恋する動詞

5望む(ディオジョナ)

僕は望む。彼、ディオ・ブランドーが幸せに暮らす事を。彼と共に幸せになりたいと。しかしその願いは、いつか虚空に消えた。初めから存在しなかったのだ。
邪念により生きている、ディオ……もといDIO。石仮面を被った吸血鬼、僕の、大事な、義兄弟。全てが狂ってからも僕はディオを大事だと思ったのだ。ここまで来たら殺めるしかないと。

「それが貴様の望んだ事か?」
「望んでないさ。もっと君と仲良くしたかったよ」
「今でも仲がいいだろ?」

俺は望む。彼、ジョナサン・ジョースターと幸せになろうと。それには頂点に立たねばなるまいと。ジョジョとこの世界を支配しようと。今、それを実行している。ジョジョから貰った、いや奪ったこの体を使って。

「それが、君の望んだ事なの?」
「あぁ、頂点に立つのはこのDIOだ」
「おかしなディオ。世界なんていらないのに」

首だけの僕はただ、静かに話すだけだ。歩けないし抱けない。ディオはただただ、僕と話すだけ。
先程までの会話は望んだものは手に入ったのか……そんな話。

「僕は、こんな結末は望んではいなかったな」
「俺は望んでいたぞ」
「世界なんてこれっぽっちもいらないんだ。欲しかったのは君との平穏な暮らしだけ……」
「ふん、なら今から作ればいいだろ?その平穏とやらをな。ただ、勘違いをするなよジョジョ。俺は貴様の望むモノはなんでも与えてやるから……」
「そうかい……?なら、そうだな……」

君がこの首だけの僕をもっともっと愛してはくれないか?この苦しみを忘れるぐらい。
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