恋する動詞

「ブチャラティと会った時に舐められたんだってねぇ」

何を言い出したかと思えば、メローネは思い出したかのように問いかける。目の前に入れたコーヒーを見向きもせずニヤニヤと話しかけるメローネとは対照的に無表情のジョルノは表情筋1つ動かすことなくメローネを見て言った。

「そうですね」

カフェのプリンをはくりと頬張る。うん、美味しい。プリンに夢中になっているジョルノは目の前の男に目もくれず適当に返事を返す。何だか癪に障るが目の前の男が奢ってくれるというから容赦なく1番高いものを頼んでやった。

「舐めれば状態を知ることが出来るんだっけ?嘘をついてるかどうか分かるんだってね」
「らしいですね」
「嘘をついた味ってどんな味なんだろうね」
「知りません」
「気にならない?」
「気にはなりますがこぞって知ろうとは思いません」

話を聞いてはいるが答えるのが面倒くさいとでも言うような機械的な返答に関わらずメローネは話を続ける。

「実は俺も舐めると嘘かどうか分かるんだけど」
「嘘ですよね」
「嘘をついたかどうかは嘘だけど。なんで?ブチャラティには舐めさせたのに俺は舐めさせてくれないの?」
「舐めさせるさせないじゃないですよ。僕だってされたくてされたわけじゃないですよ。それに加えてあんたは尚更嫌です」
「酷い拒絶のされよう〜でも舐めると健康状態が分かるのは本当だぜ」

ケラケラと笑っているメローネは掴めない。今だってどうして一緒に出かけているかわからない。ただ「せっかくの午後だしシエスタと洒落こもうか」と半ば強制的に連れてこられたのだ。

「本当だとしてもなんで僕が貴方に舐められなきゃいけないんですか。しばきますよ?ゴールドエクスペリエンスで」
「それは痛いからやめて、まじで。あぁ、ジョルノ」

メローネに頬を指で軽く拭われる。拭った指先をそのまま己の口へ。喋らなければイケメンとはこの事で顔立ちは整っているため、様になる。ちろりと覗いた舌が白っぽい肌に対比するかのようで、やけにセクシーだった。


「うーわ。これ甘すぎない?やっぱ甘党なんだねー」
「……」
「あぁ、ほっぺたにプリンついてた」
「先にそれを言え」
「せっかくのチャンスだし。距離的に舐められなかったし。残念だけどそれは夜のお楽しみってことにしておこうかなぁー」
「……はぁ」
「なになに、どうかしたの」
「貴方って本当に」

─喋らなければいいのに─
63/67ページ
スキ