恋する動詞

6願う(ジャイジョニ)

「ジョニィ、ジョニィー?」

呼ぶ声がする。声だけでわかる、ジャイロだ。僕の大事な、大好きなジャイロだ。ふと、重い瞼をあけてもそこにジャイロはいなかった。見えるのは朝焼けの空に小鳥が二、三羽。それから既に葉が落ち、新たな芽吹きに備える木だけ。

「……」

そうか、ジャイロはもういないんだっけ。きっとあれは幻聴。あの、たなびく髪も目立つ金歯も、今はもう目の前にはなかった。それは思い出のモノと化し、僕の心の中で生き続ける……。現物のない、空想のものへと変化してしまった。その手に触れたくても触れられないし、あのドロドロなコーヒーも飲めない。なんだか、物足りないんだよね。インスタントコーヒーはサラサラしすぎてる気がしてさ。
それにしても、懐かしいなぁ。ジャイロが僕を呼んでくれるなんて、何年ぶりだろう。
君が死んでどれだけ経っただろう。
そんなこと考えたくもないんだけれどもね。
すると、ほろりと目から暖かなものが落ちてくる。

「……ジャイロ」

そう、どんなに強くなっても、歩けるようになっても、運命の前ではただ非力な僕はただ、願うしかないのだ。
もう一度、ジャイロに会いたいと。
ただ、必死になって願って、運命に食らいついて。僕は僕の人生を全力で生きて。ジャイロの意志を受け継いで。ただ、毎日毎日必死に願い続ける事しか、非力な僕には出来ない。

「祈っておこうかな……」


もう一度、天国で会って笑えるように。
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