joy!

「仗助ちゃん」
「由花子さん!どうしたんスか?」

それは、昼放課の事であった。仗助は同級生であり親友でもある、山岸由花子に話しかけられた。

「実は…」

話の内容はこうだ。

「最近…康一君が冷たいの」
「…気のせいッスよ…」

所謂倦怠期(由花子談)。学校で話しかけてくれず、しかも学校だと話し掛けたとしても敬語らしい。

(それってただの恥ずかしがってるだけじゃ…?)

仗助は思った。康一はただ単に恥ずかしがってるだけではないか?と。
康一と由花子は恋人同士。しかも容姿端麗、成績優秀な由花子とだ。学校中で話題になるに決まっている。康一はそれを避けているのだ。由花子はそれを嫌われたと思い込んでいる…ベタなすれ違いである。そこで、仗助は

「デートすればいいんじゃないッスか?」
「いきなり?」
「いっいや…ただ、ちゃんと話した方が良いと思うんッスよ。ほら、もしかしたら康一だって別の理由があって避けてるのかも知れないし…」

それが仗助にとっての精一杯のアドバイスだった。しかし由花子には十分役にたったらしく、

「それもそうよね…分かったわ…!しっかりと理由を聞き出さなくちゃ…!浮気だったら許さない」
「それはないと思うッスよー…?」
「ありがとう仗助ちゃん。私今度の日曜に誘ってみるわ!」
「はぁ…(方向性を間違わなきゃ良いけど…心配だ…!とてつもなくっ)」

…そして、来る日曜日。

「と言う訳で、尾行するわよ」
「えっ」

いきなりのことに突拍子もない声をあげる億泰。そんなのはお構いなしに、パーカーにスカート、ニーハイというラフな格好で、双眼鏡も持っている仗助は康一と由花子を見失なっちゃうから早くして!と急かす。

「いきなりどうしたんだよ」
「それはさっき話したでしょう?」

行くよ!と言って億泰の手を引き歩き出す。異性との経験が少ない億泰はあわてて仗助を追いかけて横に入った。手は繋いだまま。
康一と由花子が初々しいカップルのように(実際はそうなのだが)歩いている中、後ろから壁伝いに追いかけている億泰と仗助チーム。仗助はそこまで遠くないのに、双眼鏡を覗いている。

「何で双眼鏡してんだー?俺にも見せろよ」
「嫌よ。ジョナねぇのやつ借りてきたんだもん。雰囲気出るでしょ?尾行の」

あぁ、そんな理由か。と心の中で呟く。

「あっ!行っちゃう!行くよ」
「おっおう」

億泰自身楽しいので、まぁいっか。と、ついていく。
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