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転がって魔術学園 2章


微睡みとは、かくも恐ろしい…

いやぁ、朝起きて時計見たら遅刻ギリギリ、びっくりですよね?
ええ、ビックリしました。

「とかやってる時間ねぇから!」

と、飛び起きた。

3分待ち切れなかった大佐は元より、
30秒待ってくれるおばちゃんも真っ青な速度で準備し終え、
転がり出るように部屋を出て、夢中で長い廊下をひた走る。


どれだけ走ったか覚えてないが、思いっきりドアを開け、転がり込むように教室に入り、


「(ガラッ)遅刻しま(キンコーンカンコーン)…セーフ?」

「ええ…セーフです。ですが、次からは5分前行動を心掛けてくださいね」

「アッハイ、すいません」

「はい…それでは席についてください。ホームルームを始めましょう。」


と、俺が遅刻しそうになった以外には、何事も起こらずホームルームも終わり、初めての授業だ。



「はーいシュトラス=ニーベルンでーす。よろしくな坊主ども」

「はーいリリナ=ドーリーでーす。よろしく~」


戦闘訓練だったよな?
随分気の抜けた挨拶だな~
目の前の気の抜けた男が軽く担いでいる大斧と、
隣のちっこい女の子の横の地面に突き立ってる馬鹿でかい戦艦の主砲をそのまま持ってきたのかっていう大砲さえなければな…


軽く人の身長を超えるどころか、3メートルにさえ届きそうな斧と、
それよりでかい大砲を持っている女の子が、
それをおくびにも出さずに担いでいる。
これには、周りの生徒も唖然としている。

「勿論、全員ルーンは掘ってあるよな~?」

「「「はい!」」」

「ん?おい、そこの少年、どしたその腕?」

勿論斎賀である。

こういう時の言い訳は、

「少し捻っただけです問題ありません」

と言うようにアリステレータさんから言われている。

「ん~わかった、得物は持ってきてるみたいだしな、無理だけはすんなよ~」

「なよー、ってかあんまり見ないモノもってんなー」


多分教員らしい女の子が少しの間、俺の刀の方を見ていたが、それ以外も特に詮索はされなかったのは良かった。


「んじゃー肩慣らし遠距離の奴はあそこに見える建物で射撃訓練と調整しとけー」

「私見に行ってるわー」

「へいよ、近接の奴は俺に付いてこい」

んで、ゾロゾロ移動して射撃訓練所と呼ばれていた建物より一回り大きい建物に入った。

「んじゃー…よし、4人組に分かれて戦闘訓練な一応非殺傷化の魔法使うから覚えとけよー」


右手を突き出して、

「繰り返せー『意志無き傀儡の様に踊る』」

『意志無き傀儡の様に踊る』

そう唱えるとそれぞれ持っている獲物の刃に赤い膜の様なものが張り付いた

「はい、んじゃ訓練開始ー」


いきなりですよ奥さん。
…まあ、俺以外は計ったように動き出したけどね、


俺と組んだ(というか襲いかかってきた)3人は、
短剣持ちと長剣持ち、槍持ちと様々だ。もてる男は辛いぜ…涙ちょちょ切れそうだ、畜生め…

それぞれ、俺を囲んで一斉に跳びかかってきた。

一先ず、というか反射的に後ろに跳んで、短剣使いの一撃をギリギリ避けると、流れるように長剣使いの一撃が追い縋ってくる。
慌てて自分の刀を抜いて、防いだ。先に抜いとけって?ぼけっと見てたよ、すいませんね!

「『意志無き傀儡の様に踊る』」

刀に赤い膜が張り付いたのを視界の端で確認したのと同時に、防いでいる横から槍使いと短剣使いが、さらに、加勢しに来た。

「懐ががら空きだぞ!」

「卑怯くせぇ!3対1で勝てる訳ないだろ!?」

「まあ、がんばれやw」

「チックショォメェェェイ!」


会話だけ聞くとギャグみたいだがこっちも必死だ…
無我夢中で躱し、受け止める…やがてむこうさんも焦れてきたらしい。


「当たらねぇ!」

「くッ!ちょこまかと!」

「そろそろ倒れてくれてもいいのよ?」


ちょこっと悪戯心がでて、


「ほらほら、捕まえて御覧なさ~いw」(ドヤァ!)


なんて煽ったら、眼の色変えて襲ってきた。


(ヤバ…調子に乗ったか…?)


なんて内心汗ダラダラだったんだが、冷静にみれば、
激おこの状態でまともな思考などできる筈も無く、
動きが単純で大振りになってしまっていた。
素人の俺でも見切れてしまう程に・・・


「隙あり!」


長剣使いの上段からの一撃を横から弾き、蹴りを叩き込む。


「ぐっ!」

「なに!?」


続けて、動揺していた槍使いの懐に入り込み、腹に拳をめり込ませ。


「ぐあっ!」

「やばっ!?」

「最後っ!」


短剣使いの短剣を弾き飛ばす。短剣は少し離れた地面に刺さり、
赤い膜が剥がれたのを見届けずにノリノリで一撃加えに行こうと思っていたら、


「は~いそこまで」


ニーベルン先生が時間切れを告げた。


「おっとっと、時間切れか~…お~い、大丈夫か?」

「イッテテ、効いた~」

「精進が足りなかったか…鍛え直しだ」

「あぶね~最後大分ノリノリだったねぇ?」

「いやぁ、スマン」

「まあ訓練だし、そんなグチグチ言わないけど…なかなか怖かったよ…」

「まあ、初めてにしちゃあ動けてよかったよ」

『え?初めてなの』


何か変な目で見られたけど、大丈夫だろ…大丈夫か?


「いやあ、ボウズ、筋が良いな~」


ニーベルン先生がニヤニヤしながら近づいてきた。


「あ~、ありがとうございます…」

「まあ、動きが素人臭くて、間合いの把握が半端だ。」


誉められたと思ったら、すげぇこき下ろされた。


「だが、周りは無言でやってるのに対して、軽口叩ける余力を残し、
 かといって、不真面目な訳でもなく、相手を逆上させ、3対1の状況ひっくり返した
 ボウズ、おまえさんあれで初陣…何か違うな…まあ実戦形式の訓練は初めてなんだよな?」

「ええ、まあ」

「こりゃあ、今年は良いのが入ったな(ボソッ)」

「え?」

「いや、何でも無い」


若干、悪そうな顔で何か呟いていたのは、気にしない方が良いかもしれない…


その後、射撃訓練をしていた連中と合流して、座学の時間だ。
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