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転がって魔術学園 2章

とある場所のある時間のある施設のある集団のとある会合

白い装束に身をまとった黒い覆面の男たちが、
壇上に上がった同じく白い装束に身をまとった黄色い覆面の男があたりを見回し、
大声で辺りに話しかける。

「皆の者、今日は集まってくれてありがとう。きっとイフ様も喜んでいられるだろう」

ここは武神イフを祭る新興宗教。イフ教である。
この壇上に上がった男はメルター・テイザー、地上を神の手を借りて取り戻そうとして
この宗教を作った。
実際に武神イフは存在し、その昔地上に蔓延った悪魔を自分の身をボロボロにしながらも
悪魔を地下に封印した伝説を持つ。

「皆はどれ程イフ様を信じているかは私にもわからない、それはみな一緒。
最初は神なんて見えはしない・・・しかし!信じれば必ずや見える!
しかし、それを信じず、あまつさえ否定し、ぶち壊そうとするものもいる!
そんな恐れをなさない愚者には裁きが必要だ、
そこで私の息子ゼファー・テイザー・・・
おっと、この名前より皆はこっちの方が親しみやすいかな?
死体の美術家、デスメーカー・・・そのたぐいまれなる暗殺力とそして芸術性で国王さえ震わした私の自慢の息子だ・・・
彼に頼み、愚者をすべて芸術品にした」

この男、ゼファー・テイザーは先ほど説明された通り死体でアートを作るサイコパス人間だ。
彼の経歴ははっきり言って普通の人間からはかけ離れている。
幼少期から絵をかくのが好きでしょっちゅう書いていたが、
その絵はすべて地獄のようなもので全ての生き物は笑っており、
血の涙を流している。
転がる首も転げた首で遊ぶものもすべてである。
そして五歳のころ家の近くに住み着いていた猫数匹を殺し、
縫い糸で死体同士を縫い付けた。
そしてそれを「僕の愉快な猫」という題名のもとに町に飾った。
それからゼファーの殺人癖が悪化し、ついに人で作品を作るようになった。
最初は首を切り落とした死体の首の切り口に花を生けたり、腕と足を逆にくっつけむしった鳥の羽を背中につけたり、頸動脈を切り、そこから出た血で白い壁一面に絵をかき
そこに死体を貼り付け宝石で飾り付けたりもした。
それを見た国王はゼファーを殺せと命じるものの、
暗殺力が高いため殺しに来た兵士を殺し、また作品にして国に送り付けた。
それを見た国王はゼファーの殺害を取りやめ、今はそのまま野放しである。
ちなみにゼファーは当時11歳である。
そして今、15歳になったゼファーは、イフ教の父親の側近として彼なりの美術を続けている。

「どうもー、デスメーカーです・・・
あー僕はね、芸術をこよなく愛するただの一般人ですが、
まあ今後ともよろしくお願いいたします」

舞台の端から出てきたのは、いたって普通な小柄な青年である。
これと言って特徴のないニコニコとした気さくそうな青年・・・
それをみたイフ教徒は信じられないといった
顔つきでざわつきだした。

「今回皆さんに見せたい作品は、二つあります。一つ目は『零れ落ちる雫』です」

ゼファーが持ってきた作品『零れ落ちる雫』は、焼けただれた肌から、
溶けだした肉が滴り、また目から血の涙が流れ眼球も滴っている。

「これはさっき作った新鮮な作品でしてね、肉も血も新鮮でしょう?
僕の芸術は永遠には残らない、だから作ったらすぐに人に見せるようにしてるのサ」

これにはイフ教徒は絶句である。
しかし、中にはこれをいいものだと評価し歓声を上げるものもいる。

「皆さん喜んでくれて何よりです。次の作品は『頭脳の進化』です」

次に壇上に運ばれてきた作品は、体に腕が何本も縫い付けられておりその先に何個もの頭をくっつけた作品である。
死後硬直なのか何本かの腕は上を向いている。
全ての顔に眼球はない。
脇にそれていたメルターが口を開いた。

「この二人はこの教団に入り、内側から壊そうとした国の回し者である。
愚かにも私を手にかけようとしたのでゼファーの作品の一部となってもらった。
彼らは今きっとこの上ない幸せを感じているだろう」

するとゼファーはメルターの言葉を遮り、大声でイフ教徒に向けて叫んだ。

「もしもっと芸術作品が見たいなら新鮮な死体を持ってきてね!」

「こらこらゼファー、まだ私が喋っているだろう?」

メルターに怒られたゼファーはてへぺろをする。

「ごめんね~、ちょっと久々に作品を展示して舞い上がっちゃった」

するとメルターは大きくうなずいた。

「なら仕方ないな」

ゼファーはだよねと言い残し、作品をもって壇上から退場した。

「さてと・・・今日の集会は我らの目的を再確認し、ともに歩む道を仲間と見つめてほしい。
我らの目的はイフ様の種子を受け取る母体の確保、そして生まれた神の子で地上を再び取り戻すことだ!
イフ様は大昔の悪鬼戦争で十分戦って下さった、次は我々人間で地上を制圧するのだ!
皆の者!覚悟はできているか!」

『おお~!!』

こうして、イフ教は大きな結束力を得た。





一方そのころ学園都市トゥリエーナでは、津田斎賀が遅刻ギリギリでベットから飛び起きた。
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