joy!

「うんごめんね」

ズズッと机を寄せて花京院が申し訳なさそうに謝る。
一時間目は数学。授業なんて眠いぜ…といつも言っている承太郎にとっては絶好の睡眠時間だった。

「~であるからして…」

つらつらと数学教師が公式を並べていく。承太郎は窓の外を見た。体育の授業なのか外で男子がサッカーをしていた。

(おかしい…全然眠くない…)

いつもなら数学教師のあの声は子守唄のように、承太郎を夢の世界へ誘うはずが、なぜだか眠くない。むしろ冴えてしまっていた。
それはおそらく、隣に転校生がやって来たという環境が出来てしまったからであろう。そして、その転校生がじっとこちらを見ているからである。

「なんだよ…」

承太郎は授業中ということを踏まえて小声で花京院に聞いた。

「え、あぁごめんね?教科書見ないのかなぁって思って…」
「つまんねぇし」

また窓の外を見始める承太郎。

「窓の外、何かあるのかい?」
「別に、なんもねぇよ」

花京院が話しかけてくるのを不思議と鬱陶しいとは思わなかった。


……四時間目、終了後。
いつもの場所…屋上に行こうと、承太郎は立ち上がった。

「ねぇねぇ、承太郎…その…一緒にお弁当たべて良いかな?」

すると後ろからパタパタと花京院がやって来た。少しうつむき、照れくさそうに承太郎に一緒に食べても良いかを聞いたのだった。別に誰が来ようと気にはしなかった承太郎。…いや、他の生徒だったら気にしたかもしれない。花京院だから気にしなかった、とでも言える。

「…好きにしろ」
「本当!?」

嬉しそうに承太郎の横を歩く花京院。ニコニコしながらついてくるから相当嬉しかったんだ…と伝わってくる。

「僕、前の学校に友達とかいなかったからさ、こうやって誰かと食べるのに憧れてたんだ」
「そうなのか?てっきり女子が回りできゃあきゃあしてるからウザかったのかと思ったぜ」
「そんなことは無いよ」
「ふうん」
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