joy!

「…暇に…なっちゃったな」

回りは騒がしいが、一人でいると何だか少し寂しく感じる。せっかくのお祭りなのに。去年までは仗助と一緒に屋台を巡っていたが、今年は違う。高校に入った仗助は親友と呼べる友達ができた。それを嬉しく思うのが姉だが同時に寂しく思う。ジョセフは行くあてもなく祭りを回っていた。
しかし、ずっと歩いていると疲れるため、綿菓子を買って近くにあるベンチに座り込む。

「どうしよっかなー…」
「何辛気くさい顔してんだ。お前らしくない」
「シーザー!?」

綿菓子を食べていると後ろから声がかかった。声の主はジョセフより2つ程年上のシーザー。後ろから、しかも知り合いから声がかかり少しどもる。

「な…なんでいるの?」
「祭り来たから」
「いや、そーじゃなくて!」
「可愛い女の子が一人だったから声かけただけだ」
「なっ…!?」

ジョセフは少し微笑みながらそういったシーザーに対して

(よくもまぁ恥ずかしがらずに言えること!)

やっぱりイタリアンねっ!と悪態をついていたが、そんな気持ちよりも嬉しさと恥ずかしさで顔が熱くなっていくのを感じた。そしてベンチから立ち上がって、シーザーに手を差し出した。

「一緒に…お祭り回ってくれる?」
「あぁ、ちゃんとリードしてやるよ」
「手、離さないでよね」
「当たり前だ」

さっきまでの落ち込みようがまるで嘘のように元気になったジョセフ。あっち行きたいこっち行きたいと、おおはしゃぎしている。浴衣なのによくそんなに動けるな…とシーザーは少し感心している。

「転けるぞ」
「む!そんなおっちょこちょいじゃないんだから」

そう言って握ったままのシーザーの手を引っ張りながら歩く。

「次はヨーヨー釣り!」
「はいはい」

目指すはヨーヨー釣り。ヨーヨー釣りのおじさんに二百円払い釣り針を貰う。

「よし!やるぞっ!」

浴衣の袖を捲って意気込む。釣り針が切れないようにそっと動かし…

「取れた!」
「上手いじゃないか」
「当たり前でしょ!私を誰だと思ってるの?」

取れたのは緑と黄色のヨーヨー。二個目を取ろうともう一度釣り針を入れた…が、釣り針がポチャンと音をたてて水の中へと切れて落ちてしまう。

「あー落ちちゃった…」
「一個取ったし良いじゃねぇか」
「良くないの!」

あと少しだったのに!と悔しがるジョセフをみて、気前のいいヨーヨー釣りのおじさんが

「はっはっは!嬢ちゃん!可愛いから一個おまけしてやるよ!好きなヨーヨー一個持ってきな!」
「ホント!?」
「良かったな」

おじさんに「ありがとう」と何回もいって、取ったヨーヨーは水色と薄い赤のヨーヨー。2つヨーヨーが手に入りご満悦なジョセフ。
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