は必要ない、その秘薬はしまえ」
「婿様との将来を確たるものにするためです」
会話の雲行きが怪しくなってきた。
秘薬というあからさまに怪しい単語が・・・
「俺・・・ここから生きて帰れるのか?」
不安と不安が逃げろと本能に語り掛けてくる。
「あの子には悪いが・・・ここは帰らせてもらおう・・・あれ?」
開かない・・・扉があかない・・・
「・・・・・・・・・・いやまて
俺が望んでいるのはこんなネタ性たっぷりの
未来じゃない、だから開いてくれ、開いてくれ、開いてくれ、
開いてください、 開いてください、開いてください、
ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・
って物真似してる場合じゃねぇ」
そんなやり取りを扉としていると。
「お料理をお持ちしました」
来やがった・・・