joy!

その日、花京院は承太郎に話を持ち出した。こんな風に気になる異性に話を持ちかけたことは全く経験していなかったため、少々どもっていたが。

「じょ、承太郎」
「……ん」

相変わらず表情をあまり変えないで花京院の方を見る承太郎。承太郎は椅子に座っているため必然的に上目遣いになっていて花京院はドキッとした。花京院は懐から二枚のチケットを取り出した。イルカやシャチの写真が載っている。

「水族館のチケットが当たったんだけど、一緒に行かないかい?」

ちなみにこのチケット、花京院が当てたわけではない。ただ承太郎と行きたいなぁと事前に取っておいたのだが「君のために取ったんだ」と言うのはどうもこそばゆく恥ずかしかったので、そう言って誤魔化したのだ。

「……!行く」

承太郎はいつもより少し嬉しそうに言った。花京院は少しあれ?となったが気にしないでおこう、言ったらまた一緒に帰ってくれなくなっちゃうかも……と、黙っておくことにした。の日の承太郎はいつもより足取りが軽く家に着いた。

「おっかえりぃー」
「おかえりなさい」

ジョセフとジョナサンは先に帰っていたらしくリビングでお菓子をつついていた。相変わらず

「あぁ、ただいま」
「んー?承太郎いつもよりご機嫌ー?素直にただいまーなんて言っちゃって」

いつもとちょっと違う妹に近づき顔を覗く。承太郎は大抵言わないか言っても本当に不機嫌なんじゃあないかというようにぼそっと言うだけなので、さらっと返ってきたのにジョセフは少し驚く。

「そっ、そんな事っ……」
「何かいいことでもあった?」
「ちっちげぇし!」

顔を赤くしながら否定する承太郎だがジョナサンとジョセフはただニヤニヤしているだけだった。「鞄おいてくるっ」と承太郎が駆け出したあと、ジョナサンとジョセフは話していた。

「承太郎ってば、隠しきれてないし」
「承太郎嬉しそうだったねぇ」
「きっと花京院ぐるみでしょ」
「じゃあデートとかかな?」

クッキーをサクサクかじりながらジョセフは呟く。さっきまでの承太郎の様子を見て妹の成長を感じるジョナサン。紅茶を一口飲んで予想する。

「全く二人とも奥手ってゆーの?ヘタレってゆーの?」
「承太郎も色恋沙汰をするようになったんだねぇ……」

クスクスと笑いながら二人はお菓子を食べ、話していたのだった。相変わらずジョースター家の長女と次女は勘が鋭い。そんな話をしているとも知らず承太郎は自分の部屋でどんな服を着ようかとかイルカショーみたいななんて思っていた。

「楽しみ、だな。水族館」

承太郎はベットにいる、イルカのふう太にぼそっと呟いた。

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