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転がって魔術学園 3章


そして日ノ丸一家の夕飯に同席した斎賀は対面の座る
日ノ丸雪華(せつか)の殺意に似たプレッシャーに気圧されていた。

(なんかした!?俺なんかした!?)

自分が何かしたのではとたじろいでいる斎賀だが
雪のように白い肌と鋭い目つきは斎賀の隣の泰河を睨んでいた。
結った髪を揺らし、雪華はため息をつく。

「泰河、お前に言いたいことがある・・・いいか?」

「ん?全然問題ない」

「食べながらしゃべるのをやめなさい、みっともない」

「ん、すまんなあ・・・で?」

また雪華がため息をつく。

「華名から聞いたよ・・・華名の旦那に重傷を負わせたみたいだねぇ・・・謝ったのかい?」

「ははは、なんだそんな事か・・・再戦の約束はしたぞ」

「・・・相変わらずあんたは力自慢が好きだねえ」

「暴力は本能からくるのだよ、人間は知恵を付ける前は暴力がコミュニケーションだったからなあ
それに狩猟も暴力で行った・・・つまり暴力は人間が生きるためには必要な行為なんだよ」

泰河が得意げに鼻を鳴らすと
雪華の両目がキッと吊り上がりとんでもない怒気を孕んだ。

「ほう・・・ならアンタが説く暴力論でアタシを倒してみなさい?手加減なしでね」

「げ!?・・・おふくろ・・・それは・・・」

「アタシもあんたの理論を借りてバカ息子を更生するために暴力を使わせてもらうよ!!」

「おふくろ!?今飯食って・・・引っ張らないでくれえ!?」

「あんたが勝ったら好きなもん好きなだけ食わせてやるよ、だけど負けたらしばらくは外出禁止だよ!!」

「おのれえ!!何たる失態だ!!」

泰河を雪華が引きずり、辺りは静かになる。
すると千夜が口を開いた。

「ごめんね、雪華は怒るとすぐに動いちゃうんだ・・・」

「えっと・・・雪華さんって泰河より強いんですか?」

「ははは、多分泰河は手も足も出ないと思うよ」

「・・・」

斎賀はこの家族の戦闘力に恐怖していた。

(おかしい、人間じゃない!?)

「えっと、ところで千也さんと雪華さんはどこで知り合ったんですか?」

「僕と雪華は兄と妹だよ」

「え?」

「日ノ丸家の習わしでね、兄弟から一組のカップルを現大黒柱がはじき出して次の日の丸を任せるんだ。
選ばれなかった兄弟はその後日ノ丸の名をかたってはいけない・・・
そのせいで僕は兄弟と離れ離れさ・・・・・・
そして華名はこの習わしが嫌いみたいでね・・・
その結果、占いで君と言う婚約者をはじき出した・・・違うかい?華名?」

「・・・・・」

ふと斎賀の横に座ってた華名を見ると目を白黒させて動揺していた。

「でも斎賀君、華名の好意は嘘じゃないよ?そこは信じてあげて・・・
あと華名、僕はこの習わしは壊すつもりだ・・・」

「え?お母様はそのことを知っているのですか?」

「いや、だから多分言ったら猛反対して薙刀取り出すだろうね」

(千也さんと雪華さんが戦ったらここら一帯更地になる気が・・・)

「だけどこのまま閉鎖的な伝統を続けたらいつか壁にあたる、だからやめるべきだと僕は思う・・・
あ、なんか重たい話してごめんね・・・さあ、ご飯を食べよう」

「ごちそうさま」

そう言って立ち上がったのは次男の強羅だ。
どうやら話の最中も飯を食べていたらしい。

「親父、伝統は守り続けて伝統になる。
血統もだ、だからあんたの意見には乗れない」

「・・・そうか・・・」

(重たい!!しかも家庭の事情だから口がはさめない!!)

日ノ丸の問題と同じくらい悩まされている斎賀であった。





一方そのころ、イフ教の中ではある動きがあった。

「ようこそ、ミスターアポロ・・・とアサシン達」

鉄の仮面を被りトレンチコートに身を包んだ男を出迎えるのは
ゼファー・テイザーである。
仮面の男の後ろにはヘルメットタイプのガスマスクを被りコートにグローブ、ブーツにフードと
肌を一切晒していない。
片方はナイフと短剣を、もう片方はクロスボウを装備している。

「どうも、デスメーカー・・・と呼んだ方が良いかな?」

「まあビジネスの取引だからね、そうしてくれるとありがたい・・・かな?」

「そうする・・・ところで今回の依頼は日ノ丸家の襲撃だと聞いたが・・・」

「その通り、今回は日ノ丸家が持ってると思われる神石を回収してきてほしい」

「神石?それはどんなものなのだ?」

「握りこぶし程の宝石としかわからなくてね、今後のイフ教の活動に必要なので
取ってきてくれるとありがたい・・・あとせっかくだからそこで強い奴も何人か攫ってきてくれると
報酬は倍にする、いいかな?」

ゼファーが聞くと仮面の男は笑った。

「こいつらは今まで依頼を失敗したことがありません、安心してください」

「それは頼もしい、任せたよ」

「では準備をして寝込みを襲います、では」

「任せたよ」





「さて・・・本物だといいんだけど」

こうして不穏な闇が動き出す・・・
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